三重県で7月27日、ワンボックスカーが街路樹に衝突し、車内にいた生後7か月の乳児が死亡する事故があった。
乳児はチャイルドシートに座っておらず、母親と後部座席にいたという。
なぜチャイルドシートを使用しなければならないのか。そして、チャイルドシートを取り付ける際の注意点は何か。
関係機関の実験映像とともに、改めて確認する。
事故の経緯を振り返る
中京テレビによると、7月27日午後11時半頃、三重県四日市市の路上で、ワンボックスカーがセンターラインを越え、反対車線の街路樹に衝突。
後部座席にいた乳児が出血性ショックで死亡し、母親も足の骨を折る重傷を負った。運転していた父親にけがはなかった。
助手席にはチャイルドシートが設置されていたが、乳児と母親は事故当時、後部座席に敷いた布団の上にいたという。
三重県警が詳しい事故原因を調べている。
昨年は約25%がチャイルドシード不使用
しかし、警察庁と一般社団法人「日本自動車連盟(JAF)」が2022年に行った全国調査では、チャイルドシートの使用率は74.5%(全国平均)にとどまった。
04年の47.4%から上昇しているものの、4人に1人の割合でチャイルドシードが使用されていなかったことになる。
不使用の場合の状況としては、「車両シートにそのまま着座」(10.9%)、「大人用シートベルトを着用」(5.8%)、「保護者の抱っこ」(3.3%)などがあった。
また、チャイルドシートは5歳児の使用率が低い傾向にあり、22年は1歳未満の使用率が89.9%、1〜4歳が76.7%、5歳が53.5%だったという。
さらに、チャイルドシートが適切に取り付けられていた割合も65.2%にとどまったほか、乳児用〜学童用のチャイルドシートで適切に着座させていた割合は49.5%と半数を切った。
致死率は4.6倍に。衝撃の実験映像も
では、チャイルドシートを適切に使用していなかった場合の危険性はどれほど大きいのか。
2018〜22年に起きた死傷事故(6歳未満の子どもが自動車乗車中)で、適切にチャイルドシートを使用していた場合の致死率は0.06%だった。
しかし、そうではない場合の致死率は0.29%と、適切に使用していた場合と比べて約4.6倍に跳ね上がった。
一般社団法人「全日本交通安全協会」(東京)が行った実験映像からも、チャイルドシート適切使用の重要性がわかる。
実験では、後部座席に幼児のダミー人形、助手席に親に抱っこされた乳児のダミー人形を設置。車を時速40キロで走らせ、そのまま壁に衝突させた。
すると、幼児のダミー人形は宙に浮いて前方に飛んでいき、そのまま頭からフロントガラスに突っ込んだ。
乳児のダミー人形も、母親とエアバッグの間で押し潰されてしまった。
逆に、二つのダミー人形をチャイルドシートに座らせた場合では、衝突の衝撃で人形が宙に浮くこともなく、固定されたチャイルドシートにしっかりと守られていた。
どこに設置?守りたい5つのこと
警察庁は、「チャイルドシートの適切な使用が子どもの命を守る」として、次のようなことを呼びかけている。
・子どもの成長に合わせ、体格に合うものを使用する
・助手席はエアバッグが出てくるため、なるべく後部座席で使用する
・やむを得ず助手席で使用する場合は、座席をできるだけ後ろに下げて前向きに固定する
・席に確実に固定する
・国の安全基準への適合が確認されたチャイルドシートを使用する
また、6歳以上の子どもであっても、体格などの事情でシートベルトを適切に着用させることができない場合は、チャイルドシートを使用することを推奨している。