2015年に開催された、国連の気候変動に関する会議「COP21」において、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定「パリ協定」が成立しました。産業革命前から比べて気温上昇を2度未満(可能な限り1.5度未満に抑える努力)に抑えることを目的とした「パリ協定」。世界の国々は、これをどのように実施していくのか。その詳細な実施のためのルール(実施指針)が、2018年12月2日から、ポーランドのカトヴィツェで開かれる国連の会議「COP24」において採択されることになっています。このルールが、真に温室効果ガスの削減につながる野心的なものになるかどうかは、今後の世界の温暖化防止を大きく左右するカギとなります。
「パリ協定」のルール作りを完成するCOP24
2015年に、フランスのパリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、すべての国を対象とした地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」が成立しました。 パリ協定は、温室効果ガス排出量の削減から、温暖化の悪影響に抵抗力をつける「適応」、世界すべての国が取り組むために必要となる途上国への資金と技術支援、森林伐採によって発生するCO2排出の防止まで、あらゆる温暖化対策を含んだ総合的な国際協定です。
産業革命前から比べて気温上昇を2度未満に抑える(可能な限り1.5度未満に抑える努力をする)ことを目的として、21世紀後半に、世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、という目標を世界全体で共有する、画期的な協定です。
しかし、どのようにそれらを実施していくかの詳細な実施のためのルール(実施指針)はまだ決まっていません。
成立したパリ協定が発効した2016年から2年間、国連では、これらのルール作りのための交渉が急ピッチで続けられてきました。
そして、2018年12月2日~14日にポーランドのカトヴィツェで開催されるCOP24において、これらのルールが採択されることになっています。
各国の国別目標の引き上げ機運を作ろうとする「タラノア対話」
このCOP24には、「パリ協定」のルール作りと並ぶ、もう一つの大きな命題があります。「タラノア対話」と呼ばれる各国の国別目標の引き上げを目指す動きです。
各国はパリ協定に合意したものの、現状でその国々が提出している削減目標では、すべて足し合わせても、地球の平均気温の上昇を2度未満に抑えることができず、気温は3度程度上昇してしまうことが予測されています。
このため、各国にはそれぞれが掲げる削減目標を引き上げることが求められます。 しかし、どの国も、一度決めた削減目標を変更するのは容易ではありません。また、削減目標を交渉課題としてしまうと、紛糾は必至です。このため、建設的な「対話」を通じて、いかに各国の取り組みを強化できるかのアイディアを出し合おうという精神の下、2018年を通じて、「タラノア対話」は国連や各国・各地域で開催されてきました。
その集大成として、COP24では各国大臣クラスが集まっての「タラノア対話」が開催されます。この「対話」が、各国が2020年までの目標再提出に向けて、目標強化に向けた具体的なメッセージを出せるかどうかも、COP24に問われる大きな役割なのです。
タラノア対話においても、上述したルール作りの交渉においても、一筋縄ではいきません。 こうした政府間の交渉では、各国がそれぞれの短期的な国益を追求するあまり、地球益を重んじた合意が得にくい上、これまでの先進国対途上国の深刻な対立がそこかしこに顔を出し、交渉が遅々として進まないことが常であるからです。
政府間交渉を後押しする非国家アクターの躍動
とかく進展の遅いこの政府間の交渉を後押ししようと、2014年から、国連の会議では新たな動きが見られるようになりました。
政府よりも、より先進的な温暖化対策を進める自治体や都市、企業や投資家、WWFのようなNGO(非政府組織)などの「非国家アクター」が、同盟を結んで、「我々はより野心的な温暖化対策を実施する」と宣言する動きが活発化するようになったのです。 これらの非国家アクターたちの活動が、政府間交渉を後押ししたことは、画期的なパリ協定の成立にも寄与する大きな力となりました。
また、現在進められているパリ協定のルール作りの交渉においても、非国家アクターたちが活発に活動を繰り広げています。
特にパリ協定離脱を宣言したトランプ大統領下のアメリカでは、「We Are Still In(我々はパリ協定に留まる)」という呼びかけとアクションのもと、3,600を超えるアメリカ国内の非国家アクターが結集。連邦政府の意向とは別に、パリ協定の約束を守っていくことを宣言しました。
日本でも2018年7月6日、同様に自治体や企業、団体などが集まり、パリ協定の支持と自主的な温暖化防止の取り組みの推進を宣言した「JCI:気候変動イニシアティブ」を発足。 2018年11月6日までに、290までその賛同主体を集めており、COP24 でのアクションも検討しています。
実際、いよいよ「パリ協定」のルール作りが大詰めを迎えるCOP24に向け、国連交渉と並んで、世界各地でいくつもの非国家アクターによるイベントも予定・実施されており、今後のさらなる動きが注目されています。
COP24において、パリ協定の野心的なルールブックが採択されるように、そして現状足りない各国の目標の引き上げの機運が高まるように、政府間の交渉も非国家アクターたちの活動も活発化しています。
WWFも各国から気候変動問題に取り組むスタッフが集まり、COP24に参加。各国への働きかけに取り組みます。 期間中は現地からの報告を、Web記事やTwitterを通して随時行なう予定です。 ぜひご覧ください。