12月21日、ガンダムファンの間に衝撃が広がった。初代ガンダムの伝説のエピソードが2022年に映画化がされることになったからだ。この映画の元となった『ククルス・ドアンの島』とはどんな話なのか解説しよう。
■子どものころに見て「孤島のザク」がやたら印象に残っていた
あれは1980年代中盤。私がまだ小学生の頃だった。『機動戦士ガンダム』の再放送をテレビで見ていて、孤島に静かにたたずむザクの姿がやたら印象に残っている話があった。本来は敵同士であるはずのガンダムとザクの友情物語という異色のエピソードだ。
それが、『機動戦士ガンダム』第15話『ククルス・ドアンの島』だ。地球連邦軍とジオン軍の戦いの本筋に関わらないため、劇場版3部作でもこのエピソードはスルーされた。不安定な作画と特異なストーリーで知られており、TV版のみで見ることができる「伝説のエピソード」として、ファンの間で語り継がれてきた。
そんな『ククルス・ドアンの島』が、令和になって劇場映画化される。2022年初夏に劇場版『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が全国で公開されると12月21日に発表された。配給は松竹。監督を務めるのはTV版でキャラクターデザイン・アニメーションディレクターを務めた安彦良和さんだ。特報映像と、安彦さんの手によるキービジュアルも公開された。
1979年の初回放送から実に43年後のリメイク。SNS上では「まさかククルス・ドアンの島が単独映画になるとは」「てっきりネタだと思った」と衝撃が広がっている。
TV版の『ククルス・ドアンの島』は、Amazon プライムビデオなどで配信している。そのあらすじは以下の通りだ。
【※ここから先には、作品のネタバレがあります】
■TV第15話『ククルス・ドアンの島』のあらすじは?
ホワイトベースが地球連邦軍の空軍から緊急信号を受信する。訓練中のアムロはコア・ファイターで信号の発信元、連邦軍の支配地域の島に向かった。海岸には不時着した戦闘機。アムロはシートに縛りつけられた瀕死のパイロットたちを発見して応急処置を施す。
兵士に向かって石を投げる3人の子どもたちが現れる。「兵隊なんか来るな」「早くこの島から出てって」とアムロにも石を投げる。そのとき、ドアンと呼ばれる男がザクに乗って近づいてきた。ドアンは「君と戦うつもりはない。大人しく武器を渡してくれれば危害は加えない」と訴える。
しかし、アムロはコア・ファイターで抗戦するが、ザクの反撃で海に墜落してしまう。アムロが島の小屋で目覚めると、ロランと名乗る少女が「ククルス・ドアンがあなたを助けた」と告げる。
畑仕事をしていたドアンは「少年よ、私はこの子たちを守らなければならないんだ。いずれ、ジオンの連中が私を見つけ、私を攻撃してくるだろうな」とジオン軍の脱走兵だとアムロに明かす。地球連邦軍からの攻撃を避けるために、アムロのコア・ファイターを隠したという。
やがて、ドアンを追ってザクが島にやってくる。アムロは滝壺に隠してあったコア・ファイターでホワイトベースに帰還。ガンダムで再出撃してジオン軍を倒す。最後に残った敵のザクを、「モビルスーツの格闘技というのを見せてやる」とドアンが白兵戦を挑む。
格闘しながら、ドアンはアムロに打ち明ける。
「子どもたちの親を殺したのはこの俺さ!俺の撃った流れ弾のためにな。ジオンは子どもたちまで殺すように命じた。だが、俺にはできなかった。俺たちは子ども達を連れて逃げた。俺の命に替えても、この子どもたちを殺させはしない!」
戦いが終わり、アムロは「あなたの体に染みついた戦いの匂いが敵を惹きつける」とドアンに告げる。ドアンのザクを投げつけ海中へと沈めた。子どもたちは「なにするんだ!」と怒るが、ドアンは穏やかな表情で「あのお兄ちゃんのやったことは、とてもいいことなんだよ」と告げて物語は終わる。