新型コロナウイルス感染者が急増しているアメリカで、アジア系アメリカ人に対する差別やヘイトクライムが増加している。
3月14日にはテキサス州でアジア系アメリカ人の家族3人がスーパーマーケットで刺されるという事件が起きた。
この事件が新型コロナウイルスによるヘイトクライムだったことが、ABCが入手したFBIのレポートで明らかになっている。
■幼い子どもも犠牲に
事件では、2歳と6歳の幼い子供を含むアジア系アメリカ人の家族3人が、スーパーマーケット「サムズ・クラブ」で刺された。止めようとしたサムズ・クラブの従業員ザック・オーウェンさんも、足を刺された。
捕まった19歳のホセ・ゴメス容疑者は、警察に家族を刺したことを認めており「家族が中国人で、新型コロナウイルスを感染させようとしていると思って刺した」と話しているという。
■ヘイトクライムは、今後広がる可能性がある
アメリカでは4月2日までに21万6500人以上が新型コロナウイルス に感染し、5100人以上が亡くなったと報告されている。
FBIのレポートは、新型コロナウイルス感染の拡大とともに、アジア系アメリカ人へのヘイトクライムがアメリカ全土で拡大し、アジア系アメリカ人のコミュニティを脅かしかねないと予測している。
アジア系アメリカ人への差別やヘイトクライムの原因の一つとして指摘されるのが、トランプ大統領の発言だ。
大統領はTwitterで「新型コロナウイルス」を「中国ウイルス」と呼んで、批判を浴びた。
その後大統領は、新型コロナウイルスは「アジア系アメリカ人の責任ではない」「アジア系アメリカ人を守らなければいけない」と、アジア系アメリカ人を擁護する発言をした。
しかし、大統領の発言がアジア系アメリカ人に対するヘイトにつながっていると感じている人たちもいる。
■ アジア系、太平洋諸島系であるというだけで差別を受けている
ロサンゼルスを中心に活動する「エイジアン・パシフィック・ポリシー・アンド・プランニング・カウンシル(A3PCON)」と「チャイニーズ・フォー・アフォーマティブ・アクション(CAA)」が3月25日に発表したレポートは、実際にどのような差別やヘイトクライムが広がっているかを明らかにしている。
レポートによると、3月19〜25日の間に団体は673件の新型コロナウイルス関連の差別について報告を受けた。
毎日100件ほどの報告があり、その内容は「差別的な発言」「職場での差別」「施設の利用拒否」「暴力」など様々。また女性は男性の3倍、ハラスメントの報告数が多かった。
具体的な例として「中学校の生徒が暴行を受けコロナウイルスに感染していると責められた」「若い女性が路上でアメリカにコロナウイルスを持ち込んだと言われて唾を吐きかけられた」などのケースがあったという。
アジア系や太平洋諸島系であるというだけで暴力や差別を受けている、とA3PCONは伝える。