「世界で初めて音速を超えた人物」として知られるアメリカのチャック・イェーガーさんが12月7日、死去した。97歳だった。
公式Twitterで、妻のヴィクトリア・イェーガーさんが以下のように報告した。
「深い悲しみとともに、私が生涯をかけて愛するチャック・イェーガーが東部標準時午後9時直前にこの世を去ったことを伝えなければなりません。信じられないほど素晴らしいの人生、アメリカで最も偉大なパイロット、そして強さ、冒険、そして愛国心の遺産は永遠に記憶されます」
■史上初の超音速を達成した際に「がっかり」。その理由とは?
ロイター通信などによると、戦闘機のパイロットだったイェーガーさんは第二次大戦で米空軍のエースとなり、1日で5機のドイツ機を撃墜したこともあったという。戦後の1947年10月14日、24歳のイェーガーさんはロケットエンジンを載せた航空機「X-1」に搭乗。高度1万3000メートル付近でマッハ1.06(時速1126キロ)を記録、公式記録では人類初となる有人超音速飛行を成功させた。
当時は、航空機が音速を超えるときに強い衝撃波が襲い、機体を引き裂く恐れがあると信じられていたが、実際には衝撃波による振動はほとんどなかった。
ニューヨークタイムズによると、1985年に出版された自伝の中でイェーガーさんは音速突破当時のことを「この瞬間を成し遂げるために期待していましたが、本当にがっかりしました」として、以下のように振り返っていた。
「“音速の壁”にパンチで綺麗な穴を開けたことを知らせるような、道路の段差(のような衝撃波)があるはずでした。でも、実際には(衝撃波はなくて)ゼリーを突き抜けるような感覚でした。後になってがっかりして当然だということがわかりました。“本当の壁“は空にあるのではなく、私たちの超音速飛行に関する知識と経験の中にあったからです」