受精卵を取り違えられたアメリカ・カリフォルニア州のカップルが11月8日、医療ミスや契約違反、過失、詐欺などで不妊クリニックとオーナーを提訴した。
カップルの妻は、体外受精を利用して妊娠し、2019年9月に出産。しかし不妊クリニックが受精卵を取り間違えていたために、産んだのは別のカップルの子どもだった。
そしてその別カップルの女性が、提訴したカップルの赤ちゃんを出産していた。
出産直後に生まれた疑念
訴えを起こしたのは、ダフナ・カルディナーレさんと夫のアレクサンダーさんだ。
ふたりは、生まれてきた赤ちゃんの肌や髪の色が自分たちと違ったために、出産直後から「本当に自分たちの子なのだろうか」と疑念を抱いたという。
不安な気持ちを抑えて子育てを続けていたものの、出産数週間後に不妊クリニックから「赤ちゃんの写真を見せて欲しい」という電話がかかってきてふたりの疑念は深まった。
思い切ってDNA検査を受けてみると、赤ちゃんと自分たちには遺伝的つながりがないことがわかった。
ダフナさんは提訴の記者会見で、「恐怖と裏切り、怒りと悲嘆に圧倒されそうになりました」「自分の子どもを妊娠してお腹の中で育て、絆を築き、赤ちゃんがお腹を蹴るのを感じる機会を奪われました」と語っている。
ダフナさんが産んだのは別のカップルの子どもで、そのカップルの女性は一週間違いでカルディナーレさんたちの赤ちゃんを出産していた。
赤ちゃんは2020年1月にそれぞれの親の元に戻り、両家はそれ以来「大きな家族」として交流を続けている。赤ちゃんたちもそれぞれの家族と絆を築けているという。
それでもカルディナーレさんたちは、取り違えで受けた大きなダメージの責任を問うためにクリニックを提訴。取り違えが起こす痛みをクリニック側に知ってもらい、自分たちと同じ経験を他の人たちがしないようにして欲しいと願っている。
弁護士によると、もう1組のカップルも、数日中に同様の訴訟を起こす予定だ。
受精卵の取り違えはこれまでにも起きている。2019年には、カリフォルニア州在住のカップルの受精卵が誤ってニューヨーク在住の女性に移植されて出産。法廷闘争の末に、カリフォルニア州のカップルが親権を手にした。
体外受精による妊娠・出産が増える一方で、取り違えのような問題は、子どもを望む人やその家族に大きな精神的ダメージをを与える。
カルディナーレさんたちの弁護士は「不妊治療には連邦当局による規制が必要だ」と主張している。