8/28〜9/1の間、坂本健・板橋区長を先頭とする板橋区公式訪問団が、北京市石景山区を訪れています。
北京市石景山区との友好協定20周年を機に、双方の公式訪問団が相互に訪問を行うものです。
去る7/13には既に石景山区の訪問団をお迎えし、区として歓迎いたしました。
私も訪問団の一員として、石景山区を訪れています。
ただいま、2日目の日程が終了したところです。
石景山区役所、京源学校、社区養老中心(老人ホーム)、石景山図書館などを訪れ、各地で大変歓迎していただき、同時に、数多くの学びをいただきました。
坂本区長と李文起・石景山区人民代表大会主任(議長とお考えください)による、板橋区と石景山区の友好を記念する植樹式の模様です。
非常に複雑な日中関係ですが、国民の生活という観点から考えた場合、日本と中国は、私から見て最も重要な政策課題2つが共通しています。
2つの政策課題とは「子育て」と「介護」です。
膨張する北京
北京市はここ10年の間で、すさまじい勢いで人口が増えました。
北京市の人口は2200万人以上と言われていますが、戸籍のない住民も大勢いるため、正確なところは政府にもつかめません。
モータリゼーションが進行し、車が激増しました。
北京国際空港からホテルまで30km程度だったのですが、30kmの移動に2時間近くかかる大渋滞でした。
これは「いつも通り」だそうです...。
不動産価格が爆発的に上昇し、10年間で価格が10倍になったとのこと。
現在、北京市におけるマンションなどの床面積価格は、日本円にして、1㎡100万円だそうです...!
若い方は仕事を求めて、北京市などの大都市に続々とやってきます。
それによって渋滞や不動産価格上昇などが起こるとともに、「子育て」をどうするか、そして田舎に残してきた親の「介護」をどうするかという問題が起こるわけです。
0,1,2歳児は、田舎の実家で育てるしかない!
若者が故郷を出て都会にやってくると、核家族化が進行します。
そこで「働く両親がどうやって子どもを育てるか」、言い換えれば「共働きの両親の子を、日中、どこに預けるか」という問題が起こってくるわけです。
北京市でも、3歳以上の子は幼稚園に入ることができます。
では、0,1,2歳の子はどうするのか。
日本でも、保育の待機児童問題は0,1,2歳で厳しい。
北京では、共働き家庭の0,1,2歳児をどうしているのか...?
とお伺いしたところ、驚くべき答えが。
「0,1,2歳児は、田舎の両親に預けるんです」
えっ...?!
田舎の両親、ってことは、北京からそんなすぐに行けませんから、ほとんど祖父・祖母が育てることになるわけです。
夏季休暇や年末に起こる「民族大移動」とも呼ばれる大混雑は、多くの人は、自分の子どもに会いに行っているのだそうです。
0,1,2歳のときに、親のそばで過ごした時間が非常に短い子どもの大量出現が、今後どのような傾向を持つことになるか、予想できません。
また、高齢になってから「2度目の子育て」に取り組むことになる田舎の高齢者の「子育て疲れ」も問題になっているようです。
あるべき子育ての姿はどのようなものか。
これから、北京市でも模索されていくのだと思います。
一人っ子政策は「一人が二人を支える」ことに直結する
若者が仕事を求めて都市部へ出ていった後、残された両親が高齢により調子が悪くなってきたらどうするか。
これが次の問題です。
中国は人口抑制のため、長らく「一人っ子政策」を続けてきましたが、これは「一人が二人の親を支える」ことに直結します。
若者は都会に行ってしまっており、不動産の高騰により、お金持ちでないと親を都会のほうに呼ぶことは難しい。
かといって、今の仕事を捨てて、親元に戻って面倒を見てあげることができるか...?というと、これまた非常に難しい。
つまり、どうしても「高齢者を地域で支えるための公共事業」、すなわち「介護事業」が社会を支える根幹とならざるを得ないのです。
本日は、リハビリセンター・医療機関・老人ホームが一体化した社区養老中心や、街なかのごく普通のデイサービス施設を訪問しました。
高齢者が懸命にリハビリに励む姿や、アットホームな施設で脳トレに励む姿などは、日本とまったく同様です。
北京では高齢者向け施設がまだまだ不足しているということは、関係者が一様に語っていたことでした。
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都市間交流による相互理解が重要なのは、こういうことがわかるからです。
市井のレベルで、いったい何が課題になっているかをお互いに理解する。
それによって、何が普遍的問題なのか、また政策の優先順位はどうあるべきなのかをお互いに考える機会が生まれます。
そしてそれは、税金の使い方をどうするべきかをお互いに考えたり、お互いの人的・技術的交流のさらなる深化にもつながっていきます。
「子育て」と「介護」は、日中いずれにおいても、今後の公共事業の主力となっていくでしょう。
この認識に立てば、私たちは日本と中国の関係の中で、何を優先的に取り組まなければならないか、理解がすすんでいくのではないでしょうか。