「葬祭」について必要な知識や技術を学ぶ専攻が中国で話題だ。
かつては人の死に関わる仕事柄、敬遠されがちだったというが、人手不足で就職に有利なことや、日本映画「おくりびと」の影響もあり、若者の進路の1つとして注目されているという。
■入学、即内定も
話題に火をつけたのが、安徽省の安徽城市職業管理学院に「葬祭専攻」が新設されたことを伝える地元メディアのニュースだ。中国国内の大学(職業学院)では5か所目で、一番古いもので20年余りの歴史があるという。
葬祭専攻では、葬儀の司会進行や会場の配置などについて学ぶほか、遺体の防腐処置や化粧、火葬の技術などを身につける。
人の死に関わる仕事のため、敬遠されがちだったという葬祭専攻。しかし安徽省の学校が第1期生を募集したところ、予想を上回る38人が入学したことが現地のネットで話題になった。
その専攻自体の珍しさはもとより、注目されたのは卒業後の就職のしやすさと収入だ。故人や遺族の意思を反映した葬儀が求められる一方、それを実現できる人材が不足しているため、葬祭専攻に入学した時点で葬儀社から内定を得る学生もいるという。初任給も他の大卒と比べて引けを取らないうえ、職種によっては昇給も速いという。
このため、ネット上では「競争が少ないので良い条件の職場が見つかりそうだ」などといったコメントが集まっている。
■「おくりびと」きっかけに...
ただ多くの学生たちは、実利的な考えでこの道を選んだ訳ではないという。中国新聞週刊によると、自身が親戚の葬儀などに参加したことで葬祭に関わる職業を知った学生がいたほか、映画「おくりびと」を見たことで興味を持ったパターンもあるという。
就職は比較的容易な彼らも、専攻ならではの課題もある。葬儀の進行に関わる業務ならば人との交流があるが、火葬や遺体の化粧を手がける業種は黙々と作業に打ち込むことも多く、心理的負荷がかかりやすいという。
また、少なくなっているとはいえ、まだ葬祭業に携わる人への偏見が中国では残っているという。学生の中には、専攻のために恋愛が成就しなかったり、握手すらも拒まれたりする経験があったという。
安徽商報は「こうした現状のため、優秀な人材が集まらず、中国の葬儀業でのサービスの向上や技術革新を阻んでいる」と評論している。