「5つの自我状態」によって性格を診断するエゴグラム。5要素に関する質問に答えることとで点数の高い自我状態と低い自我状態を示すこの診断法は、自己分析の手法として広く知られ、スキルアップやビジネス面で用いられることも増えました。
保育園・幼稚園向けエンパワメント・プログラムを提供する「NICCOT」ではこのエゴグラムをパパママ向けに開発したママエゴグラム、パパエゴグラムという診断を行っています。
家庭向けにエゴグラムを提供するメリットやその効果はどんなもの と一般社団法人 家族力向上研究所 代表理事 桑子 和佳絵さんにお話を伺いました。
【ママエゴグラム診断はこちら!】
増え続けている親の過保護、過干渉。
トラブルを改善するために、診断で親子の距離感をチェックすることに
編集部:エゴグラムというと自己分析ツールとしてビジネスシーンなどでも使われている印象です。これをパパママ用に開発した経緯を教えてください。
桑子和佳絵さん(以下、敬称略。桑子):私は新卒で入社したメーカーで社内ベンチャーとしてライフデザインサポート事業を立ち上げたところから、キャリアデザインに長く携わってきました。
その後、教育関係の企業で、幼稚園や保育園を対象に、それまで培ってきた人材開発のノウハウを用いた講座やセミナーを保護者や先生向けに開いていたんですが、10年近くやっている中で、お母さんの質が変化しているのを感じたんですね。
子どもとの距離がやたらと近いか、やたら遠いか。過干渉とか過保護、もしくは無関心、みたいな両極端ということです。日頃接している先生たちもそう感じると話していたし、実際親の過保護や過干渉でトラブルが増えているということも耳にしていました。
その影響で、子どもの主体性がなくなったり、キレやすくなったり、何かしらの弊害が生まれることがあるので、何か手を打てないかなと思い、インタビューやアンケートを重ねて、横浜のソーシャルビジネス応援プロジェクトとして始めることにしたんです。
そこで開発されたのが自分を客観視できるエゴグラムに、子どもとの距離感をチェックできる項目をつけた「ママエゴグラム」です。
2016年から幼稚園・保育園経由で保護者にこの診断を受けてもらって、フィードバック内容を園からの保護者支援に使ってもらったり、横浜の商業施設ではこのママエゴグラムを使った相談コーナーも開設しています。
編集部:実際、やってみた親御さんからのリアクションはどんな感じですか?
エゴグラムのメリットと合わせて聞かせてほしいです。
桑子:結構皆さん面白がってくれていますね。土台であるエゴグラムに信頼性があるので、「もしかしたら、そうかも」と思っていた傾向が可視化される効果があるんですよね。
旦那さんに「君ってこうだよね」って言われたら「そんなことない」って言い返したくなるところ、エゴグラムに診断されると「わあ、バレちゃった」と割と素直に認められるというか(笑)
取材を担当したライター真貝の診断結果。
ハイパワーママは子どもとの関係において「待つ」ことが重要だそう。
確かに、待つことは苦手です......
laxic編集長石根の診断結果。
直感重視タイプのため、何かを成し遂げたいときは
新しい習慣をプラスすることが必要とのことです。
自分を客観視できれば、必要ないものの見極めもできて
子どもへの負担も少なくなる
桑子:相談に来るお母さんに結構多いのが「子ども度」がすごく低い人です。
子ども度というのは、「無邪気さ、アイデア、クリエイティブ、行動」といった要素で、子どもはその塊ですよね。
だけど「ママ!! 見てー!」という子どもの元気さについていけない、「わあー、すごいねー!」って返すことができなくてつらいと言っているお母さんが結構います。
育児本に載っているようなほめ方ができなくて、私はダメなのかな...... って落ち込んでしまうわけですね。
そこでこのママエゴグラムで自分の傾向を把握して、できることからやってみてください。
「わあー、すごいねー!」はできなくても、親指立てて「いいね!」くらいなら言えるかもしれない。そこで納得出来たら「これでいいんだ」と、肩の荷がスっと下ります。
編集部:確かに、育児本に書いていることは一般論が多いから、それが自分に合っているかどうか分からなくなることも多そうです。
桑子:「ほめる育児」も自分に合ってないと不自然になってしまうし、却って悶々としちゃいますよね。
あと自分を客観視できるようになると、子育てでうまくいかないことがあっても原因を子どもに求めなくて済むんです。
子どもの発語が遅い、かんしゃくを起こすなどで悩み、「どの療育センターに、どの幼児教室に通えばいいんですか?」と泣きそうになっているお母さんもいるんですが、子どもとの関わり方をよく見てみると、お母さんからの話しかけが少なくて、子どもがうまく模倣できていなかっただけ、なんてパターンもあるんですよ。
ママエゴグラムを使って、お母さんが自分自身を客観視できて冷静になれたら、合ってないことや苦手なことの見極めができるし、子どもの負担も少なくなります。
その結果、「やはり幼児教室に通わせよう」と選ぶのもいいし、お母さん自身が「これでいいんだ」って納得感を抱けることを大事にしてほしいですね。
情報収集に必死になっていたお母さんの
"溶ける"瞬間に立ち会えるのがやりがい
編集部:ママエゴグラムにはお母さんを冷静にさせる力があるということですね。
しかし、お母さんたちが自分を客観視できなくなるほど、子育ての悩みにのめりこんでしまうのは何が原因だと思いますか?
桑子:やはり情報が多すぎるんでしょうね。たった一言検索ワードにするだけでありとあらゆる情報が入ってきて、そこから正解探しみたいになってしまっているなと感じます。
この10年くらいで過保護、過干渉の親御さんが増えたと話しましたが、「この子をちゃんと育てることが私の責任!」というふうにに熱が入りすぎていることも一因だと思います。
それを客観視して、ゆるめてあげたいなと思うし、実際講座で眉間にしわを寄せながら一生懸命情報収集しているお母さんと相談コーナーで話したときに、「これでいいんだ、これさえやればいいんだ」って"溶ける"瞬間を生で感じられるのはとても嬉しいです。
編集部:今後の展望についても教えてください。
桑子:ママ向けの商品やサービスを手がけている企業にもママの傾向を把握するためにぜひ使ってほしいですし、引き続き園経由での保護者や保育士さん向けのプログラムも行いたいし、集まってきたデータを分析して何らかの形で発表もしたいです。
あと、今興味があるのは、ママエゴグラム、パパエゴグラムを組み合わせて分析するパートナーのパワーバランスですね。
お互い補完しあえているか、もしくは敵対しているのか。2人とも「子ども度」ばかりが高いと「俺が」「私が」ってお互い主張するばかりになるし、「しっかり度」ばかり高いと子育ての方針にお互いこだわりが強すぎて譲れないこともあるかもしれない。
それによって長続きするか、関係が危うくなるかも分かると思うので、これから取り組んでみたいと思っています。
今回の取材にあたって私もママエゴグラムをやってみましたが、確かによく当たっています。
桑子さんが仰るように、自分の弱点や欠点のような部分も、客観的な診断に言われると腹が立たないというのも特徴かも。ママ友同士で集まったときなど、みんなで一緒に診断をやっみるとかなり盛り上がりそうですよ。
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