「コーヒー豆を使わないコーヒー」を想像できる?
コーヒー愛好家にとっては悪夢かもしれない人工コーヒー。2020年には、あなたも飲めるようになるかも。
植物原料の代替肉「インポッシブル・バーガー」を誕生させた人々の支援を受けたアメリカのスタートアップ企業が、世界初の人工コーヒーを実験室で発明したという。そして、数百万ドルというシード投資(起業前の投資)のおかげで、早ければ2020年までにこのコーヒーを初めて飲むことができるかもしれない。
シアトルに本拠を置くAtomo(アトモ)は、インポッシブル・フーズやSpotifyをも支援した、投資企業のホライズン・ベンチャーズから260万ドルを受け取った。
Atomoの共同創業者で食品科学者でもあるジャレット・ストップフォースは声明で、「コーヒー業界は革新と変化を遂げる時期に来ています」と述べている。「農産物の代替品が受け入れられることは、代替肉や乳成分のない代替ミルクで実証されており、今回はこのような活動を我々が情熱を持っているカテゴリー、つまりコーヒーで実現したかったのです」
最新の代替肉商品の1つであるKFCのヴィーガンチキンを始めとして、人工材料を使った料理は今、熱い注目を集めている。
業界は、従来の生産環境がもたらす環境への負担に対する持続可能な解決策を提示しているのだ。
Atomoのマーケティングの大部分は、コーヒーの収穫が地球上の自然な生息環境にもたらしてきた被害を懸念する人々にアピールするものとなっている。
コーヒー業界には大規模な森林破壊と水質汚染がつきものになっており、これらが気候変動の大きな要因となっている。コーヒーの木の大半は、需要に応えるべく、直射日光の下で栽培されており、現地の野生動物に災いをもたらしている。
人工コーヒーの味は?
Atomoの人工コーヒーの原料については、コーヒー豆の分子を研究し、天然由来で持続可能の原料を使って開発された、ということ以外は未だにわかっていない。
それが何であれ、Atomoのウェブサイトによると、味は「ローストアーモンドやタフィーの香り」のするコスタリカ産のコーヒーに似ているという。 また、このコーヒーは、ヴィーガンでコーシャ (ユダヤ教の戒律による基準) 認証を受けたものになる。
Atomoは、NPR(米ラジオ局)に、自社の人工コーヒーは、栄養価や風味、そしてコーヒ好きには非常に重要なカフェインなど、本物のコーヒーの良いところをすべて再現していると話した。
豆の「改造」によるメリットは、改善された風味だと言われている。また苦味については、アトモスはその原因となる化合物を分子から取り除くことができる、とストップフォース氏はNPRに話しており、苦味が苦手な人も安心だ。
ネット上での反応は分断しているようだ。一部のコーヒー愛好家は、このようなコーヒーの新種について当然のことながら愕然としている。その他の人々は、豆を使わない未来のコーヒーについてより寛容的のようだ。
コーヒー業界の抱える問題
有害なコーヒー農業の影響は、一巡して戻ってきている。気候変動の結果、世界中のコーヒー種の半数以上が絶滅しつつあるのだ。それに加え、あなたが毎日飲むコーヒーには、業界の大きな問題となっている労働者への搾取や、コーヒー産出国の過小評価などによる犠牲者がいるのだ。
人工コーヒーは、これらの問題すべての解決にはならないかもしれない。しかし、消費者が気候変動との闘いに取り組むために、習慣を変えようとする傾向の高まりを示しているかもしれない。
市場調査会社ニールセンの国際的調査によると、消費者の80%以上は、企業が環境に配慮することを求めている。Atomo自身は、コーヒー業界を人工コーヒーで乗っ取ることを目指しているのではなく、環境への悪影響を埋め合わせることを望んでいるという。
「我々は、コーヒー生産者が引き続き、現存するプランテーションで栽培を続けていくだろうと考えていますが、新たな作物を植えるために森林破壊をし続けないでほしいと思っています」とAtomoのウェブサイトに綴られている。
ネット上では「労働者に悪影響を与える問題のあるビジネス手法に関しては、人工コーヒー市場が業界全体に影響を及ぼすことはないだろう」との指摘や、人工食品のトレンドが、他の必需品の値段への影響を心配する声もある。
日本のコーヒー消費量は、世界的にもアメリカ、ブラジルに続き、全体の約5%にも及ぶという。お茶文化が浸透している日本だが、今ではカフェが至る所にあり、コーヒーも広く愛されている。
人工コーヒーが飲めるまでもう待てない!という人は、現在すでに市販されている、チコリやタンポポなどの植物を使って作られたコーヒーを手始めに試してみてはいかがだろうか。
ハフポスト・カナダ版の記事を翻訳、編集しました。