アジア系への新型コロナ差別と闘う大統領令に、バイデン氏が署名。「外国嫌悪は許されない」

アジア系アメリカ人はこの1年、新型コロナによる差別やヘイトクライムのターゲットになってきました
マサチューセッツ州議会議事堂前で、アジア系アメリカ人に対する新型コロナ差別への対応を求めて記者会見したアジア系アメリカ人委員会のメンバーたち(2020年3月12日)
マサチューセッツ州議会議事堂前で、アジア系アメリカ人に対する新型コロナ差別への対応を求めて記者会見したアジア系アメリカ人委員会のメンバーたち(2020年3月12日)
Boston Globe via Getty Images

新型コロナウイルスの影響で増加したアジア・太平洋諸国系のアメリカ人(AAPI)への差別やヘイトクライムに対し、バイデン大統領が毅然とした対応を取る姿勢を示した。

バイデン大統領は1月26日、AAPIへのヘイトクライムや人種差別に厳しい対応を取るよう連邦機関に求める大統領令にサインした。

ホワイトハウスで開いた会見で、バイデン氏は大統領令について次のように説明している。

「本日、連邦機関に対して外国嫌悪、特にパンデミックの間に急増したアジア・太平洋諸国系アメリカ人に対する外国嫌悪と闘うよう指示しました。こういった外国嫌悪は許されるものではなく、アメリカ的でもありません」

「司法省にはアジア・太平洋諸国系コミュニティーと連携してヘイトクライムを防止するように求めました。また保健福祉省にも、新型コロナウイルス対策の中で外国嫌悪廃絶のために最善を尽くすように求めました」

大統領令にサインするバイデン氏(2021年1月26日)
大統領令にサインするバイデン氏(2021年1月26日)
Pool via Getty Images

新型コロナとともに増えたアジア系へのヘイト

2020年初めに新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、アメリカではAAPIの人たちに対する人種差別的な攻撃が急増してきた。

アジア系アメリカ人が経営する店舗では急激に客数が減り、多くのアジア系アメリカ人が人種差別的な中傷や、身体への暴力、サービス拒否、職場での差別、人権侵害などの差別を報告してきた

幼い子どもを含むアジア系アメリカ人の家族が刺される事件も起きている

AAPIへのヘイトや差別を加速したのが、トランプ前大統領の言動だ。

トランプ氏は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「カンフルー」と呼ぶなど、アジア系の人たちへのヘイトを煽るような発言を繰り返してきた。専門家は、大統領の言動がAAPIへのヘイトを加速したと指摘している

AAPIへの差別や嫌がらせや暴力に対応するために設立された「ストップ・AAPI・ヘイト」は、2020年3月からアメリカ各地で発生した人種差別などの事例を集めてきた。

同団体によると、3〜8月までに寄せられた人種差別などの事例は2583件。この数字は自主報告によるものなので、実際にはもっと多いと考えられている。

ストップ・AAPI・ヘイトは26日、大統領令を歓迎する声明の中で「新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、多くのアジア系アメリカ人が、ヘイトや暴力を報告し、恐怖を感じながら暮らしてきました」とAAPIがこの1年置かれてきた苦境を綴った。

そして「その中で最も憂慮すべきなのは、ヘイトが前大統領の人種差別や外国嫌悪的な言動、そして彼の政権による政策によって、加速したことです」と前政権の責任を訴えた。

ストップ・AAPI・ヘイトは大統領令を歓迎する一方で、人種偏見をなくすための政策の導入やトランプ政権が導入した外国人差別的な大統領令や政策の撤回など、さらなるアクションも求めている。

20日に大統領に就任した後、バイデン氏はトランプ前政権が設けた差別的な政策の撤廃を続けている。

これまでに、イスラム圏からの入国制限の解除やトランスジェンダーの人たちの軍入隊禁止を撤回する大統領令に署名している。 

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