「加藤です。よろしくお願いします!」
独立リーグのルートインBCリーグ・武蔵ヒートベアーズの加藤壮太外野手だ。
こんがり陽に焼けた顔から、真っ白な歯を覗かせる。身長187センチ。威圧感よりも、人の良さが雰囲気から伝わってくる。
恵まれた身体に、抜群の身体能力。中京高(当時)時代には夏の甲子園にも出場した。誰もが憧れる野球人生を送りながら、加藤選手は独立リーグの門を叩いた。
3年目のシーズンを終え、複数のプロ球団が注目するまでに成長した加藤選手に話を聞いた。
■才能に頼っていた
溢れる才能に頼っていた。「中学校くらいから背が高かった」という加藤選手。体格だけではない。とにかく足が速く、50メートルを5秒8で駆け抜けた。
「正直、高校の時は練習が好きじゃなくて...」と加藤選手は明かす。
「背が高くて、足速くて、だったらもう(試合に)出れた」というのが理由だった。強豪校で試合に出るのは決して簡単なことではない。ただ、有り余るセンスが、練習の必要性を感じさせなかった。
高校生は卒業後、大学に行けば4年、社会人に進んでも3年間はプロ入りできない。1年でも早く念願のプロ入りを果たすため、加藤選手は独立リーグ入りを選んだ。
ここでの出会いが、加藤選手の意識を大幅に変える。
独立リーグにやってくる選手は、誰もがプロ入りを夢見ている。そうした環境に身を置くうちに、意識の高さに目覚めていった。「上のレベルでは全然ダメだったんです。周りがみんなプロを目指している環境で、意識の高さが自分の中で上がったと思います」と振り返る。
ヒートベアーズの選手は、シーズンを戦うため福島や新潟に遠征する。移動は深夜に済ませることも多い。プロのように、専用のグラウンドでいつでも練習できるわけではない。
限られた時間やスペースで、どう自分を鍛えるか。それを考え続けた結果、2019年シーズンには打率.310 、本塁打7、そして盗塁数は29を記録。主に3番・センターを打つチームの主軸にまで成長した。
■「全然打球が違う」
それでも、加藤選手に慢心はない。
取材に訪れた日、加藤選手は、角晃多監督(元千葉ロッテ)の投げるボールを相手にバッティング練習を行なっていた。その際、加藤選手よりも、同じ組で練習していた左打者の打球が目を引いた。
東北楽天イーグルスで左の中継ぎとして活躍し、野手登録でもプレーした片山博視・選手兼任コーチだ。
一振りごとに、硬式球が弾けるかのような音がする。センター122メートルの球場で、スタンドインを連発していた。片山コーチの打撃を日頃から見ている加藤選手は、刺激を受け続けている。
「全然打球の質も、飛ばす距離も違うので...あれくらいのレベルにならないとプロの一軍で活躍できないと僕も思います。体格もそうですが、まだまだ足りない部分がたくさんあります。いっぱい練習して追いつけ、追い越せです」
■エリートにも「絶対負けない」
加藤選手の元には、プロ複数球団から調査票が届く。身体能力抜群の外野手。糸井嘉男選手(現阪神)を目標にしている。
「プロでは1番バッターで試合に出たくて。将来1番で3割以上打って、40盗塁して、守備ではゴールデングラブを取る選手に。小さい頃から糸井選手に憧れていたので、ああいう選手になりたい」
同期では、山本由伸投手(オリックス)や今井達也投手(西武)、それに梅野雄吾投手(ヤクルト)らが頭角を現している。それでも加藤選手には引けを取らないだけの自信がある。
「エリート街道を歩んできた選手は、華もあって、すごく実力もあると思うんですけど...僕達みたいにBCでやってきた選手も絶対に負けない。
BCの選手は練習場所もままならない、移動も大変な場所で、短い時間でも内容の濃い練習をしてきました。同じ舞台、同じ土俵でやったら、負けるはずがないと思っています」
加藤選手は記者の質問にも流れるように答えてくれる。爽やかな面立ちは、映画「海猿」などに主演した伊藤英明さんに似ていなくもない。
「伊藤英明さんに似ているっていうのは、1回だけ言われたことあります」と笑って見せた。それでも謙遜し「イケメンではないです。(チームメートの)松岡よりかは上ですけど(笑)」と答えてくれた。
絶対、2019年のドラフトでプロに行く。そう決意を固めている。やれるアピールはすでにした。静かな心で指名の時を待っている。
「あとは待つだけなので。良いことでもちょっとしておこうかな...ゴミでも拾おうかなと(笑)
野球を長年やってきて、まだまだやりたいんです。身体が壊れるまでプロの世界にいたい。40歳...いや42...43歳までやりたい」
加藤選手の独占インタビューや打撃練習の様子は、ハフポストのYouTubeチャンネル「はふちゅーぶ」で全編公開しています。