CVRを上げるためのバナー制作4つのポイント~Yahoo!ニュースアプリA/Bテスト事例からみえた「都道府県ニュース」の隠れた需要

バナーをめぐるアプリチームの「戦い」はこれからも続きます。
Yahoo!ニュース

 世のアプリ運営者なら誰でも抱えている課題の一つに、「どう集客するか(=ダウンロードしてもらうか)」ということが挙げられると思います。Yahoo!ニュースはブラウザ、アプリの両方で展開しておりますが、もちろんYahoo!ニュースのアプリ担当者らもそのような課題を抱えており、日々研究・試行錯誤を続けています。今回は、Yahoo!ニュースアプリにおけるバナー集客の事例と、そこから見えてきたポイントをご紹介したいと思います。

※この記事は2015年7月22日に配信された記事です。

効果的なバナーをつくる4つのポイント

 アプリの集客方法には様々な方法がありますが、今回はYahoo!ニュースのブラウザ版の利用者に向けたバナー集客例を取り上げたいと思います。

 Yahoo!ニュースは、ご存知の方も多いと思いますが、アプリ版が登場する以前はブラウザ版のみを展開しておりました。アプリ版は現在は多くのユーザーの皆様にご利用いただいておりますが(上の画像は7月21日のApp Storeランキング)、一方で、ブラウザ版も多くの方々にご利用いただいております(下の図参照)。(※ちなみに、「なぜ同じニュースカテゴリにヤフーのアプリが2つ?」と疑問に思われた方は、こちらの記事に詳しく書かれておりますのでご参照ください)。

 そうしたブラウザ版のユーザーの方々にもアプリの存在を知っていただこうと、Yahoo!ニュースアプリではブラウザ版Yahoo!ニュース内に、例えば以下のような形でバナーを掲出しています。

 バナーを通じてユーザーにアプリをご利用いただくためには、まず何よりもユーザーに「届く」バナーを作る必要があります。今回はデザイナーの視点から、最近のバナー制作事例をもとに、効果的なバナーをつくるポイントを4つあげてみました。

  • アプリの「PRポイント」を探す。
  • コピーを載せる「デザイン」を探す。
  • 時にはバナーを「休ませる」。
  • 私情を捨て、「ユーザーに聞く」。

では、一つずつみていきます。

アプリならではの「特徴」を探す

 まず一つ目ですが、アプリチームでは、バナーのコピーに使用するためのアプリのPRポイント、つまり「特徴的な機能」は何かということを探ることからはじめました。Yahoo!ニュースアプリならではのポイントを洗い出して候補となるコピーをいくつか作成し、その中からCVR(ダウンロード率)の高いコピーを探す作業=A/Bテストを行いました。

 例えば、「地域設定をすることで、都道府県別のタブでニュースが読めること」「重要なニュースや防災速報がプッシュ通知で届くこと」「Yahoo!ニュースの公式アプリであること」「Yahoo!ニュース編集部が人力で作成したトピックスが読める=時間のない人も、トピックスに目を通すことで重要ニュースを一通りおさえることができる」「テーマ機能が備わっている」というようにアプリの特徴をいくつか洗い出してコピーを作成し、それらをA/BテストにかけてCVRを比べてみました。

 その結果、「都道府県別ニュースが読める」という機能に関するコピーが、特に数値が高いことがわかりました。

 ただし、この結果だけでは、デザインが良かったから、という要因も考えられます。そこで、同一デザインでのテストも試みてみました(下の図は一例です)。

 それぞれテストした結果、同一デザインでも「都道府県別ニュース」に関するコピーがほかよりも数値が高いという結果になりました。

 また、「都道府県別ニュース」が強いということで、「ローカルニュース」への訴求をはかる別の言葉として、「地元」という言葉も効果的なのかもしれないと考え、地元という言葉をつかったコピーも作成して比べてみました。

 すると、「地元」を使ったCとDよりも、AとBの「都道府県」が強いという結果に。

 なぜほかのコピーよりも「都道府県別ニュース」が効果的なのか、なぜ「地元」より「都道府県」という言葉がユーザーに響くのか――。私たちの間でも明確な答えは出ておりませんが、この数字には、先日のリアルnews HACKのイベントでも話題にのぼった「ローカルニュース」の未来を考える上でのヒントが眠っているともいえそうです。

一方、Yahoo!ニュースの岡田は、Yahoo!ニュースアプリの中の、ユーザーが現在地からの設定で地域別情報が取得できる都道府県タブのデータをスライドで開示し、「アプリの世界では、都道府県タブ、つまりローカルニュースの利用意向がエンタメやスポーツ、国内や経済など他のカテゴリに比べて非常に高い」と解説。「需要はある。地方の情報のそのものが全国に受けていないのではなく、"見せ方"次第で需要を掘り起こすことが出来る」と語りました。―引用:「地方のことは地方が一番知っている」とは限らない?――地方発の記者らとYahoo!ニュースが考える、ローカルメディアの未来

コピーをのせる「デザイン」を探す

 「何をPRするか」が定まってきたところで、次にコピーをのせるためのデザインを探ります。Yahoo!ニュースでは、さまざまなデザインを用意し、A/Bテストでそれぞれのデザインを比較して検証を重ねました。事例をいくつか紹介します。

大きいバナー?小さいバナー?

どの色がより効果的?

 複数の色をテストしてみたところ、Aの色が最も数値が高い結果となりました。

アプリストアのデザインとの関連性は?

 アプリストアのデザイン(テスト当時)↑と、バナーのデザインの系統が同じもの(B)と、そうでないもの(A)を比べてみると......

 アプリストアと同じ系統のデザインが、数値が高いという結果になりました。

 そのほか、以下のようにさまざまなデザインを比較しながら、効果的なバナーを探っていきました。

風景写真?人物写真?

男性?女性?

 (追記)こちらはテスト事例の一部になります。そのほか、複数のコピーとバナーをテストにかけてみたところ、いずれも軒並み女性のデザインが数値が高いことがわかりました。

2015年7月時点の最強バナーは「スマホを持っている女性+都道府県コピー」

 上記のほか、「手に何も持たない女性の写真を使ったバナー」と「スマホを持っている女性の写真を使ったバナー」についても比較したところ、スマホを持っている女性の写真を使ったデザインが軒並みCVRが高いという結果になりました。

 このようにA/Bテストを重ねた結果、Yahoo!ニュースアプリにおける「勝ち」バナーは、「スマホを持っている女性」+「都道府県別ニュースのコピー」というひとつのパターンが浮かびあがってきました。

 あらためて振り返ってみると、同じ「都道府県別ニュース」のコピーでも、デザインによって大きく差がついていることがわかります。コピーの魅力を生かすも殺すも、デザインが大きなカギを握っていることはいうまでもありません。

良いデザインも、たまには「休ませる」

 3つ目のポイントは、「作り続ける」ということ。同じデザインを出し続けたところ、徐々にCVRが下がっていくことがわかりました。

 つまり、どんなに良い数値をたたきだしたバナーでも、「連日登板するとユーザーに飽きられてしまう」ということを意味しています。そのため、「勝ちバナー」を見つけたからといって気は抜けません。常に新たなバナーを研究して効果検証し、PDCAをたえず回していくことが重要です。

 私たちも、「女性+スマホ」に代わる新たな効果的なバナーのデザインを模索しています。最近では、「都道府県別ニュース」というコピーにあわせて、「ご当地バナー」の制作を試みています。

 上のバナーは、「都道府県別ニュース」バナーの掲出をはじめてから、アプリの利用者が他の都道府県に比べて特に増加した広島県(左)と福岡県(右)のバナー。そのほかにもさまざまな「ご当地バナー」を日々制作中です(ご興味のある方は、Yahoo!ニュース内をめぐって探してみてくださいね)。

 ちなみに「ご当地バナー」で、2015年7月現在、一番数値の高かったバナーはこちら。

A/Bテスト結果は「ユーザーの声」

 手探りの中はじまったバナー研究ですが、今回の取り組みを通して、A/Bテストでユーザーに繰り返し問い続け、PDCAをまわし続けることの重要性をアプリチーム一同、あらためて実感しています。また、今回の例に限らず、引き続き新たな角度でのバナー研究も進めており、こうしたA/Bテストなどで得られたデータやナレッジを活用して新たな施策や集客につなげていきたいと考えています。

 A/Bテストが示す数字は、定量的に知ることができる一種の「ユーザーの声」。どんなに時間をかけ、制作者が手の込んだバナーをつくっても、ユーザーに届かなければ意味がありません。たかがバナー、されどバナー。バナーをめぐるアプリチームの「戦い」はこれからも続きます。

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