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企業のオープンイノベーション戦略の一環として、スタートアップを一定期間集めてインキュベーションする「コーポレートアクセラレータ」を運営する企業は増え続けています。
その形態も、Amazonが立ち上げたAlexa Accelertorのように特定のプロダクトにフォーカスしたものや、FordやHondaなどがスポンサーするTechStars Mobilityのように複数の企業がスポンサーする業界特化型など、多様化を続けています。
その中でも、2014年のスタートから個人的に注目をし、ウォッチし続けているのがDisneyのコーポレートアクセラレータ、Disney Acceleratorです。
先日、そのDisney Acceleratorの2017年のバッチ企業が発表されました。
今回も例年と同程度の11社が選ばれていますが、そのリストを眺めて見ると、過去3年とは明らかに違う傾向がありました。さらに、今月LAに出張するついでバッチ企業に会いに行こうとDisneyの担当に連絡をしてみると、運営や方針なども大きく変わっていることを聞かされました。
ということで、今回のポストでは、Disney Acceleratorにみるコーポレートアクセラレータの進化とオープンイノベーションの未来について考えてみたいと思います。
2017年のDisney Accelerator
今回で4回目となるDisney Accdeleratorに採択されたのは、以下の11社です。
ジャンル的には、ロボット、VR、教育、メディア、とこの四年間大きく変わっていません。
ただ、このリストを見てすぐに気づくのは、これまでと比べて「有名な会社がたくさんある」と言うことです。
Utah発のこのスタートアップは、大規模かつ本格的な体験型VRテーマパークをオープンしたことで大きな話題となっています。
今度New Yorkに行くときに体験して見たいと思っているのですが、ヘッドセットだけでなくボディスーツも着て体験する映画のような世界観は、没入感の高い全く新しいユーザ体験を実現しているようです。
元々は、Disneylandのようなテーマパークの建設プロジェクトとしてスタートしたものの資金不足で頓挫し、二年前にVR専門にピボットをしたという背景があります。
現在はすでに三ヶ所でオープンをしており、今年に入っては映画ゴーストバスターズの世界に入り込める「Ghostbusters : Dimension」というアトラクションもスタートしています。
2013年に、ロボット業界のシリアルアントレプレナーであるSteve Cousinsによって設立され、Google Venturesなどから出資を受けているロボットスタートアップです。Crunchbaseによれば、すでに$17Mを調達しています。
簡単に言うと、「ルームサービスを持ってきてくれるホテル用ロボット」です。
すでに多くの実績があり、WestinやSheratonなど多くのホテルチェーンで導入が始まっています。日本でも秋から品川プリンスで導入されるようです。
一度実際に体験したことがありますが、エレベータに乗ることもできるし、いちいちボーイと話をしなくていいと言うのはとってもロボット向きの利用シーンだと感じました。
その他にも、1.2億人の月次利用者がいる女性向けメディアのBrit + Co、ゲーム開発で幅広く利用されているUnreal Engineの開発元であるEpic Games、Time Warnerなども出資をしているテレビ視聴データのSambaTVなど、名前を聞いてすぐにわかる有名なスタートアップがずらりと並んでいます。
短期的に成果が期待できる相手
過去にDisney Acceleratorに参加をしたスタートアップと言うと、2014年の第一回のバッチ企業であるSpheroが有名です。
SpheroのFounderのIanには2年前に日本まで来てもらい、一緒にB Dash Campでパネルもしました。
そこでも話をしましたが、アクセラレータの翌年の2015年のスターウォーズ映画のメインキャラクターであるBB-8のロボットを開発し、大ヒット商品となりました。
Spheroはその後もDisneyとのコラボを続けており、今年に入って映画カーズのキャラクターのライトニングマックイーンのロボットを発売し、こちらも話題になっています。
BB-8のロボットも非常に良く出来ていましたが、マックイーンは目の部分がアニメーションになっていて、ボディも映画のキャラクターのように細かく動くので非常に面白いです。
その他にも、今上映中のスパイダーマンのロボットを発売するなど、 「映画のキャラ」×「Spheroのロボット」と言う勝ちパターンを作り上げたようです。
まだ詳細は明らかになっていませんが、「スターウォーズ× VR」面白いに決まってますよね。今年の秋スタートと言うことですが、ヒットアトラクションになることは間違い無いでしょう。VRと言うことで比較的小さな空間で実現できそうなので、Disneylandの都市部への展開などもできそうです。
Saviokeの方は、まだDisneyとのコラボは発表されていませんが、例えば、Wall Eのキャラクター仕様のロボットを作るなどいろんな展開が容易に想像出来ます。子供が自分の好きなロボット(ミッキーマウスとかダースベーダーとか?)を選んでルームサービスを選べるようになると売上アップに繋がったりするかもしれませんね。
Disney Accelerator 2014 報告会資料 from
拓弥 宮田 これは三年前の第一回のDisney AcceleratorのDemo Dayに参加した後のレポートです。
一般的にコーポレートアクセラレータと言うと、「大企業の資産を活用してスタートアップと一緒に新しいアイディアを生み出す!」と言うイメージがありますが、短期間で実績やリソースが乏しいスタートアップと何かを生み出すのはなかなか難しいと言う現実もあります。
レポートにあるように、Disneyは、第一回から実績のあるレイターステージ企業を入れていたことが特徴的でしたが、Spheroとのコラボの大成功を受け、今回一気にレイターステージで実績のある企業にフォーカスし、短期的に成果が期待できる布陣に切り替えたと言うことでしょう。
テクノロジーの進化のスピードがますます早くなり、Amazon、Facebookなどテック企業大手との競争も激化する中、こうした形で短期の成果をオープンイノベーションに求めると言うのは一つの流れになりそうな気がします。
無オフィス型 / インソース化
2014年の第一回のDisney Acceleratorの際に、Disneyの本社のあるLA郊外のBurbankに設けられたオフィスを訪問しました。
当時は3ヶ月間、参加企業はこのオフィスで仕事をすることが条件となっており、Demo Dayに向けて、Disney社員やメンターたちと一緒になって企画や開発をやっていました。私は何度か訪問しただけですが、非常に活気があって楽しかったです。
しかしながら、今回から「オフィスはなし」となったようです。
なんとなく寂しいような気もしますが、参加企業がそこそこ大きな企業ばかりで、わざわざBurbankまで来てもらうと言うのを条件にすると参加をしてもらうのが難しいとう事情もあるでしょう。
何れにしても、イベント感、お祭り感は捨て、より現実的な成果にフォーカスをしたと言うことだと思います。 また、運営主体が自社になった、というのも今回の大きな変化です。
Disney Acceleratorは、多くの大企業のコーポレートアクセラレータを運営するTechStarsをパートナーとしてスタートしました。
そのためプログラム、イベント、PR、投資などはTechStarsのフォーマットに従ったものでした。それが、今回からは自社で運営することになったと言うことです。
専門家であるパートナーの力を借りた方が運営は楽ですが、上述の通り短期的に自社の戦略にあった成果を生み出すためには、自社で運営チームを作り運営する方が良いと言う判断だったと言うことでしょう。
もちろんAmazon AlexaのプログラムはTechStarsが運営しており、全てが自社運営に向かうと言う訳ではありません。会社やプロジェクトの特徴やステータスによって、適切な運営方法を選ぶと言うことになるでしょう。
スピードと成果が求められ始めたオープンイノベーション
今回取り上げた4年目のDisney Acceleratorはまだ発表がされたばかりなので、実際にどのような成果を生み出すのかは分かりません。
ただ、レイターステージフォーカス、オフィスなし、自社運営、と舵を切ったプログラムがどのような結果となるのかは注目に値します。
時を同じくして、先日DisneyはNetflixへの全ての全ての映像コンテンツの提供を中止し、2019年から順次自社ストリーミングサービスを立ち上げることを発表しました。トイストーリーやフローズンと言ったDisneyの人気映画は、もうNetflixでは見られなくなると言うことです。
これまでは、従来のケーブルテレビなどと同様の感覚でNetflixへとコンテンツを提供をしてきたのだと思いますが、そのプラットフォームとしての力が強大になってきたことでの戦略変更でしょう。コンテンツプロバイダーとしてNeflixにコンテンツを提供するだけでも一定の売り上げは実現できていたと思いますが、Netflixと同じプラットフォームのレイヤーで勝負をすると言う判断です。
動画の世界だけでなく、小売のAmazon、コミュニケーションのFacebookなどプラットフォーマーのイノベーションのスピード、データによる力の集約はますます加速しています。 従来の自社でのR&Dの代替としてスタートしたオープンイノベーションですが、イノベーションにスピードが求められる時代にあった変化が求められているのかもしれません。
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