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音楽家の坂本龍一さんが、亡くなる直前まで訴え続けた「神宮外苑の樹々を伐採しないでほしい」という思い。
この遺志を引き継ぎぐデモ「Demonstration with Ryuichi Sakamoto」が4月22日、神宮外苑の絵画館前広場で開かれた。
主催者が発表した参加者数は6000人以上。神宮外苑では再開発工事のために、すでに建国記念文庫の森など一部地域が工事用の白い囲いで囲まれ、立ち入れなくなっている。
この白い囲いを背にして作られたステージでアーティストやアクティビストなどがスピーチや音楽演奏を行い、神宮外苑の樹木を守ろうと訴えた。
「声をあげれば社会は変わる」
バンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のボーカル後藤正文さんは「坂本さんは常々、ミュージシャンが集会やフェスティバル、ステートメントの発信などをやらなくてもいい社会が来た方がいいとおっしゃっていた」と振り返り「有名人にすべて預けるのではなく、私たち一人一人が、将来どのような姿であるべきか、あってほしいのかを話し合うことが必要だと思います」と呼びかけた。
楠本さんは活動を続ける中、何度も「声をあげても無駄」と言われて心が折れそうになったこともあったという。しかし「今日たくさんの人が集まっているのを見て、諦めなくて良かったなと心から思う」と語った。
「声をあげれば社会は必ず、少しずつでも変わっていきます。でもまだここで終わりではありません。今ここまで高まってきた私たちの声と、坂本さんの思いを途絶えさせないように、私たちは声をあげ続けなければいけません」
神宮外苑は約100年前に、国民の寄付や献木、勤労奉仕によって作られた。
アーティストのコムアイさんは「100年前の人たちが、自分たちの死んだ後の世界のことを思って、こうして今の東京を整えてくれました。坂本龍一さんも、自分が亡くなった後の世界を想像して、自分がいないのは寂しいけれど、それが自分の理想とする世界であってほしいと願って最後まで動いてくれたんだと思います」と思いを馳せた。
また、再開発見直しのオンライン署名の発起人ロッシェル・カップさんは、坂本さんの追悼記事を数多く読んだ中で、印象に残ったという言葉を紹介した。
「それは『声を上げないとしたらそれがストレス。見て見ぬふりするというのは僕にはできないことですから』というものです。おかしいと思ったこと、変えるべきだと思うことについて、引き続き発言し続けていくことに変わりはありません。力を合わせて神宮外苑の再開発の見直しをするよう一緒に協力しましょう」
天国から『何かしないの?』と急かされている気がする
デモを主催したD2021は、東日本震災から10年の節目に、坂本さんと後藤さんが中心となって立ち上げた、未来を志向するためのムーブメントだ。不条理に対する抵抗の声であり、民主主義を維持させるための運動でもあるという。
神宮外苑の再開発では、球場とラグビー場の移設や高層ビルの建設に伴い、多くの樹木が伐採される予定だ。
そのことを深く憂慮した坂本さんは、がん闘病中だった2月に、小池百合子東京都知事らに手紙を送り「目の前の経済的利益のために、先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしかすぎません」と訴えた。
しかし、闘病中の坂本さんの訴えや、多くの市民の反対にもかかわらず、小池知事は再開発を見直す姿勢は見せていない。
こういった状況の中、D2021は坂本龍一さんの遺志を引き継ぐためにこの日のデモを開催。
ステートメントで「何もしないで終わることを彼が望まないことも知っています。天国から『何かしないの?』と急かされている気もします」と述べた。
坂本さんの思いを受け継ぎ、神宮外苑やその他の緑を守りたいと思った時、私たちには何ができるのか。
デモに参加したアクティビストでDEPT Company代表のeriさんは、「署名や声がここに集まっただけで、物凄いパワーになります」と述べ、一人一人の署名やデモ参加が、社会を動かすと強調した。
また、後藤さんは、坂本さんが生前に残した言葉を次のように紹介した。
「坂本龍一さんのメールから引用した言葉を紹介したいと思います『私のように多少名前が世に知られたものの声ではなく、市民一人一人がこの問題を知り、直視し、将来はどのような姿であってほしいのか、それぞれが声を上げるべきだと思います。日々の生活でたった今、声を上げることが難しい場合でも、次の選挙で意向を投影することは可能です。選挙も消費行動も、等しい力を持って1票になると思います』」