バンクシーはなぜ正体を暴かれずに何十年も活動し続けられるのか

1990年代から活動しているバンクシー。街中に作品を生み出すのに、なぜ誰も正体を知らないのでしょうか
イギリス・ロンドンで開催されたエッセンシャル・フェスティバルに登場したバンクシーのサイン(2001年7月14日)
イギリス・ロンドンで開催されたエッセンシャル・フェスティバルに登場したバンクシーのサイン(2001年7月14日)
Jim Dyson via Getty Images

イギリス・ロンドンに8月、動物を描いたバンクシーの作品が次々と出現した。

1990年代から活動しているバンクシーは、プライバシーを明かさない覆面アーティストとして知られている。

その一方でこれまで街中に多くの作品を生み出し、世界的に注目されてきた。

最も有名な作品の一つである「風船と少女」は2018年に104万ポンド(約1億5500万円)で落札され、さらにその半分がシュレッダーで裁断された「愛はごみ箱の中に」は2021年に約1850万ポンド(約28億8千万円)もの値がつけられた

その注目度を考えれば、バンクシーというアーティストもしくはアーティスト集団が正体を暴かれずに活動を続けられてきたことは不思議に感じられる。

しかし、ジャーナリストのマリーナ・ハイド氏は、バンクシーは想像されているほど秘密裏に活動しているわけではないと考えている。

どうやって秘密を保っている?

ハイド氏はポッドキャスト『The Rest Is Entertainment』に寄せられた、「バンクシーは、正体を隠すためにお金を払っているのでしょうか?」という質問に対し、「絶対に払っていないと思います」と答えた。

ハイド氏は「実際、秘密というほどのことではないと思います。Googleで検索すればすぐにわかることです」と述べている。

バンクシーの正体に迫る記事は、これまで特定の媒体で何度も掲載されている。それでもほとんどの人がバンクシーの正体を知らないのは、「知りたくないから」だというのがハイド氏の主張だ。

「『トレイターズ(仲間の中にいる裏切り者を探しながら賞金を稼ぐリアリティー番組)』で誰が勝者になったのかを、放送前に知りたい人がいるでしょうか?」

「多くの人は知りたくないのです。知られたくないというバンクシーのアーティストとしてのあり方が気に入っているし、その考えを尊重しているのだと思います」

ただそれだけ…?

ハイド氏は、バンクシーのアートスタイルも秘密主義を保つのに適していると指摘している。

「ステンシル(型の上からスプレーなどで色を吹き付ける手法)なのですぐにその場を去ることができます。長時間とどまることはないと思います」

ポッドキャストの共同ホストで小説家のリチャード・オスマン氏はバンクシーの「大ファン」だという。一方、ハイド氏はメッセージがはっきりし過ぎてアート作品としては思考の余地がないと考え、そこまでの興味を持っていない。

オスマン氏は主張がわかりやすいという点に同意しつつ、バンクシーのアートは「自分の正体を隠しているという事実が、重要な部分になっていると思う」とも述べた。

「すべてがパフォーマンス・アートであり、まるでひとつの大きなキャンバスのようだ。ステンシル作品のひとつひとつがその一部になっている」

オスマン氏は、バンクシーの名前は検索すれば出てくるものの、SEOのアルゴリズム変更などのトリックで別の名前が表示されることもあり、ネット上でもある程度は「隠されている 」と指摘している。

「隠されてはいますが、ある特定の名前がヒットします。もしネットで探して本気でネタバレをしたいのなら、見つけ出すことは絶対に可能です」

オスマン氏とハイド氏はバンクシーについて「多くの人が正体を知ろうとしないのが素晴らしい」という点では同意。

ハイド氏は「知りたくないなら検索しない方がいい」とアドバイスしている。

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。

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