MeToo運動の中心的存在になっている女優アーシア・アルジェントさんに降って湧いた「性的暴行」報道。アルジェントさんは8月21日、「性的関係にはなかった」「報道は誤りだ」などとコメントを出したが、報道で触れられている「上半身裸でベッドに入っている2人の自撮り写真」については釈明しなかった。
この問題をスクープしたニューヨークタイムズは「記事は、確認の取れた文書と、複数の情報源に基づくもので正確だ」と自信を見せている。
ニューヨークタイムズの報道は、アルジェントさんは2017年11月、元共演者の俳優ジミー・ベネットさんから「17歳だった2013年当時に受けた性的暴行について訴訟を検討している」と告げられ、解決金38万ドル(約4200万円)を支払ったというものだった。カリフォルニア州の性交合意年齢は18歳で、17歳との性交渉は処罰対象になる。
アルジェントさんは発表したコメントで、お金を支払ったことは認めたものの、性的関係については完全否定。アルジェントさんの恋人だった世界的有名シェフの故アンソニー・ボーデン氏が、公表された場合に悪評が広まるのを恐れ、「2人の人生にこれ以上踏み込んでこないことを条件に経済支援を行った」と説明した。
アルジェントさんが送った反論コメント全文は、ジャーナリストのヤシャール・アリ氏によって公開されている。
この反論コメントで目を引くのは、ニューヨークタイムズなど各社が伝えた「自撮り写真」についての言及がないことだ。
ニューヨークタイムズは、カリフォルニア州マリーナ・デル・レイのホテル・リッツカールトンの一室で撮影された「2人がベッドに寝ている自撮り写真」の権利を、ベネットさんがアルジェントさんに譲渡することも合意に含まれていたと報じた。
同紙は写真を掲載していないが、それは一見してベネットさんが自撮りしたもので、2人は一緒にベッドに入っていて、裸の上半身が写っているという。
アメリカの芸能サイトTMZも、コメントに写真への言及がないことを指摘している。TMZはアルジェントさんが恋人ボーデンさんと交わしたこの件についての会話の中で、性交渉があったことを前提としているように読める、次のようなメッセージを送っていたと伝えている。
「あれはレイプじゃなかった、私は動けなかったけど。彼は私の上に乗ってきた。12歳のときから私を性的ファンタジーの対象にしていたと告げた後に」
アルジェントさんは2017年10月に、ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏から性的暴行を受けたと告発し、MeToo運動の中心的存在の1人となった。
一方でベネットさんは、そのことに耐えられなかったようだ。「アルジェントさんがワインシュタインの犠牲者の1人としてスポットライトを浴びたとき、当時の感情が蘇ってきた」と代理人弁護士が通知書の中で書いている。
双方の見解は大きな隔たりがある。アルジェントさんは写真について、どう弁明するのか。そして、ベネットさんはメディアの取材に応じるのか......。この件は引き続き注目を集めそうだ。