幼稚園や保育所などの通園バスに取り付ける安全装置について、2023年6月末時点の設置率が全国で55.1%にとどまったことがわかった。
こども家庭庁が6月27日、発表した。
安全装置は、保育施設の通園バスに取り残された子どもが死亡した事案を受けて、2023年4月から設置が義務化されている。
政府は24年3月末までの1年間、経過措置期間として猶予を与えているが、可能な限り23年6月末までに設置するよう求めてきた。
暑さが本格化する7月を目前に控えた段階でも、44.9%の通園バスで安全装置が設置されていないことになる。
設置完了は15.6%、設置予定は39.5%
調査は、通園バスを運行している幼稚園や保育所、認定こども園、特別支援学校など、全国約2万1000施設の約5万台が対象。
5月15日までに安全装置の設置が完了したかどうかと、6月末までに設置が完了するかどうかについて聞き取った。
調査結果によると、5月15日までに設置が完了したと報告があったのは15.6%、6月30日までに設置予定としたのは39.5%だった。
つまり、安全装置の設置率は、6月末時点で55.1%(2万7566台)となる。
設置率が高かった施設や都道府県は?
6月末時点の設置率が最も高かったのは、小規模保育園などの「地域型保育事業(居宅訪問型を除く)」で、74.8%に上った。
このほか、「幼稚園」と「認定こども園」は67.4%、「保育所」は67.3%、「認可外保育施設」は60.0%と、いずれも60%を超える割合となった。
一方で、「指定児童発達支援事業所」(42.9%)、「特別支援学校」(45.4%)、「放課後等デイサービス」(49%)は、50%を下回った。
都道府県別で最も設置率の割合が高かったのは、石川県(77.9%)で、山口県(77.0%)、徳島県(76.3%)などと続いた。
逆に、最も低かったのは、滋賀県(20.3%)だった。
静岡で女児が死亡する痛ましい事故
安全装置の設置義務化をめぐっては、静岡県牧之原市で2022年9月、送迎バスに置き去りにされた女児が重い熱中症で死亡する痛ましい事案が発生したことから、政府が22年10月に緊急対策を取りまとめた。
その後に発表されたガイドラインでは、ドライバーに車内の確認をさせる警報を発したり、カメラなどのセンサーで人を検知したりする機能を備えた安全装置を要件とすることが定められた。
一方、今回の調査では、暑さが本格化する7月以降も安全装置が設置されていない通園バスが多くあることが表面化。
小倉将信こども政策担当相は、6月27日の記者会見で「(設置率について)十分とは言えない」と懸念を示している。