アメリカ発の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が、にわかに話題になっている。「音声版Twitter」と呼ばれ、「世界と一瞬で繋がれた感覚」「真のインターネット」などと称賛する声も出ている。
現時点ではiOSアプリのみに対応。しかも1人あたり2人までの招待制になっているため、ユーザー数は限られている。今後はAndroid版の開発や、クリエイターが収入を得られる仕組みも検討中で、爆発的にユーザーが増えることになるかもしれない。
どんなサービスなのか、どんな課題があるのか。実際に使いながら調べてみた。
■ClubhouseとはどんなSNSなのか?
The WRAPなどによると、Clubhouseはアメリカ・サンフランシスコのベンチャー企業「Alpha Exploration」が2020年春にリリースした。ニューヨーク・タイムズによると、同年12月時点でユーザー数は60万人規模となった。シリコンバレーで注目を集め、5月にはベンチャーキャピタルから時価総額1億ドル(約100億円)の資金調達に成功している。
日本では2021年1月に入って、スタートアップ企業の界隈を中心に話題を集めており「招待してほしい!」という声が相次ぐようになった。
TechCrunchによると、今のところiOS版のみだが、新たな資金調達でAndroid版の開発を始めるほか、クリエイターが収入を得られる仕組みを用意するという。
■Clubhouseに参加している同僚や友人に感想を聞いてみた。
ハフポスト日本版のスタッフも、すでに何人かClubhouseを始めていた。私も招待してもらって、実際にいくつかの会話スペース「room」を覗いてみた。
日本語圏でも著名な漫画家が数人で雑談していたり、研究者が著名ブロガーと一緒にClubhouseのアプリの機能への要望を述べていたりと、聞き流しているだけでも興味深かった。
音声で話している無数のチャットルームが生まれては消えていくイメージで、様々な人たちと音声で会話したり、誰かが話していることを横から聞くなどできる。話している人に指名されるか、挙手ボタンをタップして承認されれば、聴衆も会話に参加することが可能だ。
すでに始めている同僚数人に、実際にClubhouseを通して感想を聞いた。「野党の女性政治家を若者たちが囲んで、政権を取る気概について聞いていた」「同僚と雑談をしていたら、パートナー企業の人も会話に途中から参加してくれて、偶然性が面白いと思った」という積極的な評価が多かった。ある人は「クラブハウスの名の通り、どこかのお店の中で、さまざまな人の雑談を聞いてるような感じ」と述べていた。
その一方でトーク内容の身内ノリがきつかったという意見もあった。「お酒を飲んでいるとみられる参加者が、悪ふざけのような会話をしていた」「夜中、寝る前に著名人の話を聞いていたら、下ネタっぽい会話が始まってゲンナリした」という体験談を明かした同僚がいた。
IT企業に勤める30代男性の友人もClubhouseを使っていた。「コロナ感染拡大から1年の空気が垣間見られて面白いです。やはりみんな音声での会話に飢えてたんだと思いますよ」と感慨深げに話した。
「自宅にこもることが多くなったけど、知人や仕事先とZoomなどのビデオチャットで会話しようと思うとスケジュール調整が大変。結局はSlackやメールなど文章のメッセージが主体になっていて、おしゃべりするという日常が減っているんです。でも、Clubhouseだったら気軽に雑談できる。うまいところを突いたと思いますね」
■ヘイトスピーチを懸念する声も。今後の課題は?
順風満帆のようにみるClubhouseだが、課題もある。起業家のRhian Beutlerは12月、自身の雑学クイズ番組を中止することを自身のTwitterに投稿。ヘイトスピーチに対するアプリ側の対応が不十分だとして、以下のように訴えた。
「反ユダヤ主義、同性愛嫌悪、トランスジェンダー嫌悪、女性差別、人種差別などに直面しても、CH(Clubhouse)は何の行動も起こさずにいるので、私は前向きな気持ちを持つことはできません」
こうした声を受けてニューヨーク・タイムズはClubhouseの運営会社「Alpha Exploration」に取材。広報担当者は、次のようにコメントしている。
「あらゆる形態の人種差別、ヘイトスピーチ、虐待は禁止されており、コミュニティガイドラインと利用規約に違反しています。アプリの一時停止や削除など、これらのルールの違反を調査して対処するための信頼と安全の手順を定めています」
リアルタイムの音声でのやりとりこそが、Clubhouseの妙味だ。それだけにヘイトスピーチのような言葉の暴力を規制する取り組みは、今後より強化する必要が出るかもしれない。
新しい文化が摩耗しないように、どう育てていけばいいか。利用者みんなで考えていくことが必要だろう。