江戸川区内で小学校1年生の男児が、継父実母による暴行後に転倒、意識を失って吐いたものをのどに詰まらせ、肺炎により翌朝死亡しました。(詳細)2010年1月24日のことです。歯科医が、男児の頬にあるアザを見つけ江戸川区の「子ども家庭支援センター」に通報するも学校への情報提供にとどまり、児童相談所への通報に至らず最悪の自体となりました。
当時私は江戸川区議会議員で予算委員会で質し徹底的に原因究明と再発防止を求めましたが、事前に命を守ることが出来なかったことに重い責任も感じました、それは今も。
縦割り行政の中にこぼれ落ちていく、子どもの生命を守りたいと、児童相談所の区市への移管への強い思いがこの事件から生まれたことが、都議会議員挑戦時の政策ともなり、現在も毎々都庁へ求めております。
あれから、6年が経ちました。
1月になると、小1男児君の御霊を悼むのが常となっていましたが、今月に入り、12日埼玉県狭山市で顔に火傷をおった三歳女児が死亡。長期に渡る虐待により母親と内縁の夫が逮捕。27日には大田区で、3歳男児が母親の同居人から暴行を受けて亡くなるという痛ましい事件が連続して発生しました。
報道に耳を塞ぎたくなり、胸をかきむしられる思いでおり、これまで一切この事件に関して、安易に発言をすることができずにおりました。子どもたちが最期に見た風景はどんな風景だったのでしょうか。心から冥福をお祈り申し上げます。
事件前後に、友人がちょうど以下の書籍をFacebookで取り上げていて、次男が生まれた年に図書館で借りて読んだ遥かな記憶があり文庫本となったということで取り寄せました。
スーザン・フォワード/講談社(2001-10-18)
子どもへの虐待本は乱読濫読というほど読んでいますが、この本は実にわかりやすく、どれだけ親が子どもへ影響するか、残虐なことを自覚・無自覚関わらずあるいは「子どものため」という詭弁で子どもの人権を奪いコントロールしていくのか、その呪縛からどう逃れたら良いのか、わかりやすく事例をあげて解説しています。
私が、長男出産の時に産後鬱になり、私の子ども時代の心象と向き合うこととなった一冊はこちらです。
A.ミラー/新曜社(1983-07)
アウシュビッツ収容所に象徴される残忍なファシストとして知られるアドルフ・ヒトラーが、なぜあのようなことを平然とするに至ったか…。アドルフ少年の幼年時代に立ち返って、子ども時代に「魂を殺される」とどうなるか分析していく大変分厚い大作です。当時夢中でこの本を読破。どれだけエンパワメントされたかわかりません。
「(子どもだった時の)自分は、悪くなかったんだ…」
と。
長じて、江戸川ワークマムを立ち上げて孤独な子育て支援をするに至ったきっかけは、就労の継続に向けて保育園探しサポートに加え、生きづらさを抱えたまま母親になって苦労をする女性を支えたいという思いもありました。かつての自分自身のようなママ達を支えることで、私も支えられ、救われてきました。
中でも、何度も主催した子どもへの暴力防止プログラム「CAP学習会」では、必ずと言っていいほど、お母さんたちの中に封印していた忌まわしい・痛ましい幼い記憶を取り戻す方がいました。そうした母親をまた受け止めるのもこのプログラムの特徴です。過去の自分のような思いをさせたくないと無意識にこのプログラムを受けさせたのは、母性というよりは、母親の中に今も生きている傷ついた元子どもが、目の前の子どもを助けようと駆り立てたのではないか…と毎回人の持つ不思議な力に感嘆したものです。
今回も、子どもたちへ救いの手が届かなかった無力感で一杯です。6年前の江戸川区虐待死も、埼玉県狭山市、大田区どの母親も十代出産、生活に追われ、継父、24歳の内縁の夫・まだハタチの同居人が虐待に主体的に関わっていた共通点に私は着目しています。産前産後から就学、その後の支援について高いところから行政批判をするのではなく協力をしながら取り組まなくては…多くの他の自治体議員とも共有していきたいです、ことにママさん議員!
まずは、十代における予期しない妊娠、その後の出産、子育て支援を切れ目なく見守っていくことが重要です。どうしても育てられない場合の養子縁組・里親制度の相談・紹介等情報提供体制もあわせて肝要です。
東京都では
妊娠相談ほっとラインを以下の通り開設しております。
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東京都では、妊娠や出産に関する様々な悩みについて、電話やメールで相談に応じる「妊娠相談ほっとライン」を平成26年7月1日に開設しました。
○ 思いがけない妊娠、予定外の妊娠にとまどっている方
○ 妊娠したかもしれないと不安になっている方
○ 妊娠中の体調のことで悩んでいる方
○ 出産費用が心配な方
そのほか様々な悩みを抱える方からの相談に看護師などの専門職が対応し、内容によっては適切な関係機関の紹介も行います。もちろん、匿名で相談できます。不安や悩みは一人で抱え込まずに相談を。
妊娠相談ほっとラインは東京都の委託を受け、株式会社法研が運営しています。
◆電話相談◆
電話番号 03-5339-1133
受付時間
月・水・金 午前10時から午後4時まで
火・木・土 午後4時から午後10時まで
※休日、年末年始関係なく相談に対応します。
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※急ぎの相談につきましては、電話相談を御利用ください。
※メール相談の際にGmailを御利用される場合は、届いたメールがGmailの機能により迷惑メールのフォルダに分類される場合がありますので、御注意ください。
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◆養育家庭◆
養育家庭とは、家庭で暮らすことができない子供を、養子縁組を目的とせずに、一定期間養育していただく家庭のことです。
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◆全ての相談◆
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核家族であることも、虐待や母親が行き詰まっている状況発見の遅れを助長していると痛感しています。子どもの貧困はママの貧困、こうした課題の多い城東地区にて99年江戸川ワークマム発足以来、テーマは「寄ってたかって子育てしよう!」、追い詰められる前に助けて!といえる地域とママネットワークを創ることでした。
幸い昨年お隣江東区で、自由を守る会では、産後うつを乗り越えシングルマザー(今は素晴らしい伴侶をえて明るいステップファミリーを作られました)として仲間を支えながら活動してきた三次由梨香さんが区議会議員となりました。
三次区議と力をあわせて、地域と地方議会、地方自治にてこのような痛ましい事件が二度と発生しないよう地道に取り組んでまいります。併せて東京都における子どもへの人権意識の向上を重ねて求める所存。絶対に子どもの権利条例が東京都には必要です。(過去ブログ「人類は子どもに最善のものを与える義務を負う。」ご参照)
【お姐総括】
「親思う子どもに勝る親心」
という有名な吉田松陰の言葉がありますが、私は逆ではないかなと思うことがあります。
理不尽な親のもとに生まれた子どもは、無条件に従わなければなりません。今この時、暴言をはかれ、暴力をふるわれ、寒空に薄着で外に出されてないか…。お腹が減ってはいないか…。あからさまな暴力を振るわれなくても「勉強できるからいい子」「お父さんと同じ大学に行きなさい」「医者になりなさい」というフリルのついた暴力が振るわれていやしまいか…事件にならない日常が常に横たわっています。
6年前の虐待死事件は、江戸川区議会、江戸川区役所には忘れえぬ痛みとして今も生き続けています。当時の子ども家庭支援センターは、人員体制が十数人に満たなかったところ、この度施設も刷新、人員も大幅拡充され瑞江に移転します。
小1男児君が残してくれた、今を生きる子どもたちへの贈り物…。
理不尽に命を奪われた子どもが、その後に続く沢山の子どもを救うことに、痛ましい事件が続発する中で、いきとし生けるものの可能性と光を感じずにはいられません。
彼が生きていてくれてたら中学一年生。私の姪っ子と同い年でした。
あまりにも、あまりにも大きな犠牲の上に今の江戸川区の虐待防止体制が構築されたことに心より感謝と、改めてご冥福をお祈り致します。合掌
(2016年1月30日「上田令子のお姐が行く!」より転載)