高齢化が進み、介護の話題も多くの人にとって身近になりつつある日本。
介護と一口にいっても、その形は様々だ。親は子どもに介護してほしいのか、子どもは親を自宅で介護したいのか、どの程度の介護までならそれが叶うのかなど、丁寧な会話の積み重ねの先に、それぞれの最適解がある。
しかし、実際に将来を見据えて会話をできている人がどれだけいるだろうか。ひょっとしたら、優しさや気遣いから、互いに「こうした方がいいよね」と思い込みやすれ違いが生じているかもしれない...。
そんな中、株式会社ダスキンが展開するヘルスレント事業(※)は、60代~80代の親世代1000人、20代~50代の子世代1000人の計2,000人を対象に、介護に対するアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に関する調査を実施した。
※ヘルスレント事業:主に介護保険制度が適用される介護用品・福祉用具のレンタルや販売を行う事業。
経験者と未経験者で、大きく異なる「介護」のイメージ
まず調査が明らかにしたのは、「老後の世話(介護)」について話し合ったことがある人が少ないという現状(親世代では25.4%、子世代38.9%)だ。この実態を念頭に、介護の今を紐解いていく。
調査では、介護に対するイメージが、介護経験者と未経験者で大きく異なることが明らかになった。介護経験者の40.6%は介護を親孝行と考えており、未経験者の23.5%と大きな差があった。また経験者は「恩返し」「家族の絆を深める」と考える人の割合も大きく、未経験者よりもポジティブなイメージを持っている傾向にあることが分かった。
一方で「肉体的な負担が大きい」「つらい・苦しい」「重荷に感じる」など、ネガティブなイメージを持っている人の割合は、未経験者の割合の方がいずれも大きい結果になった。介護には、実際に介護をするなかで体感するポジティブな側面があることがうかがえる。
とはいえ、介護に関するイメージの上位は総じてネガティブなものが多いのも事実だ。特に「精神的な負担が大きい」は70.8%、「肉体的な負担が大きい」は64.3%と割合が大きい。
しかし裏を返せば、介護をサポートする社会の仕組みがより整いさえすれば、介護経験がもたらすメリットにより焦点が当たり、ポジティブなイメージが普及するかもしれない。
親は「親族・家族による介護」を望んでいない?
親世代に自分自身が介護状態になったと想定し、そのときの気持ちを聞くと「できるだけ自立したい」(56.3%)と回答した人の割合が最も大きかった。一方で、子世代に自身の親が介護状態になったと想定し、そのときの気持ちを聞くと「不安」(57.7%)と回答した人が最も多かった。
また、「家族・親族による介護」についても、親世代では「家族・親族による介護」を望むのが26.0%であるのに対し、子世代では「家族・親族による介護」を望む割合が56.7%と大きく、顕著な差が開いた。
さらに、親と子の暮らし方についても「子どもは親の暮らしをサポートすべきだと思う」と答えた子世代は66.7%であるのに対し、親世代では45.3%に留まった。
これらの結果から、子世代は親の介護に対して強い責任を感じている傾向にあることがうかがえる。
親世代が家族や親族からの介護を望まない理由は、調査では明らかにされていないが、介護が大きな負担として捉えられている現代社会において「子どもに迷惑をかけたくない」と考える人が多いことは想像に難くない。
しかし、親世代と子世代で完全に違う方向を向いているのかといえば、そういうわけでもなさそうだ。調査では、親世代も子世代も8割以上が「外部施設・行政サービスを利用した介護」(親世代84.5%、子世代82.2%)を望んでいる。要介護度(どの程度の介護が必要か)や経済状況などの要因もあるが、外部施設や行政サービスなどの「外からの助け」を借りつつ、自分自身や家族にとって最適な介護の形を模索したいと考えているようだ。
男女で異なる?「家族からの介護」への思い
調査では、家族からの介護について、男女で異なる考えを持っている傾向も明らかになった。
「家族が介護をすることは家族愛や親孝行の表れである」という考えについて、「そう思う」と答えたのは男性が59.7%であるのに対し、女性は50.7%。また、介護が必要になった場合に「家族に介護してもらえる方がうれしい」という考えに「そう思う」と回答した男性は57.9%であるのに対し、女性は39.3%に留まった。
一方で、介護を含み、家族の問題は「家庭内で解決すべき」と考えている割合は、男性の方が女性よりも大きいようだ。
調査では「家族の問題は家庭内で解決すべき」という考えについて、男性の52.7%が「そう思う」と回答したのに対し、女性は40.0%だった。また、年代別では、20代が57.4%と最も高くなっている。「家庭の問題を外に見せてはいけない」についても、女性(18.4%)より男性(27.9%)が多く、20代では37.4%と高くなっている。女性より男性、上の世代より若い世代に、世間体を気にする傾向が見られた。
人の数だけ「最適な介護」の形がある
今回の調査では、介護における最適解が多様であること、そして多くの世帯でそれぞれが望む介護についての話し合いが十分になされていないことが分かった。
迫る年末年始、家族や親族と過ごす人も多いだろう。少し切り出しづらい話題かもしれないが、未来の自分や家族が幸せに過ごすために、ぜひ介護や将来について話し合ってみてはいかがだろうか。