1年ほど前に「ディッキ族」の話をした。
その後meryでまとめられるなど「注目◎おしゃれライブキッズたちは”ディッキ”を履いている!!」にも取り上げられるなど、ジワジワと浸透している。
どれくらい浸透しているかというと、ツイッター上のツイート数が、「ディッキ」のほうが「ディッキーズ」の数倍多い、というくらいトレンドになっている。もちろんツイッターは若年層が多いので偏りはあるが、1年前だと真逆だったのでそこから比べると「ディッキ」というツイート数は数十倍になっている計算だ。
ところで改めてディッキ族の定義を確認すると、「ディッキ族」とは"Dickies/ディッキーズのハーフパンツをはいて(主にパンクロックの)ライブやフェスに行く人々"だ。
何事も継続は力なり、ということで普段のネットモニタリングだけでなく昨年に引き続き幕張のロックフェスPUNKSPRING2014で今年も現地視察を行うことに。そこでは色々と変化があった。
まず、数が増えた。約1万7千人が参加する屋内フェスで、何箇所かに立って定点観測していたのだが、自分が3時間くらいかけてカウントしただけでその数は1000名近くにのぼった。もちろん行きかう人をチェックするのでモレもダブりもあるのだが、体感的にはとにかく「どこを向いても目に入る(視界に3組くらいは確実に入ってくる)」状態で、同じような印象を持った参加者も多かったのではないだろうか。
昨年との比較で変わった点と言えば…
■昨年:全体のうちディッキーズ着用者は10%から15%くらい
★今年:体感的にはさらに増加した印象。前年3割増
■昨年:フェス全体の男女比は7:3、ディッキーズ着用者だと5:5。
★今年:明らかに女性の割合が増加。4:6くらいの勢い。もともと女性のほうが目立つ印象だったが、その傾向はますます強くなっている
■昨年:穿いているのは全体のうちディッキーズ着用者は10%から15%くらい
★今年:好きなバンドの刺繍やメンバーサイン、ファン同士のサインなどカスタムする人も出現。バンドによってはオリジナルのリメイクを売り出すケースもあり、早々に完売するなど人気を博している
■昨年:穿いているのは10代~20代前半
★今年:男性だと30代前半くらいまで幅が広がっている
■昨年:穿いている人同士はすぐ仲良くなる
★今年:ますます一般化。フェスフラッグに書き込んだりツイッターのアカウントを交換したり。数が多いため、「バンTに赤いディッキが目印です!」とツイートするものの、バンTも黒色が多いためなかなか現場では目印にならず見つけづらい。最近ではツイッターアカウントを直接書き込んだり、ガムテープに書き込んでそれを貼り付けるなど、あの手この手で目印になるような工夫をしていることがわかる。この傾向を「音楽よりも人とつながりたい気持ちが強すぎてドン引き」という声があるのも事実だが、そうしたつながりからこれまで知らなかったアーティストや音楽に出会えるのもまた事実。
■昨年:ディッキ族タイツをはいているのが3~4割。
★今年:天候が良かったのでほぼタイツ派はいない
■昨年:ディッキ族はマンウィズ、NAMBA69あたりに強い反応
★今年:SiM、coldrain、Total Fatなどに強い反応
また今回はじっくりと現場でカウントしたので、穿いているパンツのカラーをしっかり調査することができた。これは現場に行かないと男女ごとの違いなどは分からないため、貴重なデータとなっている。
緑紫緑青赤赤赤赤赤紫赤赤黒黒灰赤赤灰紫緑紫緑黒黒黒緑灰黒水赤紺緑黒黒黒灰緑紫紫灰赤…とひたすらカウントしていたので周りから見ると変な人だったことは間違いないが...
主な発見としては以下である
1. 赤が男女ともに1番人気
2. 男性は赤と並んで黒が人気
3. カスタムパンツを作っている人が結構いる
特に気になったのは数人がはいていたコンビのタイプで、おそらく自分で2つのパンツをつなぎ合わせて作ったものだと思われるのだが、気になって調べてみたところ、自分好みのカラーに染めあげた人もいる(http://ameblo.jp/miiin-xxx/entry-11813754806.html)など、「人と一緒の色が欲しい」という気持ちの一方で「人とは違う色が欲しい」という気持ちにも切り替わっていく心情が垣間見えた。
こうしたカラーの傾向は製品をどれくらい生産するか、というアパレルの永遠の課題に対する何よりの示唆なので、現状の傾向だけでなく、どのようなものを欲しているか、ウェブサイトのデータやツイッターでの声、現場での売れ行きなど全ての情報を総合しながらともに考えていきたい。
また去年は気づかなかったことだが、「ディッキ族」が穿く42283というショーツ(http://dickies-jp.com/category/73.html)はポケットが普通の商品より多くついており、荷物を預けてほぼ手ぶらで移動することが多いフェス会場において「ペットボトルがそのまま入る」「財布や携帯を入れて激しく動いても落ちることがない」というポイントが支持されていることもよく理解できた。
昨年の同時期はテレビでの露出も含めどちらかというと迷惑な存在として語られることもあった「ディッキ族」だが、今でも同じイメージが一部で残っている一方、全体のトーンに占めるネガティブな比率は昨年から比べるとかなり少なくなっている。
これは、ひとつには全体の母数が増えたことにより「メジャー感」が出てきたことと、またこれまでフェスに来たことがない人が「フェスの制服」として着るため、前方の激しいモッシュピットではなく後方でおとなしく見ている人の比率があがったこと、それに加えて「ディッキ族批判」に対して「ブランドは悪くない」「一部の人のせいで全体が悪く言われるのは違う」と思う人たちが会場の掃除をしたりモッシュで転んだ人を助けたりと、いい文脈で「ディッキ族」が語られるケースも増えてきたことが影響していると思われる。
丈夫さ/利便性/価格/対象(バンド)との結びつき といった要因からますます定番化すると思われる「ディッキ族」。そこからどう進化していくのか、フェスだけではないディッキーズの魅力を伝えていけるよう、取り組んでいきたい。