これまで行政が管理していた都市公園を民間の企業や団体に委託する動きが広がっている。“公共のもの”として民間企業の営利的な公園利用は難しかったが、公園が民間委託され、それにより公園の中に新しいカフェや水族館が開業した。新しいカフェや水族館目当てに人が訪れ、都市公園の魅力が再認識されるといった好循環が生まれている。
都市公園の活性化は、SDGsの11つ目にある「住み続けられるまちづくりを」につながる重要な施策と考えている。今までその価値を十分に活用しきれていなかった都市公園の活性化について考えていきたい。
都市公園の活用に関しては、アメリカのニューヨーク(NY)市が進んでおり、持続可能な地域作りの拠点として、民間への業務委託も進んでいる。今回はNY市の実例を元に考察していきたい。
NY市では、1970年代の経済危機で公園管理予算が枯渇し、多くの公園の維持管理が難しくなっていた。予算の削減により次第に荒れていく公園を見かねた地元ボランティアグループが主導となり、公園のベンチの修繕や草刈りなどを実施していた。次第にそのボランティアグループが成長して、行政から公園の運営の一部を委託されるようになっていった。
その後、NY市の公園の民間委託は進み、民間委託契約している公園は18の公園にのぼる。その中でも、公園運営の100%権限を渡し民間委託している都市公園は3つあり、90%の権限委託している都市公園も2つある(2016年時点)。
もちろん公園の民間委託・自由化を無計画に進めているわけではない。運営を担うに足るグループかどうか行政との長期的関係性の中で個別に判断し委託されている。
収益基盤があり、経営体制がしっかりしている。また会計や決算を適切に行っており、透明性がある組織として安心できるグループに民間委託をお願いしている。
地域のボランティア組織を育て、公園の自治を任せられる組織へ育成させるプログラム「Partnerships for Parks」をNYC公園局とNPO団体「City Parks Foundation」が提携し効果を上げている。
都市公園の価値が高まることで、周辺エリアのオフィスや住宅価値も高まる。それにより、都市のエリア価値が高まり、商業が活性化して税金が集まる。更にNY市としても他の直営公園へ投資余力が生まれ、他のエリア価値も高められ、NY市全体の価値が上がるという、大きな循環が起こっているのだ。
また、地元のグループや団体に公園運営を委託すると、地元との付き合いが深いので、寄付金の収集なども州が集めるより多く集めることが可能になっている。
経済的にも、自分たちで稼いだイベント収入やテナント収入を自分たちの公園に再投資することで、公園の価値を高く維持し、周辺地域の価値向上に影響を与えている。運営的にも、自分の公園をよく理解しており、公園をよくするアイディアが豊富で新しい工夫があり、地元密着経営のメリットを上手く活用する循環を作り上げている。
SDGsの実現に向けて長期間取り組んでいくには、地域に根付くエコシステムを作れるかどうかが重要だ。人・物・金がしっかりと循環することで持続可能性が高まる。
地元が必要としないと続かない。それを支える人がいないと続かない。お金が回らないと続かない。
持続可能な社会とは何か、そのためにその地域で必要なのは何か、規制緩和だけではない、経済的観点も考慮したエコシステム作りが求められている。
<プロフィール>
電通 PRソリューション局 パークマネージメント担当
都市において公園は地元の人々の活動拠点であり、公園を造園する以上に、長く運営し続ける地元のコミュニティをデザインすることが必要です。
地域の社会課題に向き合い、地元が地元で実施できる地元ならではのエコシステムを確立するお手伝いをしています。
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