熱中症対策として有効なエアコンや扇風機が活躍する時期となった。
しかし、いきなり使用頻度を増やしたり、誤った方法で掃除したりしたことにより、火災などの事故が起きていることをご存知だろうか。
過去5年間で400件超の事故が発生しており、死者も11人出ている。
エアコンや扇風機を使う前に気をつけたいことは何か。また、掃除で“絶対にしてはいけないこと”とは。
事故の9割超が火災。エアコンの事故原因は
5月25日に記者会見した製品評価技術基盤機構(NITE)によると、エアコンと扇風機の事故は2018〜22年度、計409件発生しており、9割超の383件が火災だった。
また、409件のうち、約半数の186件は6〜8月の夏に発生していた。
エアコンに関しては、調査を終えた296件のうち、142件(48%)が「製品の不具合以外による事故」だった。
このほかは、「製品の不具合による事故」(60件)、「経年劣化が疑われる事故」(10件)、「経年劣化による事故」(7件)、「原因不明」(77件)だった。
最も多かった「製品の不具合以外による事故」というのは、洗浄液の付着や電源コードの途中接続のほか、室外機の周囲に可燃物を置いたり、ゴキブリなどの虫が製品内部に侵入して電源基板に触れたりすることによって起きている。
扇風機は「経年劣化」による事故が多い
扇風機の事故原因は、調査を終えた57件のうち、20件(35.1%)が「経年劣化による事故」だった。
このほかは、「製品の不具合による事故」(12件)、「製品の不具合以外による事故」(6件)、「経年劣化が疑われる事故」(6件)、「原因不明」(3件)だった。
扇風機の場合、長期で使用したことによる「経年劣化」が事故原因として多くなっていることがわかる。
過去5年間で11人が死亡した
死亡事故も発生している。
エアコンの事故では、2018〜22年度に計10人(9件)が死亡した。重傷も6人(5件)で、建物にも被害を及ぼす拡大被害は253件もあった。
扇風機では19年度に1人(1件)が死亡しており、重傷は1人、拡大被害は44件だった。
具体的な事故事例は次のとおりだ。
神奈川県で20年8月、エアコンを使用中に火災が発生し、周辺を焼損した。
電源コードを切断し、別の電源コードを接続していたため、接触不良で異常発熱した。
大阪府でも19年11月、エアコンを使用中に火災が発生し、周辺を焼損。
エアコンのファンモーターの製造工程で不具合があり、内蔵の電子部品が短絡して過大な電流が電気回路に流れたため、ファンモーターが発熱・発火した。
滋賀県では2019年8月、40年以上使用している扇風機が焼損する火災が発生した。
扇風機の内部部品の劣化で短絡が生じて発煙に至ったという。
事故を防ぐには
では、どうすれば事故を防げるのか。エアコンを使う前に、次のように点検することが重要だ。
・電源プラグや室内機のフィルターにほこりがたまっていないか
・室外機の上や前に物を置いていないか
・ドレンホースの排出口に詰まりがないか
・清掃されているか
また、エココンを試運転し、室内機から水漏れしていないか、異音・異臭がしないか、エラー表示が出ていないかなどを確認する必要もある。
エアコンから大きな炎が上がった
NITEの実験映像では、誤ったところに洗浄液をかけてしまった結果、エアコンから大きな炎が上がる様子が映し出されている。
電気部品から徐々に煙が出始め、火花が散った後、黒い煙が立ちこめる。大きく炎があがり、エアコン本体が焼け落ちていく様子は恐怖そのものだ。
このような火災につながるため、絶対に電源配線や電源基板、ファンモーターなどの電気部品に洗浄液をかけてはいけない。
NITEは、エアコンの内部洗浄は専門業者に依頼することを勧めている。電源コードと配線の加工も同様だ。
扇風機についても、羽の回転が異常に遅かったり、モーター部分が熱くなったりした場合は、使用を中止して電源プラグをコンセントから抜き、購入店の修理窓口に相談する必要があるという。
5月25日に会見したNITEの担当者は「熱中症は住居で発生することが多いが、エアコンで予防することができる。しかし、夏場は稼働率が上がるため、エアコンと扇風機にとっても過酷な季節」と話した。
その上で、「本格的な暑さを迎える前に注意ポイントをしっかりと確認し、火災などの事故に遭わないよう気をつけてほしい」と呼びかけた。