児童虐待防止対策の強化に向けた児童福祉法等改正案が5月28日、衆議院本会議において、全会一致で可決した。野党が提出した対案のうち、虐待した保護者への支援プログラムの実施を児童相談所の努力義務とすることなどを取り入れた。改正案は参院に送付され、今国会で成立する見通し。なお、施設内での暴力対策の検討など付帯決議も盛り込まれた。
改正案をめぐっては、政府案と野党が提出した対案を同時に審議。児童虐待は喫緊の課題であるとして、与党は野党との修正協議に応じ、23日に合意した。
児童虐待防止法の改正案では、児相が虐待した保護者に対し、再発防止に向けた医学的または心理的な指導をすることを努力義務とした。また、子どもが管轄外に引っ越しても切れ目なく支援できるよう、移転先の児相に必要な情報を提供することも盛り込まれた。
児童福祉法については、虐待相談件数や人口などに応じた児童福祉司数とするよう修正。さらに政府は5年をめどに、施行状況を踏まえて児童虐待の予防や、保護者支援などの在り方について検討を加える。
同日の本会議採決前には、与野党による討論が行われた。自民党の山田美樹議員は「真摯な協議を重ね、改正案は意義深いものになった」と述べ、「それぞれの立場を超えて、建設的な議論ができた。国会審議で与野党が参考とすべき事例だ」と強調した。
これに対し、立憲民主党の尾辻かな子議員は「必要な政策は与野党問わずに取り入れていくのが国会のあるべき姿だ」と応じた。その上で、改正案に盛り込まれなかった中核市や特別区への児相設置義務化などについては、引き続き取り組む姿勢を示した。
このほか、鰐淵洋子議員(公明党)、源馬謙太郎議員(国民民主党)、高橋千鶴子議員(共産党)、藤田文武議員(維新の会)も登壇した。いずれも改正案に賛成の意向を示した。
付帯決議24項目
さらに付帯決議が24項目ついた。
児童福祉施設関係では、施設内の暴力や性暴力について効果的な対策の早急な検討を実施。里親委託が難しい子どもに相談援助をする児童心理治療施設を整備する。一時保護の受け皿整備も入った。
児相については、児童福祉司1人の相談対応が40件を超えないよう定め、非常勤職員の常勤化も含め処遇改善に務めるよう求めた。自治体に対して人事異動での配慮も要望している。
このほか、(1)SNSを活用した相談窓口の開設(2)教育現場での虐待対応の向上(3)警察と児相の合同研修(4)婦人相談員の専門性の確保と待遇改善--などが盛り込まれた。
(2019年6月03日福祉新聞より転載)