女優のカトリーヌ・ドヌーヴが1月14日、自身を含む100人の女性が連名で9日に発表した「男性には『口説く自由』がある」などとする声明について謝罪した。フランスの新聞「リベラシオン」に書簡を発表した。
「口説く自由」を認めるべき、などとする文書は1月9日、フランスの「ル・モンド」紙に掲載された。文書は、2017年から続くセクハラや性暴力に対する告発について「レイプは犯罪だが、誰かを口説こうとするのは(たとえそれがしつこくても、あるいは不器用なやり方でも)犯罪ではない」「(男性の)口説く自由は認められるべきだ」などと主張。セクハラ告発により、「『ピューリタニズム(清教徒的な潔癖主義)』の波が起きている」とした。
文書の内容は様々な議論と批判を呼んだ。イタリア人の俳優で映画監督のアーシア・アルジェントは、この文書を「嘆かわしい」と批判し、文書に署名したドヌーヴほか100名の女性たちには「内に秘めた女性嫌悪」があると述べた。
ドヌーヴは1月14日、自身の単独署名でリベラシオンに書簡を発表した。
書簡では、「口説く自由」文書の発表者に名を連ねた理由について、特に芸術の世界で起きかねない表現規制を案じたからだとしている。ドヌーヴは書簡に「(少女の絵を描いた)レオナルド・ダ・ヴィンチを小児性愛の芸術家とみなし、その作品をなかったものとしますか?(女性の裸像などの作品も多い)ゴーギャンの美術館を閉鎖しますか?」、「このような規制に関する状況は、私を閉口させ、我々の社会の未来に対して心配させます」などと綴った。
また、「他者を断罪し、裁き、批判する資格が自分にあると、あらゆる人が感じている現状は好きではありません」「ソーシャルネットワークが人を罰し、仕事を辞めさせ、メディアリンチすら引き起こす。30年前の行いで、ある俳優は映画から存在を消し去られ、映画ディレクターは辞任を要求される。そんなことが一般的になりすぎた現状は好ましくない。だから#BalanceTonPorc(フランス版 #metoo)のハッシュタグからは距離を置きます」などと書き、#metoo などのセクハラ告発ムーブメントに対する違和感を改めて表明した。
ただ、「口説く自由」文書の共同執筆者となっている元ポルノ女優、ブリジット・ラーエがテレビの討論番組で述べた「人はレイプのとき快楽を感じることもできる」という発言については、「性犯罪の被害者の顔につばを吐くよりも酷い」などと批判し、文書がハラスメントを肯定しているわけではないと強調した。
ドヌーヴは書簡を「『ル・モンド』に掲載された文書によって攻撃されたと感じた、すべての憎むべき行為の被害者に、親愛の情を示します。こうした被害者に対しては謝ります」と締めくくり、世間一般に対するお詫びではないことを強調しつつ、謝罪の意を示した。