SDGsの達成年限である2030年が迫る中、持続可能な未来の実現を目指すため国境を跨いだ取り組みが積極的に推し進められている。
食品や医薬品、化成品などを手掛ける総合企業の味の素は、日本政府とブラジル政府が推進する日伯グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ(以下、日伯GPI)の取り組みの1つである「ブラジル劣化農地回復モデルに向けた実証調査」プロジェクトにパートナーとして参画することを発表した。
今年3月に署名が発表された、日伯GPIの新たな一歩

日伯GPIは、環境・気候変動対策および持続可能な開発における協力を強化するための枠組みとして2024年5月に日伯首脳会談で立ち上げられた。その内容は多岐に渡り、アマゾン基金への拠出、劣化農地の回復支援、防災協力の推進などのほか、エネルギー分野での協力も実装されている。
農林水産省は3月26日、両政府が日伯GPIの新たな調査プロジェクト「ブラジル劣化牧野回復に係る意向表明書」に署名したことを発表した。
ブラジルでは、連作障害(同じ作物を同じ場所で繰り返し栽培することで、収量が減少したり、生育が悪化したりする現象)や長期的な視点での土壌管理が不十分なことが原因で、表土の栄養分枯渇等に伴う土壌劣化が進んでいる。日伯GPIでは、こうした状況の改善策として「土壌回復」「低炭素農業」「再生農業等の技術協力」「各種資材や機材、設備等の資金協力」を通じて2国間関係強化を図っている。
鍵を握る、味の素の「BS製品」
「ブラジル劣化牧野回復に係る意向表明書」の署名に伴い、同社は連結子会社であるブラジル味の素社を通じて、ブラジル国内のモデル農場で土壌の劣化した農地を畑地に回復するためのプロジェクトに参画した。

バイオスティミュラント(植物の成長を促進し、ストレス耐性を高めるために使用される天然由来の物質や微生物=BS)の開発・生産技術を活用した製品を、大豆やトウモロコシ・牧草などを育てるモデル農場に提供し、その効果検証を実施するという。
提供される「AJIFOLⓇ」「AMINO Arginine」等のBS製品は、ブラジル味の素社で生産されている液体葉面散布剤だ。同製品はサトウキビを主原料とするうま味調味料「味の素Ⓡ」の生産過程で得られる副生物(発酵母液)をベースとし、各種アミノ酸を豊富に含んでいるため、農作物の生育ポテンシャルを高め、収率や品質の改善が期待できるという。
対象製品となった背景には、副生物の有効活用という側面に加え、副生物をサトウキビ畑に還元し、さらに「味の素Ⓡ」の生産につなげるというバイオサイクルの確立への高い評価がある。
味の素グループは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献していくため『ヘルスケア』『フード&ウェルネス』『ICT』『グリーン』を4つの成長領域としており、日伯GPIへの参画を通じて、持続的な農業・フードシステムへの貢献を目指します」とコメントを発表している。