【書評】ベストセラー連発の出版社トップが薦めた「日本語の作文技術」

本書を読むと、「神は細部に宿る」という意味を実感できるのだ。

週次に上司に提出する業務報告書やお客様への提案書など、日々の仕事において、文章を書く機会は非常に多い。

それに加え、今はSNS全盛時代である。プライベートにおいてもTwitter、Facebook、InstagramなどのSNSでプライベートにおいても文章を書く機会は増えている。

しかし、「実は文章を書くのが苦手!」と考える人は、結構多いのではなかろうか?

かく言う僕も文章を書くのが苦手だ。文章を書くのにいつも四苦八苦している。

「文章をすらすらとうまく書けるようになれたら、どんなにいいだろうか?」

このような思いを抱きながら、文章がうまく書けるようになる秘訣を知る機会を求めていた。

そんなある日、Facebookを見ていたとき、以下のイベントのタイトルが目に入った。

  • "ヒット作連発の出版社で、編集部全般も統括する社長に学ぶ、本当に使える「文章術」"

登壇者はディスカヴァー・トゥエンティワン社長の干場弓子氏とハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏。『超訳 ニーチェの言葉』などのヒット作を連発している出版トップと、月間2000万以上のUU数を誇るWebメディアの編集長に文章の書き方を学ぶというイベントだ。

「これはまたとない機会!是非参加したい!!」

そう考えた僕は即座に申し込み、そしてイベントに参加した。

当日、文章を書く技術、そして文章を書くに当たって意識すべきことについて発せられるお二人の言葉に深く頷きながら学ばせていただいた。

ディスカヴァー・トゥエンティワン社長:干場弓子氏
ディスカヴァー・トゥエンティワン社長:干場弓子氏
ハフポスト日本版編集長:竹下隆一郎氏
ハフポスト日本版編集長:竹下隆一郎氏

その二人がイベントの中で文章を書く技術を向上させるために役立つ本としてお薦めした本がある。

本多勝一著『日本語の作文技術』である。

実は、僕は書評ブログを書いているものの、今までこの本の存在を知らなかった。ただ、出版社のトップとWebメディアの編集長が薦める本だから、さぞかし凄い本に違いない!そう思った僕は早速本屋で本書を購入した。

日本語の作文技術』は1982年に発刊された本である。

多くの著名なライターが文章を書く上で「絶対に読むべき本」として語っている。そのためか、発刊から約30年以上経った現在においても売れ続けているロングセラーである。そして、2015年には新版として発売された際には、東進ハイスクールの人気講師・林修先生も推薦文を記載している。

本書で書かれているのは

  • 修飾の順序
  • 句読点の打ち方
  • 漢字とカナの使い方による心理的影響の違い

など、「わかりやすい文章を書くための数々の作文技術」である。

それにしても、本書に書かれている技術を用いると「こんなにも文章が大きく変わるものか?」と思わず感嘆してしまったのだ。

例えば、本書で紹介している日本語の作文技術の一つとして「修飾・被修飾の言葉を直結させる」というものがある。修飾・被修飾の言葉が離れすぎると分かりづらい文章になってしまう。そのため、修飾・被修飾の関係を分かりやすくするための技術として紹介されている。

極端な例ではあるが、本書にはわかりにくい例文として、以下があげられている。

「私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った」(P32)

この文のわかりにくさは一目瞭然。誰が、何をしたのかがよくわからない。

ちなみに、この例文の修飾・被修飾の関係は以下通り。

「私は〜思った」

「小林が〜証言したのかと」

「中村が〜現場にいた」

「鈴木が死んだ」

これを修飾・被修飾を直結させるとどうなるか?

「鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った」

随分とわかりやすい文章になった!

ただ機械的に修飾・被修飾の言葉を直結させただけなのに...驚きである。

これは、一つの例に過ぎないが、このように本書には思わず「へぇ〜、なるほど!」と言ってしまいそうな、"わかりやすい文章を書くための作文技術"が数多く紹介されている。

そういえば、冒頭で紹介したイベントの中で干場社長が良い文章を書くために必要なこととして「神は細部に宿る」と述べていた。「細かな点まで神経を使うか使わないかで、文章の良し悪しが大きく変わる」との意味だ。

確かに、そのときは「そうだよなー」と思いながら聴いていた。だが、本書を読むと、「神は細部に宿る」という意味を実感できるのだ。

例えば、「句読点の打ち方一つで、文章の意味が大きく変わってしまう」ことがある。

本書では以下の2つの文を例として紹介している。

「渡辺刑事は血まみれになって、逃げだした賊を追いかけた」(P90)

「渡辺刑事は、血まみれになって逃げだした賊を追いかけた」(P90)

この2つの文を比べると、血まみれになったのは、一つ目は渡辺刑事、二つ目は賊となる。読点の打ち方一つで大きく意味が異なってしまうのだ。

もちろん、干場社長がお話した「細部に神が宿る」という意味は、論理の組み立て、言葉の使い方など、文章を書くにおいて幅広く神経を使うことを指している。

だが、頭で分かっていても、経験がないと実感することは難しい。

イベント後に、登壇者のお二人から紹介された本を通じてイベントでお話いただいた内容を理解するのも面白いものだ。

本書に書かれている内容は数学の公式を使って組み立てる過程を示すかのごとく、日本語の作文技術を非常にわかりやすく書かれている。

だが、当然のことではあるが、本書に書かれている技術を習得するには、本書の技術を意識しながら使うことが必要となる。せっかく登壇者のお二人から教えていただいた作文技術向上につながる本を知ったのに、それを実践で活用しないのはもったいない!

本書を読み返し、更なる活用につなげていきたいと思う。

文章を書くことの奥深さを知った「アタラシイ時間」。

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