SDGsのラベリングから、積極的な「SDGsストーリー」へ
なぜ、自分たちの企業・団体はSDGsに取り組むのか。17個のアイコンのラベリングに終始してしまっては伝わらない。“知ってもらう”ことは、“SDGsを推進する”と同じくらい重要なのだ。
前回の記事に続き、継続的なSDGs活動のため、「どのような活動をつくり、どう伝えるか」、伝えるために必要なことは何なのか?その実践を考えていきたい。
パートナーシップで取り組む――地域との包括連携など
地域に根付く活動を1社のみで続けることは困難だ。そのためにも地方自治体や地域のコミュニティとの連携が必要となってくる。何もツテがない自治体に飛び込みで行くのは気持ちとして難しいが、企業が地域の課題をきちんと把握した上で、課題解決の提案に行くのであれば、きちんと相談に乗ってもらえるはずだ。
日本の市町村数は約1700。全自治体が単独で全ての社会課題を解決できるわけではなく、良い外部協力は検討していただける。企業も積極的に提供していくべきだ。
ただし重要なことは、その地域にしっかりと根付いた活動を続けていけるかだ。
沖縄・西表島の自治体の方にSDGsの協力を打診したことがある。その際におっしゃったのが「多くの企業・団体から申し入れがあり、ありがたいことだが、一過性のものや、過度に地元稼働の負担が多いものは人の問題もあり、お断りしている」という言葉。
- この地域にこそ必要なこと、
- この地域の人々に受け入れられるもの、
- 地元のキャパシティーで推進できるもの
を考えて判断されているのだ。
地域の状況を把握することなく、SDGsの定着はあり得ないと思われる。一方的な課題の設定と、問題の押し付けにならないよう考慮する必要がある。
また、北陸のある地域に製品の寄贈を申し込んだことがあったが、お断りされた。その理由は「1度目は製品をもらえるけど、2度目からは買ってくださいということなら継続できない。継続できないことは、心に根付かない」。製品の寄贈だけではなく、その地域の人々の意識を変える啓発活動も大切だったのだ。
「魚をあげても1日で食べてしまうが、魚の釣り方を教えれば長い間食べていける」といった言葉があるが、援助といった目的で大量の自社製品(=魚)を寄付するだけでなく、地域課題の解決への道筋(=魚の釣り方)を共に考え、地域に根付かせることが必要なのではないか。そのためには、現地の仕組みや、その目的を知ってもらうための啓発活動が必要になる。自社の啓発活動だけで充足できない際は、積極的に地域との連携を求めていくべきだ。継続的なSDGsの推進はWin-Winの先にあると考えている。
SDGsの進捗を数字で確認する――アンケート
地域での継続的な社会貢献やSDGs活動には少なからず費用がかかる。費用対効果はどうなのか?その議論は必ず起こる。そのためにも実施に際しては、人々の意識や行動の変化をきちんと把握していきたい。改善目的を明確にし、事前と事後の状況を数字で確認し、実施によりどの程度改善できたか常に可視化する。
費用対効果は、改善目的の困難さと実施のクオリティーの掛け合わせだ。売り上げを2倍するといった目的を達成することは困難であるし、全て外注し、ディレクションもしないで、実施クオリティーを担保することもできない。
また、単なるイベントの開催回数と来場者人数だけで、実施結果を論じることもできない。
継続的なSDGs稼働により、実際に地域がどう変わってきたのか、地域に住む人々の“意識変化”と“行動変化”をアンケートで回収し、きちんと年間を通じて集計しながら推進すべきだ。量と質の両面で数字を把握し効果を確認していかないと、長期間SDGsを推進することはできない。
言葉で語ることで広く賛同を得られる――インタビューイとして
熱量を持って「当事者が語る」ことはPRの基本的活動のひとつだ。「メディアから取材されることはないので話す機会はない」ということではない。自分たちのSDGs活動の結果を、その地域のイベントに登壇して語ったり、Webサイトでインタビューに答えたり、積極的に社内で語るのも重要なことだ。
はやる気持ちを抑えて、聞き手の人々の思考に沿いながら、一つずつ話した内容の合意を積み上げていくことを意識する。ビジネスプレゼンテーションでは、海外のプレゼン映像のように、スタンディングでジェスチャーを大きくして、“華麗に”“流ちょうに”話す方が増えているが、SDGs活動を多くの人々に語る時には、過度に誇張せずに“シンプルに”“素朴に”話すようにしたい。
話す構成をシンプルにしていく、そのためにはやはり事前にどれだけ準備できるかが成否を分ける。新聞記事や広告コピーの制作において、聞いて分かりやすい言葉づくりとして、次の五つのポイントがある。
- 無駄な言葉、あいまいな言葉を省いてシンプルに
- 接続語で話を長く続けず、いったん文を切る
- 述語(動詞)をなるべく前に出す
- 修飾部(形容詞や副詞)はその後に
- 丁寧語は必要以上に言わない
SDGs活動を語る上でも同じ点を考慮して欲しい。聞く人にとって楽に聞ける言葉で話す。それにより伝える言葉の力が強くなる。過度の演出でSDGsの活動を語るのではなく、ストレートに自分たちの活動の熱量を肉声で伝えていくのだ。自分たちの苦労も汗も、言語化して伝えていかないと世の中に広く知られることはない。実施に満足せずに、成功経験も失敗経験も世の中に語り、共有することで、また新しい価値が生まれていくのだ。
先が見えない不透明な時代になり、規模の大きなSDGsの活動を続けることは経済面から困難かもしれない。しかし、どのような規模の活動でも、そこで得た経験を言語化して伝えることができれば、後学のためになる。一緒に頑張っていきましょう。
#電通TeamSDGs
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