「君らが欲しいのは金か?そう言って、社長は1万円札を破った」パワハラ訴訟の企業、会社説明会の参加者が証言

クイズの優勝者に渡そうとした瞬間…
1万円札のイメージ写真
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Bloomberg via Getty Images

「君らが欲しいのは金か?そうじゃない、やり甲斐だろ」

そう言って、ビ・ハイア株式会社の社長は、財布から出した1万円札をビリっと2つに破ったという。2012〜2013年に都内で開かれた新卒採用の会社説明会の様子を、当時の出席者が証言した。印象的な出来事だったので、強く記憶に残っているという。

ビ・ハイアは、アニメ・ゲーム・マンガ専門の求人サイト「ラクジョブ」の運営で知られている。2月に自殺した女性従業員の遺族と、別の元従業員2人が10月17日、「社長から凄惨なパワハラを受けた」として、社長と会社を相手取って慰謝料など約9000万円を求める民事訴訟を東京地裁に起こした。社長は「事実とはまったくかけ離れた虚偽」と原告側の主張を真っ向から否定している

■「このお札を銀行に持っていくかどうかは君次第だ」

2012年から2013年にかけて就職活動をしていた20代女性が10月23日、ハフポスト日本版の取材に応じた。

彼女によると、ビ・ハイアの会社説明会は、都内の体育館で開かれ、100人近くの学生がパイプ椅子に、すし詰めになっていたという。説明会は社長が一人で壇上から語るもので、人生哲学や苦労話が中心。業務内容の説明は、ほとんどなかったという。そして唐突にアニメソングのイントロクイズが始まった。

女性は、こう振り返る。

「社長が1万円札を見せて、優勝賞金にしたことで、会場は色めき立っていました。全部で10問あり、5〜6人が1チームになって、バインダーに作品名、曲名などの回答を記入していきました。仮面ライダーや『TIGER & BUNNY』の歌だったと記憶してますが、キャラクターソングの難問もありました。最終的に2チームが同点となり、各チームの代表者が壇上で社長とジャンケンをして優勝チームが決まったんです」

冒頭の出来事が起きたのは、この直後だ。

この女性の記憶によると、社長は「では約束通り...」と再び1万円札を出したが、その場でビリっと破った。そして、そのまま優勝チームの代表者の男性に渡した。そして女性が覚えている限りでは、次のように言ったという。

「これを銀行に持っていけば、新札に替えてくれる。でも破れた1万円札を見て、僕の話を思い出すか。刹那的にお金に変えるかは君にかかってるぞ」

社長は、2014年3月にも個人ブログで『君は1万円札を破れるか』という本を読んだ影響で、実際に「1万円札を破りました」と書いていた。ただ、会社説明会で破ったかどうかについては説明がなかった。

お札を破る行為は、違法なのか気になるところ。弁護士ドットコムによると、渡部孝至弁護士は「貨幣を損傷したり鋳つぶしたりすると貨幣損傷等取締法により自己所有であっても、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられますが紙幣には処罰規定はありません」とした上で、以下のようにコメントしている。

「故意に損傷すれば反倫理的な行為として貨幣に準じて考えられるのではないかと思います」

ハフポスト日本版はビ・ハイアに事実関係について問い合わせている。回答があり次第、追記予定だ。

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