イギリスの老舗ダンスシューズメーカー「フリード」は10月22日、白人ではないダンサー向けに、ブロンズと茶色のバレエシューズを発売した。既存の靴にファンデーションなどで色を加えなくても、自分好みの色を選べるようになった。
バレリーナにとって、つま先まで途切れのない線をつくることは不可欠だ。このために、タイツを履かない場合は肌の色と同じ色のトウシューズを履くことが絶対となる。
しかし、伝統的なトウシューズは、黒い肌の色に合うように作られてはいない。ピンク以外のトウシューズは、2017年からアメリカではゲイナー・ミンデンというメーカーが、「エスプレッソ」と「カプチーノ」という2色の色を販売していたが、イギリスでは販売されていなかった。
白人ではないダンサーたちは、ピンク色を履くか、既存のトウシューズにファンデーションなどを塗って、自分の肌の色と合わせるしかない。
ファンデーションを塗る作業は、通称"パンケーキ"と呼ばれる。2015年にアメリカン・バレエ・シアターの首席ダンサーであるプリンシパルになったミスティ・コープランドも、2016年にハフポストの取材に答えた際には、パンケーキをしていると述べていた。
パンケーキの作業は45分〜1時間かかることもある。ダンス以外の余計な時間となるほか、ダンスシューズの劣化にもつながる。
自分の肌の色にあったトウシューズを選びたい――。
その願いと、すべての人のニーズを満たすダンスシューズを届けたいというフリードの思いが一つになった。
フリードは、ロンドンを拠点に活動する黒人やアジア人、少数民族のバレエ団「バレエ・ブラック」に協力を依頼。1年以上の期間を経て、今回の販売に至った。
バレエ・ブラックの創設者で芸術監督のカーサ・パンチョ・MBEさんは、「他の世界からみると、非常に小さな変化のように見えるかもしれませんが、私はこれがイギリスのバレエ史における歴史的な瞬間だと思う」と語った。イギリスの王立バレエ団「ロイヤル・バレエ」の広報担当者も、「これはすばらしいニュース。フリードの開発を歓迎する」とコメントした。