タイムラプス(微速度撮影)とは、デジタル一眼カメラなどで撮った連続写真をつなぎ合わせて動画のように仕上げる手法のことで、日本はもちろん、世界中でマニアが増殖している。
4K映像の出現などで一般的な動画も高画質化が進んでいるが、それと比べてもはるかに高画質な映像になることや、夜空をゆっくりと回転する天の川の様子など肉眼では見ることのできない映像を楽しめることが人気の理由だ。
そんなタイムラプス映像に、これまで見たことないようなアート作品が登場し、マニアたちを驚かせている。
それがこの「Barcelona GO!」だ。
Barcelona GO! from Rob Whitworth on Vimeo.
この作品は、スペインのカタルーニャ政府観光局の依頼でつくられたいくつかの動画のうちのひとつらしい。
撮った映像をシンプルに編集することの多い従来のタイムラプス作品に比べると、合成なども非常に凝ったつくりになっている。
しかしとりわけ目を引くのが、極めてスムーズな主観移動だ。
バルセロナの街を歩く女性観光客の視点で、細い路地や美術館、劇場などを前進していく部分だが、これがとても実写とは思えないほど滑らかな移動で、手ブレのない、まるでCGのような映像になっている。
これについて、Facebookで「タイムラプス部」を主催する川井拓也氏(株式会社ヒマナイヌ代表)は、
「ジンバル系のスタビライザーでステディカムっぽく前進しながらシャッターを切ってるんではないでしょうかね?」(※つまり非常に高価かつセッティングのややこしい最新機材を使っているのでは、という意味)
と推測していたが、果たして実際はどうなのか......思い切って、作者本人であるRob Whitworth氏にSkypeでインタビューを申し込んでみたところ、快諾を得ることができた。
──あのスムーズな主観移動には、知人の映像作家たちはみんな驚いていました。高価な機材やマルチコプターを使っているのではという意見や、あれはほとんどCGで作っているのかもしれないという人までいたんですが、実際はどうやったんでしょうか?
「マルチコプターはいいね! ぼくも是非、使ってみたいものだけど、あいにくそんな素晴らしい機材は使ったことがありません。三脚にニコンのカメラを乗せて、ちょっとずつ前進しながらシャッターを押す......。ひたすらその繰り返しです」
──本当にそれだけ?
「はい。周囲からみたら、まるで歩行器を使って歩く老人のように見えたんじゃないかな 笑」
しかし、と疑問を唱えるのは、日本を代表するタイムラプサーであるmockmoon2000氏だ。
「たしかに撮影手法はシンプルかもしれず、それは驚くべきことですが、それだけということはないでしょう。非常に大胆な部分にも、誰も気がつかないような細かい部分にも、実に高度な合成テクニックが駆使されていると思います。まさにこれは、映像テクニックのデパートとも言える作品ではないでしょうか」
この指摘をRob Whitworth氏にぶつけてみたが、笑っていなされてしまった。
......つまり、企業秘密というところか!
Rob Whitworth氏はイギリス人だが、現在は上海を拠点に活動していて、ホーチミン、クアラルンプールなど、アジア各所で活動している。
また近々、ある国──そう、日本人の多くが非常にナーバスに注視している"あの国"で撮影したタイムラプス作品を制作中とのこと。政情によって状況が変わるので、どうなるかわからないとのことだが、これは今から完成が楽しみだ!
ところで日本では撮影しないの? と質問してみたところ、
「妻もぼくも日本食が大好きなんですが、実はまだ日本に行ったことがないんです。仕事の依頼をいただけたら、もちろん大喜びで撮影に行きますよ!」
興味のある方(特に広告代理店)は、以下にアクセスしてみてはどうだろう。
Rob氏に撮ってもらった映像で、オリンピック向けの東京紹介映像なんて、いいと思うんだけど!
Rob Whitworth
Website: robwhitworth.co.uk/
Email: rob@robwhitworth.com.hk
Facebook: facebook.com/RobWhitworthPhotography
Twitter: twitter.com/kwhi02
撮影そのものはいたってシンプル。ニコンのカメラを三脚にのせて、シャッターを切ったら少し前進。またシャッターを押して前進。ひたすらその繰り返しだ。
インタビューを受けるRob Whitworth氏
(※写真はいずれも、Rob Whitworth氏の提供によるもの)
こちらも氏の作品。トップカットからしてレベル高すぎ!
This is Shanghai from Rob Whitworth on Vimeo.
尚、今回のSkypeインタビューでは、英語がまるでダメな私のために中村はるか氏に通訳をお願いした。
あまり高度な内容でなければ、同様のSkypeインタビューなどで通訳サポートをしてくれるそうなので、必要な方は相談してみてほしい(※ギャラは応相談)。
Twitter: adorer113
コメントをいただいた日本のタイムラプサーの作品はこちら。
川井拓也氏(株式会社ヒマナイヌ代表)
facebookで「タイムラプス部」を主催し、日本のタイムラプス普及を牽引している方。LEGOレールを使った移動撮影などユニークで工夫に満ちた作品が魅力的だ。
mockmoon2000氏
YouTubeアワードで複数回の大賞受賞歴を持つ、日本を代表するタイムラプサー。自作曲に乗せた星景タイムラプスも素晴らしいが、テクニカルな編集を駆使した都市タイムラプスは圧巻の出来で、Rob Whitworth氏と通じるものを感じる。