初めましての方も、そうでない方も、記事を開いてくださってありがとうございます。「arca」という会社で、クリエイティブディレクターという仕事をしている、辻愛沙子と申します。
Twitterとハフポストがつくる就活応援番組「ハフライブ」でメインパーソナリティをつとめることになりました。
大学在学中に「エードット」というベンチャー企業に入社して3年あまり、広告クリエイティブやブランディングの仕事に携わり、2019年に「arca」を設立してからも、経営という新しい挑戦をしながら、広告やブランディング、新規事業など、様々な企画の作り手として仕事をしています。
「ハフライブ」では、普段私がさまざまな企業の方たちと接して感じているリアルをお伝えしつつ、「就活」を入り口にして、「働く」こと、さらには「生きる」ということについて、皆さんと学びを深めていけたらと思っています。
今日はそんなハフライブの”初心表明”と共に、「働く」ということについて、私が現時点で見ている景色、感じている違和感や希望について、少し考えを綴ってみようと思います。
しんどい事も信じられないほど沢山ありますが、私は心の底から仕事が大好きです。
今日も一生懸命戦うあなたにとって、この文章が少しでも力になることを願っています。
企業は「ためらいの時代」に突入している。
いま、広告という仕事でさまざまな企業のブランディングをお手伝いしている立場から、私なりに感じていることを一言で伝えるならば、多くの会社は“躊躇い(ためらい)の時代”を迎えている、ということ。
例えば、日本はジェンダーギャプ指数121位(2019年)のジェンダー超後進国。嘆かわしい状況ではありますが、企業の中には問題意識をもった人が大勢います。ジェンダーをはじめ、気候変動や教育、貧困などに関する国際的な目標を定めた「SDGs」(持続可能な開発目標)というキーワードは、クライアントとの打ち合わせの中でも本当によくあがってくるんです。
しかし、こうした話の流れの中でいざ私が、「国際女性デーの3月8日に、こんなアクションを起こすのはどうでしょう?」と提案すると、多くの担当者は、顔を曇らせてしまう。
「会社として是非やるべきだし、やりたいけど、実際上場までしていながら、うちの役員の中に女性はいないし…」
「意思はあっても制度や実情が追いつくまでは、そこに指摘が入る可能性もある。だから今はまだ社をあげてジェンダーの施策はやれない」
と、こういうのです。これは1社に限った話ではありません。よくある話です。
(ちなみに私が主催しているLadyknowsというプロジェクトは、思いを同じくした企業が連名でスポンサーになってアクションを後押ししてくださった好事例ですが、当然これは頻繁に起きることではありません)
これってすごく残念なことだと思いませんか?
変わろうとしている企業がいて、それを発信して社会を巻き込んでいきたいという気持ちもある。でも、100%潔白じゃないからアクションできない。
SNSに蔓延している「揚げ足とり」や「一貫性を求めすぎる風潮」が、企業を躊躇わせている。私はそう感じています。
これから就活をする皆さんには、多くの企業が実はものすごく躊躇いながら情報発信をしていることを前提に、物事を判断してみて欲しいです。
「企業」と聞くと何やらすごく強くて大きな物のように感じられますが、結局は個人の集合体。私たち一人一人が日々悩むように、企業も常に悩みながら進んでいるんだということを忘れずにいると、社会の色んな動きを、自分の”延長線上”に捉えられるようになるのではと思います。
ピンクを愛するフェミニスト
こうした息苦しさは、企業だけが直面しているものではありません。個人も同じように、期待されていた「完璧な像」から1つでもズレると、一気に集中砲火を浴びるのが、今の空気感ではないでしょうか。「イメージと違った」「偽善だ」などとすぐに揶揄されてしまうシーンをよく目にします。
これでは挑戦や変化の一歩が踏み出しにくくなる一方です。
例えば私は、ジェンダー平等に関する発信をしたり、仕事でそういった文脈の企画を作ったりすることが多いのですが、同時に一個人としてはピンクやパステルカラー、ガーリーな世界観が好きですし、メイクも美容もスカートも大好きです。
仕事でも、性別によるカテゴライズに囚われないブランディングをお手伝いする案件もあれば、スイーツビュッフェや空間演出などのプロデュース案件で、時にガーリーな世界観のアウトプットになることもあります。
ジェンダーをテーマにした「Ladyknows」プロジェクトも、テーマカラーとして赤と青の中間色である紫を使おうか、などと悩みに悩みましたが、最終的にピンクに決めました。
それを見て、「フェミニストなのに画一的でステレオタイプな女性観を再生産している」という声もあるかもしれません。
しかし、そもそも「完璧なフェミニスト像」って何なんだろうか。
ジェンダー平等を願うのも私の中の真実だし、ピンクを美しいと感じるのもまた真実。クリエイターとして生きる辻愛沙子にとって、両方が真実のアウトプットなのです。
そんな個の中にあるダイバーシティをもっと大事にしたい。個人と個人の関係においても、個人と企業の関係においても、自分の中にある多様性を当たり前に認め合える社会であるべきなのではないでしょうか。
#辻の延長戦 、やります。
ここまで長く書き連ねてしまいましたが、結局一番強く思うのは、何事にも「絶対正義」はないということです。100%の潔癖も100%の完璧もない。個人や企業はものすごく曖昧で多様であり、だからこそ社会は変化し、前に進んでいくことができる。これこそ希望ではないでしょうか。
その前提として大事になるのは、迷いや失敗、変化を認め合うということです。
そこで、ハフライブの番組終了後には「#辻の延長戦」と題して動画を生配信してみることにしました。
もちろん、自分の発言に責任をもつということは大前提です。その上で、番組中に言い足りなかったことや、もっと違う言い方にチャレンジしてみたい、 あの文脈にはこの補足を入れるべきだったと感じること……、学びの過程での変化も 、ありのまま出していこうと思います。
就活中の皆さんも、履歴書を書いた時と面接の時とで気持ちが変わること、あるのではないでしょうか。日々悩みながら向き合っている分、自分はやっぱりこういう事の方が合ってるかも...?と思ったり。面接でも「やっぱり言い直してもいいですか?」って堂々と言える空気だったら少し挑戦してみる事だってできるかもしれない。
失敗できない、補足させてもらえるチャンスがない…、と思うから怖くなるのであって、本当はもっとアグレッシブにチャレンジできるはずなんです。そういう変化や学びに対する柔軟な姿勢を、体当たりでお届けできたらな、と思います。
人生100年時代は、みんなが「就活生」
さて、番組はこれからいよいよ社会に出ていこうとしている学生さんたちに向けたものではありますが、実は今の時代、誰もが「就活生」とも言えると思います。
人材流動性が非常に高く、転職は当たり前。大学を卒業して最初に入った会社で一生が決まるような時代ではなくなりました。
女性も男性も、出産や育児、介護のために仕事を中断することもあるでしょう。働き方改革も進み、リモートワークも随分普及してきたことで、今後は二拠点や多拠点で生活する人ももっと出てくるんじゃないでしょうか。
私も今、自分の会社の経営や、クリエイティブディレクターとして”作る”仕事をしながら、同時にnewszeroやハフライブといった場所で”考え”、”発信する”仕事にも挑戦し始めています。経験したことのない新しい仕事にどんどん向き合っていきたいし、型に囚われないキャリアを歩んでいきたいと思っています。
そういう意味では、「成功のための絶対的レール」なんてものはなく、一生、みんなが自分らしいキャリアのあり方を考え続けないといけないのだと思います。それは怖くてしんどいことじゃなくて、自由でワクワクするもの。ハフライブでは、そのヒントなる多様な選択肢を紹介していきたいです。
“人生一生就活“時代ーー
みんなで「働く」ということについて考えませんか?
自分と社会はどんな風につながっているのか。
自分の可能性ってどんなものなのか。自分の幸せの価値基準って何なのか。
番組を通じて、皆で考え、語り合っていけたら嬉しいです。
arca CEO|Creative Director
辻愛沙子
(編集:南 麻理江 @scmariesc)