取材に訪れた米国で、乗っていた飛行機が堕ちて、背骨を折ったことがあります。あれから、もう20年経ちますが、未だに飛行機には乗りたくありませんし、乗るなら安全対策の万全な会社にしたいと思っています。
ニュースに接して20年前の記憶が蘇り、頭の芯が重くなりました。不具合の発生したのが地上でよかった、と思いました。なぜなら、高度に電化されているB787は、電磁ノイズの影響で、制御するコンピュータに不具合が出るかもしれないという警告を、昨年末に高名な理論物理学者から聴いていました。
その警告は、2009年に論文発表され、2011年に日本物理学会論文賞を受章した「土岐・佐藤理論」というものに基づいています。名称から分かるように2人の物理学者(理論家と実務家)によって産み出された理論です。加速器業界のとある知見を理論づけようとしたことから、発見されました。
全日空にも、運輸安全委員会にも、警告は届けられていたはずなのですが、土岐・佐藤理論の主張することが既存の電気工学を学んだ人には理解し難いらしく、またリスクを抜本的に解消するには設計変更(大幅な改修)が必要なため、現在までのところ、真剣に取り扱われていないと思われます。
理論を産み出した実務畑の方の物理学者によれば、加速器の世界でも、電磁ノイズの影響によると思われる不具合が発生することは特に稼働初期によくあり、1個ずつ対策を繰り返すことで、そのうち安定稼働するようになるとのことです。ただし不具合が出たら止めて修理すれば済む加速器と、止められない所にいるかもしれない飛行機と、同じような対策の講じ方でよいのかは考える必要があります。
個人的な体験のせいで大袈裟に考え過ぎているのかもしれませんが、今回の不具合に関して、電磁ノイズの影響はなかったのか、徹底的な検証を望みたいと思います。
なお、なぜ私がそんな警告を耳にすることになったかのいきさつに興味のある方は、『ロハス・メディカル』3月号の、この記事(クリックすると電子書籍の当該ページが開きます)をお読みください。B787の機体を制御するコンピュータに不具合が出る可能性に触れているだけでなく、他の乗り物でも同じ現象の起きる可能性があることを書いてあります。