主な登場人物のほとんどをろう者俳優が演じた映画『コーダ あいのうた』が、第94回アカデミー賞で作品賞を受賞した。
同作は他にも、シアン・ヘダー監督が脚色賞、トロイ・コッツァー氏が助演男優賞を受賞し、合計3部門での快挙を達成した。
コッツァー氏は、男性のろう者俳優として初めてのオスカー受賞となる。
キャスティングをめぐる衝突もあった
『コーダ あいのうた』は、2014年のフランスの映画『エール(La Famille Bélier)』のリメイクで、Apple TV+が2021年に配給権を獲得した。 配信作品のアカデミー賞受賞は同作が初めてとなる。
「コーダ(CODA:Children of Deaf Adults)」とは、ろう者の親を持つ耳の聞こえる子どもたちのこと。
『コーダ あいのうた』は、コーダとして耳の聞こえない家族の通訳をしながら、歌手の夢を追うルビー・ロッシ(エミリア・ジョーンズ)の葛藤と家族愛を描いている。
一家のうち、ルビーの父親のフランク(トロイ・コッツァー)と、母のジャキー(マーリー・マトリン)と兄のレオ(ダニエル・デュラント)は、ろう者の設定だが、キャスティングを巡る衝突もあったという。
最初に起用が決まったのはマトリン氏だったが、その後ヘダー監督は映画制作会社や出資者から、残りの家族は耳の聞こえる俳優にするよう求められた。
この要求に断固反対したのがマトリン氏だった。マトリン氏はヘダー監督を支持して、可能な限りストーリーに忠実な俳優の起用が重要だと訴えた。
マトリン氏はその理由を「見ている人たちが、映画を通じてろう者を知ることができると感じた」とロサンゼルスタイムズのインタビューで述べている。
「ろう者に会ったことがない人やつながりのない人たちが、手話やろう者の普段の生活を見て、さまざまな面で共感できると感じました」
「ろう者の生き方は、頑強な変わらないものという印象を持たれていますが、この映画はその誤った神話を壊します」
『コーダ あいのうた』は映画界に新たな1ページを刻んだだけではなく、 実社会を変える働きかけもしている。
アカデミー賞授賞式の前には、主要キャストがホワイトハウスのバイデン大統領を訪問し、国民政策審議会や市民参画室などと議論。ろう者が直面している雇用などの問題について意見を交わした。
また、カリフォルニア州のデフ・ウェスト・シアターでは『コーダ あいのうた』の劇場ミュージカル版の準備が進んでいる。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。