前回、2030年頃には完全自動運転の移動サービスが社会に広く普及するだろうと予測したのであるが、それまでしばらくは、所有型とサービス型が並走するのではないかと考えている。サービス型は既に説明したとおりであるが、所有型というのは、現在の自家用車と同じで、ユーザーが自動運転車を取得しオーナーになるものだ。
トヨタは所有型とサービス型の両方を開発していくとしている。所有型では、現在販売されている高級セダンと変わらない開発実験車両をウェブサイトで公開している(*1)。自動運転の実験車両というと、屋根にカメラやレーザーといった機器を搭載して、いかにも実験車両というイメージがあるのだが、最新の実験車両は、少し前のものより格段にスタイリッシュで、所有欲を刺激するものになっている。
一方、サービス型としては、「e-Palette Concept」(*2)を今年1月に発表した。これは、MaaS(マース)(*3)により移動サービスを提供するコンセプトで、四角い箱に車輪が付いたシンプルな車両である。
ライドシェアとして利用されるのはもちろんだが、内装を自由にカスタマイズできるため、事業者のニーズに合わせて、スニーカーショップにしたり、ピザ屋にしたり、あるいは宅配車両になったりする。
現在の事業者が所有する移動販売車と変わらないと思うかもしれないが、MaaSがあるので、需要のあるところに移動して販売することができる。これまでのように特定の場所に移動してから販売するのではない。
一通り需要に応じた後は、事業者が残った商品を回収し、車両は移動サービスの基地に戻っていく。事業者、消費者両者にとってサービス型の利点がありそうである。
さて、このような所有型とサービス型がしばらく併走するとしても、いずれサービス型が優勢になるのもそれほど時間が掛からないと思われる。現在の自家用車での移動は、移動した先で駐車場がなければ何もできない。それだけでストレスの原因になる。
所有型の自動運転はこのような場合どうするのだろうか?所有型専用の駐車場をつくったり、オーナーが戻るまでまちをグルグルと周回していたりするのだろうか?とても非効率だ。その間、サービス型に組み込み、必要な人にシェアしてもらうことは考えられる。そうであれば、最初からサービス型でいいのではと思ってしまうのである。
(*1) ヨタ 自動運転実験車「Platform 3.0」2018年01月05日ニュースリリースより
(*2) トヨタ「e-Palette Concept」 https://newsroom.toyota.co.jp/jp/corporate/20508200.html
(*3) Mobility as a Serviceの略。移動に関するモノやサービスがMaaSのシステムにつながることで、需要に対して最適な移動サービスが提供される。
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(2018年3月29日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 准主任研究員