「子どもと結婚は別」。 あるフィンランド人家族のスタイルが、私の結婚観を揺るがした

交際→結婚→子ども。そんな自分の「結婚観」が偏っていると気づかされた。

フィンランド外務省の主催で、世界16カ国の若手ジャーナリストがこの国をあらゆる視点から学ぶプログラムに参加している。

17日から3日間、フィンランド人の家庭にホームステイした。お邪魔したのは、60代の夫婦のサマーハウス(夏の間だけ過ごす別荘)。

サウナもついている
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arisa ido

ちょうど、2人の息子、トミー・アウトネン(32)さんの家族も来ていた。パートナーはセシリア・シルタボワ(29)さん。どちらも保育園で働いている。4歳のノア君と今年の2月に生まれたばかりのワッテリ君がいる。

きくと、アウトネンさんとシルタボワさんは、結婚していないという。子どももいるのに、なぜ?2人に聞いた。

後列左から時計回りにトミー・アウトネンさん、セシリア・シルタボワさん。ワッテリ君とノア君
後列左から時計回りにトミー・アウトネンさん、セシリア・シルタボワさん。ワッテリ君とノア君
Arisa Ido

2人の出会い

アウトネンさん僕たちは、2012年7月ごろにインターネットのマッチングサイトで出会いました。僕はその頃、なんでも話せるソウル・メイトを探していました。ネットで出会えるなんてありえないと半分諦めていたのですが、セシリアに出会うことができました。彼女がプロフィールに自分のことを素直に紹介していたのが印象的で、会ってみたい、と僕から声をかけました。なかなか返信がこなかったんですけどね。

シルタボワさんその頃、保育園で働いていたのですが、「夏休みで暇なんだからマッチングサイトで彼氏でも探せば?」と友達にそそのかされて始めました。トミーから連絡が来た時は、他の男性とすでに会っていたので、すぐには返信できませんでした。その彼とは結局あまり気が合わなかったので、トミーと話すようになりました。

アウトネンさん最初のデートは、僕たちが住むエスポー市のカフェでした。2人とも仕事だったので、夕方の5、6時くらいに待ち合わせしたのですが話が盛り上がって結局気づいたら閉店までいたんです。プロフィール通りに彼女は最初から自分のことを素直に話してくれて、僕も安心してしゃべることができました。

シルタボワさん:たしか、その時トミーの携帯がずっと鳴っていたのが印象に残っています。どんなに鳴ってもすぐに切って私と話し始めるから、気になっていました。

アウトネンさん母からの電話だったんです。彼女と少しでも長く話したかったし、彼女を待たせたくなかったので、電話をとりませんでした。

最初の子どもが生まれて...

アウトネンさんその後付き合いだして、翌年1月末に妊娠が分かりました。こんなに早く妊娠するとは思っていなかったので、本当に嬉しかったです。だけど妊娠したから結婚しようとは思いませんでした。出産の準備や手続きなど、初めてしなければならないことばかりで、結婚どころじゃなかったんです。

シルタボワさん:私も特に結婚しようということは、頭にありませんでした。でも、いつかは結婚したいと思っています。シンプルでこじんまりとした結婚式をあげて、2人の関係をみんなに認めてもらいたいとは思います。今29歳なんですが、30歳までにはしたいと、彼には伝えています。

子どもができたことと、結婚は関係ないですね。もちろん、子どもとどう接しているかをみることで、彼が結婚相手にふさわしいかを判断できると思いますが、子どもができたから即結婚するべき、とは思いません。

アウトネンさん僕もいつかはしたいと思っています。伝統のようなものだから。ただ、今するべき時期なのかな、と考えてしまいます。結婚は、しなくてはいけないものではないと思います。するかしないかは、誰もが選択肢がある。

シルタボワさん:介護施設で研修したことがあるのですが、入居者のおじいさんやおばあさんからは「なんで結婚していないの?」とよく聞かれました。でも、今は結婚を選ばないカップルが増えていますし、そのための制度も整っています。

アウトネンさんノアが生まれた時に、父親としての権利を行使できるよう、行政機関で手続きしました。ソーシャルワーカーと簡単な面談をして、申請用紙に2人でサインすれば終わりでした。法律が改正され、2番目の子どもが生まれた時には、もっと手続きが簡略化されて、面談もなく、母親が妊婦健診を受ける「ネウボラ」についていって、その場で手続きが済みました。

こうして父親としての権利を得ているので、たとえ僕たちカップルが別れたとしても、僕は子どもたちに会えるようになります。

偏っていた私の「結婚観」

子どもを妊娠したり出産したりしたら、「結婚」するものーー。2人の話を聞いていると、そうした自分の「結婚観」が、偏っていることに気づかされた。

2人は、結婚と子どもを分けて考えていた。結婚はカップルの問題であって、それは子どもの成長を見守る親の立場とは、また別の話なのだ。

だからといって、結婚を軽く考えているわけではない。むしろ逆だ。

アウトネンさんとシルタボワさんは、この先、子どもが成長した後も2人がずっと一緒にいられる関係なのか、真剣に考えていた。むしろ、慎重すぎるのでは、と思うほどだ。

2人が「結婚」と「子ども」を分けて考えられる背景には、結婚の意思を「子ども」だけで判断しなくても済む制度もあるからではないか、と思った。例えば、「父」になるための行政手続きが簡略化されるといったこと一つとっても。

30歳手前になって、「結婚」がちらつくようになった。でも、その必要性はまだ感じられない。子どもが欲しいと思ったら、結婚を考えてもいいなかな...と、いつしか子どもが結婚する理由になっていた。

しかし、アウトネンさんとシルタボワさんを見ていると、もっとじっくり考えてもいいのかもしれないと気づかされた。交際 結婚 子ども、という順番にこだわる必要もない。1人の人とどうやって今後向き合っていくのか、ゼロから考え直してみようと思った。

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2018年8月、フィンランド外務省が主催する「若手ジャーナリストプログラム」に選ばれ、16カ国から集まった若い記者たちと約3週間、この国を知るプログラムに参加します。

2018年、世界一「幸せ」な国として選ばれたこの場所で、人々はどんな景色を見ているのか。出会った人々、思わず驚いてしまった習慣、ふっと笑えるようなエピソードなどをブログや記事で、紹介します。

#幸せの国のそのさき で皆様からの質問や意見も募ります。

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