クリスティ・ペレイラさんは5月、保護犬の里親募集サイトを見て言葉を失った。
ウェブサイトには、ペレイラさんが1年前に安楽死を依頼した愛犬のボーの写真が載せられていた。
安楽死させたはずのボーが、なぜ保護施設で里親を募集しているのか――。犬が生きていることを知ったペレイラさんは返還を求めている。
AP通信によると、ペレイラさんはアメリカ・メリーランド州に住んでいた2022年に動物保護団体「ロストドッグ&キャットレスキュー基金」 に450ドル払い、生後2カ月の子犬を譲り受けた。
ボーと名付けたハウンドのミックス犬はペレイラさんによく懐き、寝る時も一緒で相棒のような存在だったという。
しかし、自宅に迎えてから数カ月後、ボーは壁に頭を押しつけたり、噛んだり吠えたりするなど、様子がおかしくなった。病院で診てもらったところ、神経の損傷か肝臓の問題の可能性があると言われた。
検査にかかる費用は、最大で1万2000ドルで、獣医師からは「問題がわかる可能性は非常に低い」「仮に原因が見つかったとしても、治療できる可能性はさらに低い」とも告げられたという。
ボーの健康状態は悪化する一方で、排便や排尿のコントロールもできなくなった。ペレイラさんは獣医師から「回復は難しいかもしれない」と言われ、安楽死の検討を勧められた。
ペレイラさんはロストドッグ&キャットレスキューに相談した後、苦渋の決断をした。2023年3月にモンゴメリー郡の動物施設にボーを連れて行き、15ドル支払って安楽死を依頼。施設では、ペットを安楽死させる時は飼い主が同席できないルールになっていたという。
しかしそれから1年が経った2024年5月、ペレイラさんがたまたまロストドッグ&キャットレスキュー里親募集ページを見ていると、そこにはボーの写真があった。
ボーは成長していたものの、模様も同じで、かつて一緒に暮らしていた愛犬であることがわかった。ボーは保護施設では「エイモス・ハート」という名前が付けられ、「この1歳半の子犬は、賢さで魅了し、冒険心であなたを活発にさせる」と紹介されていた。
驚いたペレイラさんが保護施設に電話したところ、ボーは安楽死させられなかったことが判明したという。
ワシントンポストによると、安楽死のためにボーを受け入れた郡の施設の獣医師は、神経系ではなく肝臓に問題があると診断。治療は可能だとして、ボーを安楽死させずにロスト・ドッグ&キャット・レスキューに引き渡した。
その後、ロストドッグ&キャットレスキューはクラウドファンディングで7000ドルを集めて手術を実施し、ボーが順調に回復したため里親を募集したという。
ペレイラさんは返還を求めているが、ロストドッグ&キャットレスキューのスタッフの一人から、電話でボーを「見捨てた、見殺しにした」と責められ、犬は返さないと言われたとAP通信の取材に述べている。
ペレイラさんは手術費用の7000ドルも払うとしており、「聞きたいことはたくさんありますが、何よりもまず戻ってきてほしい」と訴えている。
一方、ロストドッグ&キャットレスキューの広報は「引き渡された犬を、元の飼い主のに戻すことはしません」と述べ、返還しない意向を示している。
「私たちの使命は、地域社会にとって安全な犬を安楽死から救うことです」