トランプ政権の内側を描いた“暴露本”として注目を集めている、ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録『The Room Where It Happened(それが起きた部屋)』。
トランプ政権が出版差し止めを求めているこの本の一部が、ウォールストリートジャーナルに掲載された。
それによると本には、「ウイグル族の強制収容を、トランプ大統領が中国の習近平国家主席に勧めていたこと」そして「自身の再選のためにアメリカから農作物を買うよう中国に求めたこと」が書かれている。
アメリカはこれまで、中国がウイグル族やその他少数民族を抑圧していることを強く非難してきた。
大統領がそれに反する発言をしてきたというボルトン氏の主張に、波紋が広がっている。
■主張1:ウイグル族の強制収容を勧めた
2018年4月から2019年9月まで、トランプ大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたボルトン氏。
トランプ大統領から2018年に「ほとんどがイスラム教徒であるウイグル族の扱いに関して、なぜ我々が中国に制裁を課すのか」と尋ねられたという。
さらにボルトン氏は本の中で、2019年のG20サミットでのトランプ氏と習近平国家主席のやりとりについて次のように書いている。
2019年6月に大阪で開かれたG20の夕食会で、習氏は通訳だけがいる場所で、新疆(ウイグル族が住む新疆ウイグル自治区)に、基本的には強制収容所となる建物を建てることをトランプに説明した。
我々の通訳によると、トランプ氏は習氏に、強制収容所を建てるべきだと伝えた。トランプ氏はそれはまさに正しいことだと思っていた。トランプ氏がほとんど同じことを2017年11月の中国訪問でも話したということを、国家安全保障会議のアジア上級部長のトップマシュー・ポッティンガー氏が私に教えてくれた」
■主張2:再選のために農作物を買うように求めた
また本でボルトン氏は、トランプ大統領は習主席にアメリカから農産物を買うよう求めたとも主張している。
それは2020年の大統領選再選のためで、トランプ大統領は「中国が大豆や小麦を購入することが大統領選の勝利につながる」と述べたという。ボルトン氏はこう説明する。
トランプ氏と習氏の会話は、トランプ氏の貿易政策とつじつまが合わないだけではなく、トランプ氏が心に描いていた政治的利益とアメリカの国益を混同させるものでもあった。
トランプ氏は貿易問題だけではなく、国家保障のすべての面で、個人と国家を混同させた。私がホワイトハウスで働いている間のトランプ氏の大きな決断で、再選の策略がないものを挙げるのは難しい。
ボルトン氏はこれらの出来事を、ウィリアム・バー司法長官や、パット・シポローニ大統領顧問に報告したとニューヨークタイムズは報じている。
本の一部が公開された後、民主党の大統領候補をほぼ確実にしているジョー・バイデン氏は「もしこの本が主張が正しいのであれば、道徳面で不快であるだけでなく、アメリカ人の利益を守り、価値を保護するという神聖な義務にドナルド・トランプ大統領は反したことになる」とトランプ大統領を強く非難した。
ボルトン氏の本は23日に販売される予定だが、トランプ政権は6月16日に、本には「機密情報が含まれており国家の安全保障を損なう」として出版の差し止めを求める訴えを起こした。
本はトランプ大統領の弾劾裁判の原因になったウクライナ疑惑についても触れていると報じられており、注目を集めている。
ボルトン氏の主張に対し、トランプ大統領は「彼は嘘つきだ」「ホワイト・ハウスの全員が彼を嫌っている」とウォールストリートジャーナルに反論した。
ボルトン氏はジョージ W. ブッシュ大統領政権で国連大使を務め、2018年4月から2019年9月までトランプ大統領の国家安全保障問題担当補佐官として働いた。
しかしトランプ大統領と北朝鮮に対する外交政策などで意見が合わず辞任した。トランプ大統領はボルトン氏を解雇したと主張したが、ボルトン氏は辞めるよう求められていないと反論している。
・ハフポスト日本版の下記の記事を翻訳・編集しました。