この春、続々刊行! 女の子を励ます本

フェミニズムは女性だけでなく、男性、子ども、皆のものです。

この春、続々刊行! 女の子を励ます本

この春、女の子や女性を励まし、エンパワーする本の刊行が続いています。

3月22日  『問題だらけの女性たち』(ジャッキー・フレミング 著、松田 青子 訳、河出書房新社)

3月27日  『世界を変えた100人の女の子の物語』(エレナ・ファヴィッリ 、フランチェスカ・カヴァッロ 著、芹澤 恵 、高里 ひろ 訳、河出書房新社)

4月20日  『世界を変えた50人の女性科学者たち』(レイチェル・イグノトフスキー 著 、野中 モモ 訳、創元社)

5月19日予定『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』( サッサ・ブーレグレーン 作、枇谷 玲子 訳、岩崎書店)

CHIENOWA BOOK STOREが選ぶフェミニズムの本フェア

このようなテーマを扱っている本で、イラストたっぷりで子どもから楽しめるものが、立て続けに出されたことは、私が知る限りではありませんでした(参考:旭屋書店で今春開催された「誘惑の早ワカリ本」フェア)。

来たる5月20日~6月20日の1ヵ月間、東武東上線の朝霞駅(埼玉県)内にあるCHIENOWA BOOK STOREでこれら4冊と店長が選んだフェミニズム本を集めた『CHIENOWA BOOK STOREが選ぶフェミニズムの本フェア』も行われます。

先に挙げた4冊はそれぞれ、どんな内容なのでしょう?

1.『問題だらけの女性たち』

女の脳は小さい? 女が考えると生殖器がダメになる!? 19世紀の女性たちがいかにバカバカしい迷信と固定観念に苦しめられたか、ユーモアと皮肉炸裂で描くイギリス発ジェンダー絵本! 笑うに笑えない、19世紀ヴィクトリア朝の「大問題」な女性観。何をするにも「問題」があると決めつけられ、「歴史のゴミ箱」に捨てられた女性たちをすくい上げる!

ジャッキー・フレミングの手にかかると、皮肉とユーモアは最高の武器になる。 昔も今も、この世界のおかしなところは、こんな風に笑いのめしてやらないと。 ――松田青子 【各紙大絶賛!】

なんて面白く、冴えている絵本だろう! 人間の本質を突き、あらゆる世代の男女、子どもまで読める。 ――「サンデー・タイムズ」

歴史上の偉大な男性たちをめった斬りにして、足げにされてきた女性たちの姿を描き出す! ――「インディペンデント」

未来のフェミニストたちにとって、パーフェクトな贈り物になるだろう。 ――「ビックイシュー」

書店さんからのコメント

ジャッキー・フレミング『問題だらけの女性たち』(河出書房新社)訳者の松田青子さんのコメント付きPOPをいただきました。「たくさん笑って、たくさん怒って、たくさん勇気が湧いてきます。」 pic.twitter.com/CL28KtheVR

— ????くまざわ書店 武蔵小金井北口店 (@kbc_koganei) 2018年4月9日

『問題だらけの女性たち』(河出書房新社)19世紀、イギリス。女性にまつわる迷信と固定観念を、ユーモアと皮肉で苦く描きます。小さな頭、弱々しい手...。平然と言ってのけられていた事事に怒りと呆れが生じますが、21世紀の日本に住む私たちは、本当にこれを笑えるでしょうか。見えているでしょうか。 pic.twitter.com/4PSf9PnA0Y — 谷中・ひるねこBOOKS (@hirunekobooks) 2018年3月31日

この本面白い。19世紀の女性に向けられた偏見と固定観念を、皮肉とユーモアで包んだ、毒っ気たっぷりな一冊。笑いの間にも少し寒々しさが差してくるのは、「本当に笑えるのか?」と、それが自分に向かってくるからだろう。ジャッキー・フレミング 松田青子訳『問題だらけの女性たち』(河出書房新社) pic.twitter.com/UwDY0kJFXl

— Title(タイトル) (@Title_books) 2018年3月22日

2.『世界を変えた100人の女の子の物語』

訳者の芹澤恵さん、高里ひろさんにインタビューをしました。

傑出した100人の女性の伝記

この本は傑出した女性100人の伝記です。それぞれの伝記は、見開き2ページと、おやすみ前に親が子どもに読んであげるのにぴったりの長さです。

子どもの本ではプリンセスはいつも王子様に助けられる

作者2人は30代前半の起業家で、成功すること、認められること、チャンスを与えられること難しさを身に染みて感じてきました。またビジネスの世界で女性は男性に比べて自信がない傾向にあるのか不思議に思いました。 理由を考えた2人は、女の子向けの子どもの本に出てくるプリンセスが王子様に助けられてばかりだからではないかと気がつきました。20世紀に出版された6000冊の子ども向けの本のうち、女性が主人公であるものが7.5%しかないことにも。

作者達は今の女の子たちが成長していく上で、女性のロールモデルがたくさんいると知ることは重要だと考えました。そのことが女の子たちに自信を与えより高い目標を目指すことを可能にするはずだとも。そこで、この本を作ることにしたのです。

クラウド・ファンディングで資金を募る

作者達は自分で人生を切り拓いた女の子達のことを描いた、ジェンダーによるステレオタイプに縛られない本を作るため、クラウド・ファンディング、キックスターターで資金を募りました。イタリアからアメリカに移住し、シリコンバレー女性起業家として活動する2人は、インターネットを使ったマーケティング戦略が得意で、以下のような動画も作成し、目標をはるかに上回るキックスターター史上、最高額のおよそ110万ドルもの資金を集めました。

他の伝記との違い

この本ではマリー・キュリーなど伝記でおなじみの人物だけでなく、ファッションデザイナーのココ・シャネル、活動家マララ・ユスフザイ、世界初のプログラマー、エイダ・ラブレースやボクサー、サーファー、探検家、テニス選手、ロックスターなど、今の子供たちがテレビのニュースで目にするような人達も取りあげられています。

イラストの魅力

それまでに写真や肖像画などで知られているその人物のイメージを残しつつ、大胆でカラフルで、かつその人物らしさをうまくとらえた、素敵なイラストを世界60人の女性イラストレーターが手がけました。子どもはもちろん、大人が見ても愉しいのではないかと思います。

世界160万部の大ベストセラー

『世界を変えた100人の女の子の物語』世界42カ国で翻訳出版が決まっており、全世界ですでに160万部のセールスを記録しています。 女の子たちを勇気づけるために、この本の執筆をはじめた作者達は、「私達が子供のときに、この本を読みたかった」と語っています。

女の子だけでなく、男の子や大人にも

最初に親が子どもに読んであげるのにぴったりと申しましたが、この本は字も大きく、イラストもカラフルで目を引くので、子どもが興味をもてば自分で読みだすことでしょう。 大人にとっても「こんな女性がこんなふうに活躍したのか」と知るきっかけにもなります。この伝記をきっかけに、興味をもった人物についてより詳しく調べるのも楽しいのではないでしょうか。

タイトルは『世界を変えた100人の女の子の物語』となりましたが、男の子にもぜひ読んでほしいと願っています。そして、男の子を育てている女の人や男の人にも手に取っていただけたらとも願っています。 この本は女の子ばかりを取りあげていますが、自分の力を信じ、反骨精神で夢に向かって進んでいく姿というのは、実は今の日本で生きる男の子のロールモデルにもなりうるのではないか、と思っています。

圧倒的な明るさ、ポジティブさ

私達はこの本を訳していて、作者達の力強さ底抜けの明るさ徹底的にポジティヴな姿勢に、巻き込まれました。それぐらい「熱」のある本です。その「熱」は読む人の心を温め、前向きに、元気にしてくれます。 とにかくこの本を読んでくれさえしたら、エレナとフランチェスカの思い、そして私達の思いも、きっと伝わると信じたい気持ちで一杯です。

3.『世界を変えた50人の女性科学者たち』

創元社

編集者の小野紗也香さんからご寄稿いただきました。

<内容紹介>

本書は、科学・技術・工学・数学(STEM)の分野で世界を変えるような素晴らしい業績を残しながら、これまで歴史の陰に隠れがちだった女性科学者50人にスポットをあて、その驚くべき研究成果バイタリティあふれる人生の一部を、チャーミングイラストとともに紹介します。 愛らしいイラストを手がけたのは、アメリカの新進気鋭のイラストレーター、レイチェル・イグノトフスキー。厳しいサイエンスの世界をひた走るヒロインたちを、その業績だけでなく、人間的な魅力を引き出しながら描き上げています。 ここに登場する50人はみな、女性が教育を受けたり、男性に混じって仕事をすることすら制限されていた時代にも、常識を打ち破り差別や困難と闘い、世紀の大発見や研究をなしとげた人たちです。

周囲から「だめだ」と言われても「できるものなら止めてみなさい」とばかりに諦めなかった女性科学者の姿は、若きリケジョのみならず、壁に立ち向かいひたむきに夢を追うすべての人の背中を押してくれるはずです。

<本書の見どころ>

●古代から現代まで、世界を変えるような偉業をなしとげたトップクラスの女性科学者50人(+α)を紹介

●研究成果からプライベートな一面まで、トリビアもたっぷり。魅力あふれる女性科学者の人生の物語簡潔に学べます

●アメリカ出身の若手女性イラストレーターによる可愛いイラストが満載。ビジュアルブックとしても楽しめます

研究室の道具一覧科学単語集科学年表など、楽しいコラムも収録 ●原則として小学5年生以上で習う漢字にルビつき。若い科学者のたまごを応援します。

<編集者からひとこと>

私は小学生のころから、算数はもちろん数学も理科も大の苦手でさんざん苦労したのですが、しかし不思議なめぐり合わせで、編集者になってからは地学や生物図鑑など理系の本を多く担当するようになりました。勝手のわからぬまま仕事を続けるうちに、理系の人々の発想がとてもユニークであること、科学的視点は私に今まで思いもよらなかった世界の姿を見せてくれることを知り、すっかり夢中になりました。

この『WOMEN IN SCIENCE(世界を変えた50人の女性科学者たち)』の翻訳出版を企画したのも、当初は、これならイラストもかわいいし、女の子たちが科学の世界に興味を持ってくれるかも、という考えからでした。

しかし、翻訳があがってくるにつれ、私は歴史上の女性科学者の置かれていた過酷な状況に打ちのめされました。意欲ある人が、その実力とは何の関係もない理由で学べないなんてことがあっていいのでしょうか。同じように研究しているのに実験室をもらえなかったり、同じように教えているのに給料がほとんど支払われなかったり、一緒に研究をして成果を残したのにある人は称賛され、ある人はその栄光に浴せないなんてことがあっていいのでしょうか。 ふつふつと怒りがこみ上げてきました。

女性科学者が受けてきた差別は、何も性別には限りません。人種、民俗、社会階級、経済状況、ありとあらゆる差別であり、そのどれ一つとして、私たちはまだ完全には克服できていないのです。そういう理不尽さが今も意識的、無意識的に存在するということに、とても怒りをおぼえました。

一方で彼女たちの、困難にもかかわらず自分の信念に従って進む強さや、ふとしたエピソードから垣間見られる人間味あふれる優しさや魅力は、絶望的な気持ちを支えてくれました。周囲の環境に振り回されることなく、自分の信じる道を行くこと、少なくともそのために精一杯力を尽くすこと、それが本当に自由な生き方なのだと教えてくれました。だからこそますます、性別も、年齢も、職業も関係なく、自分の生き方を模索しているすべての人に読んでもらいたいと思ったのです。

原書はもともと9歳からローティーンのために作られていますが、小中学生には難しいと思えるような科学的知識も、妥協することなく盛り込まれています。日本版でも、若い読者の理解力をあなどることなく、専門用語も思い切って使う一方、少しでも多くの子どもたちに読んでもらえるよう、小学校5年生以上で習う漢字にはふりがなをふりました。

また、ビジュアルブックとしてのデザイン性を損なわぬよう、野中モモさんに日本語訳を大胆に編集していただき、文字量をおさえながらも、各人物の魅力をあますことなく伝える翻訳に気を配りました。野中さんには、本書を一面的にとらえず、さまざまな観点から読み解く助けになるような、「まえがき」も書いていただいています。 各人物の名前の上についているキャッチコピーは、日本版ならではの工夫です。残念ながら、現在の多くの科学者の伝記では、女性はマリー・キュリー(キュリー夫人)くらいしか紹介されていません。何も知らない人物の伝記を読み進めるのは大変ですから、ほんの一言でも説明をそえて、読者がその人物に興味を持つきっかけになればと思いました。

装丁も日本版オリジナルです。女性科学者たちが星空に浮かび上がるようなデザインが本書の特長ですが、黒い背景はどうしても地味な印象になってしまいがち。そこで、原書は顔だけのイラストだったのをバストアップに変更し、華やかな彩りを添えました。

その他、刊行に先駆けて約3か月前からTwitterInstagramをはじめとするSNSに公式アカウントや特設サイトを設けました。本の広報宣伝はもちろんですが、女性科学者の人柄が伝わるようなエピソードや、文理横断的なテーマを取り上げ、本書の内容ににまけない多角的な切り口での情報発信を心がけています。 Follow @WIS_Japan

4.『北欧に学ぶ小さなフェミニストの本』

男女平等の考え方が進んた北欧の国、スウェーデンでは、国会議員が男女約半々で、社会で活躍する女性が多い国です。  

フェミニストとは、男女がともにいたわり、思いやり、仲良く生きていくには、どうしたらいいか考え、行動する人のこと。

男らしく、女らしくとは? わたしはわたし、ぼくはぼく、自分らしくハッピーに生きるとはどんなこと?  

だれもが平等に自分らしく生きるとはどんなことか、スウェーデンの子どもたちと一緒に考えます。

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翻訳者 枇谷 玲子より

これまで子どもの本は、女の子と男の子両方に、「夢を持ちなさい」というメッセージを盛んに発信してきました。でも夢をみろと言うのなら、社会に立ちはだかる壁をも示し、「大人も闘う」と言うのが筋ではないでしょうか?

作者のサッサ・ブーレグレーンさんは民主主義についてポーランドで講演をした際、こう言いました。「子ども時代は、大人になるためのただの準備期間ではありません。子ども時代は、人生の一部です。私達は子ども達を社会の一員として受け入れるべきです」

この本では、社会をよくしようと長年闘ってきたフェミニストのおばあちゃんが10歳の女の子に、「今度はあんた達の番だよ。自分達のやり方でやってごらん」とバトンを渡す姿がすがすがしく描かれています。

この世の中には、悲しいぐらいに、フェミニズムに対する誤解が蔓延しています。魅力的なフェミニスト像を示すことで、「私はフェミニストだ」と胸を張って言える社会を作ることはできないでしょうか?

子どもの本の言葉はまっすぐシンプル、ごまかしがありません。 子ども達はこう言います。「(大事なことを決めるのに、女の人も子どもも加われば)よりよい決定がされて、世界がもっと面白くなる

作者のサッサさんは民主主義やフェミニズムについて子ども達にワークショップをする中で、子ども達は大人よりずっと思いやりがあって、他人の悲しみを理解する優しさを持ち合わせていることに気が付きました。子ども達は大人が思いつかないような素晴らしいアイディアを持っていることにも。

フェミニズムは女性の権利を拡張するように求めるものではなく、全ての人が平等自分らしく生きる権利を求めるとても公正な思想です。なので、サッサさんはこの本の中で女性だけでなく、男性、そして子どもも生きやすい社会を作ろうと唱えています。

北欧では女性だけでなく、男性までもが、「男女平等は当然、必要」、「男女平等は闘って勝ち取るものだ」と、一般常識として認識しているようです。 このような認識を社会に広めるには、フェミニズムとは何か、またフェミニズムの歴史易しい言葉シンプルに伝えることが不可欠です。この本が全ての人が自分らしく生きられる社会を作る一助となれば幸いです。

この本の中で、おばあちゃんは孫の女の子にこう言います。「(ヨーロッパでも男女の不平等に憤る人はいたけれど、その多くは)声を上げたりはしなかった。いや、数百年たった今では、そういうこととされている。当時の庶民の女性のことは、あまり分かっていないんだ。歴史の資料には、戦争や王様のことばかり書かれているからね。わたしたちの祖先のおばあさんたちのことは、大して分かっていないんだ」

日本のフェミニストもほとんどいなかったことにされていないでしょうか?  なぜ日本の教科書や子どもので、男女平等が必要なものだとはっきりと書かないのでしょうか?

この本では、男の子も女の子も一緒になって男女平等について考え、意見を交換し合い、どうして問題がなかなか解決されないのか――どうしたら社会を変えられるのか、真剣に考えます。(参考:ムーニーのCMが炎上。ワンオペ育児するのが、ママじゃなくてパパだったら? ノルウェーのジェンダーフリー教科書を使って考える

どうしたら男女が敵対的にならずに対話できるのか、公正とは何か、理性的な議論とは何か――大人が読んでも学びがたくさんある素晴らしい本です。

Feminism for Everybodyフェミニズムは女性だけでなく、男性、子ども、皆のものです。

サッサさんの本はスウェーデンだけでなく、トルコロシアポーランドといった国でも男女平等と民主主義を願う人達を励まし続けています。

本の力

本が売れないと言われる時代ですが、それでも本の力を信じる人は多いです。ストゥ夫人により1852年に出版された『アンクル・トムの小屋』が奴隷制度の残忍さをアメリカ中に知らしめ、南北戦争の一因となり、1863年には奴隷解放宣言が出されるに至りました。本は時に世論を、また社会をも動かします。 今回出される4冊はどれぐらい世の中にインパクトを与えることができるのでしょうか?

CHIENOWA BOOK STOREが選ぶフェミニズムの本フェア

5月20日~6月20日まで、東武東上線朝霞駅(埼玉県)内にあるCHIENOWA BOOK STOREで開かれる『CHIENOWA BOOK STOREが選ぶフェミニズムの本フェア』にもぜひ足を運んでいただきたいです。

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