27年間一度もシフトに穴を開けることなくバーガーキングで働いてきたケヴィン・フォードさんは2022年、会社からチョコレートやペンなどのギフトが入った袋が贈られた。
しかし多くの人は、27年の勤務の報いとしてお菓子は不十分だと考えたようだ。ネット上で、真面目に働き続けたフォードさんのために40万ドル以上が集まっている。
27年間の無欠勤
アメリカ・ラスベガスのハリー・リード国際空港にあるバーガーキングで働いているフォードさんは2022年5月、会社からもらったギフトをTikTokに投稿した。
動画でフォードさんは、「27年間働き、一度も無断欠勤したことはありません」と伝えて、袋に入っていたチョコレートやコーヒーカップ、ペン、映画チケットなどを嬉しそうに見せた後、両手の親指を上げて喜びを表現している。
フォードさんは「みんながもらえるわけではありませんので、嬉しかった」とNPRに語っている。
しかし、この動画が拡散すると「27年間働いてペンとチョコレート?」「もっと良い待遇を受けるべきでは」「1週間の有給をあげれば、孫に会いに行けるのに」といったコメントが殺到した。
フォードさんの子どものセレニャさんは「誰かこの男性のためにクラウドファンディングをする必要がある」というコメントを読んで、自らが立ち上げることを決意したという。
当初の目標額はテキサス州にいる孫に会うための飛行機代200ドル(約2万9000円)だったが、あっという間に達成したため、金額を何度もあげなければならなくなった。
そして1年以上経った現在、クラウドファンディングページでは43万ドル(約6200万円)以上が集まっている。
セレニャさんは、シングルファザーだった父親は自分と姉を育てるためにバーガーキングで仕事を始めたと説明している。
職場が労働組合に加入していて健康保険に入れたため、フォードさんは再婚して家族が増えた後も、4人の子どもたちを高校や大学にいかせるためにバーガーキングで働き続けたという。
体調が悪くても休めなかった
27年の無欠勤がSNSで称賛されたフォードさんだが、休まなかったのは休めなかったからだ。
アメリカでは飲食店や宿泊施設の多くで有給の病気休暇がなく、体調が悪い時には有給休暇を使わなければならない。
NPRによると、フォードさんも27年間の間に睡眠時無呼吸症候群の手術と、長時間の立ち仕事による脊椎の治療で2度休んだことがあるが、その時も有給休暇を使ったという。
「あまりの痛みにフライヤーの前で横たわらなければなりませんでした。他の人から家に帰りなさいと言われたけれど、電気代や水道代支払いのことを考えた」と述べている。
また4人の子どもを育てている時も、帰りが午後10時を過ぎることも珍しくなかった。
「私の人生には仕事しかありませんでした。振り返れば、それは何のためだったのだろうと感じます。なぜ子どもたちや妻と過ごせたであろう日々に休まなかったのでしょうか?」
クラウドファンディングで寄せられたお金は、退職後の生活や孫の教育資金などに使う予定で、今後もバーガーキングで働いて週末にはUberなどの配達の仕事をする生活を続ける予定だという。
それでも、集まったお金のおかげで遠くに住む孫に会う夢を叶えることができた。
フォードさんは自分の誕生日の8月22日に、テキサス州オースティンに住む孫を訪ねる動画を投稿している。
フォードさんは動画で孫たちと一緒に撮った写真を紹介し「皆さんのおかげです」「次の奇跡はあなたに起きる」と感謝を伝えている。