「SDGsは、企業の独り言ではない」みんながアクションしたくなる“コアイシュー”のつくり方

「正しいけれど他人事」なSDGsを“自分ゴト化”するコツとは?

時代や価値観、地球環境など、すべてが急速に変化している。全世界を舞台にした新型コロナウイルスの混乱は、人類の価値観の変容を一気に加速する可能性もある。

そんな今、SDGsについてその意義を否定する企業はないだろう。誰もが「やらないより、やった方がいい」と答えるはずだ。では具体的に何をすればいいのか?と問うと、多くの人がとたんに口をつぐんでしまう。この思考のスタック状態を打破し、なすべきアクティベーションを生み出すにはどうすべきか。その方法を探る。

(c)新!ソーシャル・デザイン・エンジン、電通パブリックリレーションズ

SDGsは、企業の独り言ではない。

そもそも、SDGsと、これまでに企業が取り組んできたソーシャルグッドな取り組みとは、いったい何が違うのだろうか。それは、ある「結果」を出さなければならないことだ。2030年までに達成しなければいけない目標が具体的に掲げられている。その目標は人類全体として取り組むべきものであって、企業だけで到底達成できるものではない。

逆にいえば、いかに生活者が主体的に参加することができるかが、SDGs成功の可否を握っているといえる。そのとき、企業に何ができるのかが問われている。今、コロナの混乱で、生活者には体験したことのない「考える時間」や「振り返る機会」が与えられている。そんな今だからこそ、企業はポストコロナの時代がどんな時代になっていくべきなのかを伝えるメッセンジャーにならなければならない。自社のイメージアップなどのために行ってきた過去の取り組みとは、根本的に在り方がちがうのだ。

アクティベーションは、生活者を巻き込むものであること

地球に生きる一人一人の生活者が、「今までとちがう」価値観に切り替え、行動する社会へと進化する。そのために企業が果たすべき役割は、未来の社会の在り方を提案し、人々の賛同を得ていくことだ。そこで必要とされるSDGsアクティベーションは、生活者に気づきを与え、生活者が共感し、生活者が「自分ごと」として取り組みたくなるものである必要がある。

こうして「次の時代」を提案し、導くことのできた企業こそが、人々から信頼され、次の時代を存続していくのだろう。つまり、サステナブルな生活者づくりが、企業のサステナビリティでもあるのだ。

では、人々が共感し「自分ごと化」できるアクティベーションは、いったいどうすれば生み出すことができるのだろうか。どんなに正しくても、誰も参加したくならないものではいけない。誰もが参加したくなるが、サスティナビリティに資さないものでもいけない。その「ちょうどいい」場所にある、みんなの気持ちをアクセラレートする施策が、きっと存在するはずだ。

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いきなりアクティベーションから考えないこと

アクティベーションアイデアを考えるときに、陥ってしまいがちな罠がある。それは、アクティベーションそのものをいきなり考えようとしてしまうことだ。アクティベーションは、イシューのソリューション施策として生み出される。ということは、大事なのはむしろ「イシュー」の方だ。イシューに共感性があり、気づきがあり、ひとごとと思えない、いてもたってもいられなくなるような何かがあれば、そのイシューを解決するアクションもまた、必然的に皆の参加意識の高いものになる。

ここでいう共感性のあるイシューというのは、例えば「貧困問題」とか、「ジェンダー問題」などというような大括りな「お題目」のことではない。そのままでは「正しいけれど、グッとこない」イシューを、もっとわくわくするようなイシューに変換したものだ。別の言い方をするなら、「いまここにある貧困問題」とは、「つまり具体的には何がどうする問題なのか?」へと飛躍的に置き換えられたものだ。その飛躍にこそ、人々を引き付けるチカラがある。すると、一見イシューではないように見える事柄の中に、イシューの本質が横たわっていることが発見できる場合もある。そんな発見こそが、鉱脈だ。

こうして発見された、皆がアクションしたくなってしまうようなイシューを「コアイシュー」と名付けたい。たくさんの人が関わりたくなるような、解決アイデアを出したくなるような、わくわくするような「コアイシュー」を見つけることこそが、生活者がSDGsを自分ごと化するきっかけとなるのだ。

アクティベーション発想の鍵、コアイシュー・ファインディング

しかし、鉱脈を見つけるには、訓練が必要になる。

鉱脈を見つける訓練とは、私たちの何げない日常を、あるレンズをかけて見つめてみるという習慣づけだ。そのレンズを「イシューレンズ」と呼んでみよう。そのレンズを通して見ると、なんでもない日常の中のさまざまなものやことが語りかけてくるように見える、魔法のレンズだ。

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いや、もちろん、これは例え話だ。しかし、コアイシューを見つける技術を端的に言い表している。朝起きてから、家を出かけるまでの1秒1秒に、イシューとなることはないか?どんな小さなことでも。一見なんのイシューもないように見える景色の中にも、見方を変えたり、立ち位置を変えたり、解釈を変えたりしてみることで、イシューがあることが見えてくるものだ。そして、そのイシューが存在する理由を考えてみることで、ひとつ上のレイヤーのイシューが見つかったりもする。

訓練ができたら、イシューレンズをかけて世の中を見渡してみよう。テレビやネットでニュースを見るときも、ツイッターやフェイスブックを見るときも、はたまたわが子や恋人と話をするときも、気がついたらイシューレンズをかけて、「その不都合はなぜ起きている?」と想像力を働かせてみる。

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そうして見つけたイシューに、魅力的な名前をつけるとしたら、いったいどんな「タイトル」がつけられるだろうか?具体的な言語化は、イシューを共有する上での重要なファクターとなる。

そんなふうに思考を重ねることで、イシューをハンティングしていくのだ。グッとくるイシューは、人々を引き付ける力を持っている。それを「コアイシュー」に決めよう。コアイシューが決まれば、アクティベーションアイデアはどんどん湧いてくる。

とかく企業にいると、自社にできる事柄の範囲の中からアクティベーションを選ぼうとしてしまいがちだ。しかし、重要なのは「やれること」から発想するのではなく、イシューベースで発想し、イシューと自社の得意なことを、アイデアと情熱で結びつけることなのだ。それまでは離れていた両者が結びつくからこそ、そこに提案性のある新しい「価値」が創出される。

だから、企業がSDGsに取り組むことは、社会をどんどん新鮮な発想へと進化させる力になるのだ。

SDGsは、やらなければならないからやるのではなく、やると世の中がどんどん良くなるから、みんなが笑顔になれるからやること。企業が利益を追求することが社会善そのものとなった時代は終わり、企業が利益だけを追求する時代も、終わった。次の時代は、企業がすべてのステークホルダーの幸せを追求する時代になる。それを生活者と共有するアクションこそが、企業によるSDGsアクティベーションなのだ。

<プロフィール>

電通のラボ:新!ソーシャル・デザイン・エンジン

社会課題を起点としたコミュニケーションをプランニングする社内横断チーム。各メンバーの得意領域を生かし、戦略PR、CSRコンテンツ開発、地方創生、インターナルコミュニケーションなど、幅広く展開している。

電通パブリックリレーションズ

国内外の企業・自治体・団体などの戦略パートナーとしてレピュテーション・マネジメントをサポート。インサイトに基づくコンテンツ開発と最適な情報流通デザインを通し、クライアントと共にソーシャル・イノベーションへの貢献を目指している。

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