「発達障害は、人それぞれが持っている個性の一つ」 当事者の若者は訴える

発達障害を社会に発信する若者の団体、BeU。発達障害の当事者でもあるメンバーが語る「発達障害の人がより生きやすい社会とは」
BeU代表の名田憲史さん(左)とメンバーの小林暉さん(右)
BeU代表の名田憲史さん(左)とメンバーの小林暉さん(右)
HUFFPOST JAPAN

発達障害を社会に発信する若者の団体がある。発達障害やその特性を持つ首都圏の大学生や卒業生の10名ほどで活動する「BeU」だ。

「自分らしく生きる人を増やしたい」というビジョンのもと、当事者コミュニティーとしての内輪の活動だけではなく、イベントや講演会、リーフレットの作成を通して社会に発達障害への理解を深めてもらうための活動もしている。

発達障害の人がより生きやすい社会とは」。そんな問いを、BeUの設立者で代表を務める名田憲史さんとメンバーの小林暉さんに投げかけてみた。

活動をテレビ取材されている様子
活動をテレビ取材されている様子
BeU提供

 環境が「障がい」を決める

 そもそも発達障害とは何か。

 発達障害は「生まれつきの脳機能の発達のかたよりによる障がい」と定義されている。一方で、社会生活に困難が生じるかどうかは「その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわり」が大きいとされている。

 ADHD(注意欠如・多動性障害)の当事者である名田さんも、自らの経験を踏まえて、「周囲の環境によって、発達障がいが『障がい』となるか『個性』となるかどうかが決まるんです」と話す。名田さんによると、発達障害を持つ人が生きやすい環境を作るためには「当事者とその周りの人の『歩み寄り』が大切」だという。

 名田さんは、新卒でIT企業に入社し2年目で、現在は営業として働いている。会社には障害者枠ではなく一般枠で入社したが、自分の障がいのことは周囲にオープンにしている。職場の人も理解を示してくれて、困ったことがあった時は話を聞いてくれたり、気遣ってくれたりするという。名田さんは、ADHDの特性から、プレッシャーをかけられるとミスを起こしがちだ。しかし、こうした職場環境のおかげで、プレッシャーも最小限に抑えられている。

「職場では心理的安全性がある程度担保されているので、自分の特性によって起こる『困りごと』はそこまで多くありません」と名田さんは言う。

 一方で、大学時代の飲食店でのアルバイトでは苦い経験をしたという。当時、名田さんは自分がADHDであることを知らなかった。

 アルバイト先では接客業務を任せられたが、オーダーを正確に取ることができず、レジ打ちをすると金額が合わなくなるなどのミスを連発した。「不注意」はADHDの特性の1つだ。

 「気合いが足りない」、「なんで何度言っても分からないんだよ」。そんな上司や同僚からの言葉がさらにプレッシャーとなり、ミスも増えた。「仕事が増えるから、早くあいつ辞めないかな」と聞こえるように陰口を言われたこともある。結局アルバイト先を6回も変えたという。単純なマニュアル業務をこなせない自分を責める一方で、「人間性を否定されるほどのきつい言い方や態度」に深く傷ついたという。

 こうした経験を経て名田さんは、「当事者とその周りの人が互いに歩み寄り、バランスを取ることが必要」と話す。当事者と周りの人、どちらかだけが「頑張る」のでは片方が生きづらさを感じてしまう

 当事者は自分の特性についてきちんと理解し、特性に合った環境を選ぶことが大切だ。また、環境に適応する努力をしたり、周囲に自分の障がいについてきちんと伝えることも必要だという。一方で、「周りの人も、その言葉をきちんと聞いてあげることが必要だし、できる範囲でサポートもして欲しいです」と名田さんは言う。

BeUのメンバーが集まり歓談する様子
BeUのメンバーが集まり歓談する様子
BeU提供

 「発達障害は人それぞれが持っている個性の一つに過ぎない」

また、名田さんや小林さんは「発達障害は人それぞれが持っている個性の一つに過ぎない」と捉えている。

 「発達障害かそうでないかは、白か黒かに明確に区分されるものではなく、あくまでも傾向の問題」と小林さんは話す。どんな人でも、「物を無くす」「道を間違える」などのミスはするし、「コミュニケーションが苦手」などの不得意はある。その頻度や程度が極端なために、生活で「困る」回数が多いのが「障がい」となるという。

小林さんは、
「運動が不得意だと『運動神経ない』って言うじゃないですか。歌が下手だと『音痴』だし。みんな、人より苦手なこととか不得意なことがある。発達障害だって、それと同じようなものなんです」
と話す。

一方で、「発達障害」の「障がい」という強い言葉の印象に引きづられ、社会における発達障害への正しい理解は必ずしも浸透していないと名田さんは考えている。それゆえに、当事者が発達障害であることを周りに公表する「ハードル」も高くなっているという。

 だからこそBeUでは、社会に発達障害についての理解を深めてもらうための講演活動に力を入れている。

発達障害という概念の捉え方を変え、発達障害へのハードルを下げたい

名田さんは、言葉に力を込めた。

名田さんがパネリストとして参加した講演会の様子
名田さんがパネリストとして参加した講演会の様子
BeU提供

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