サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で不調が続き、1次リーグ突破が危ぶまれていた強豪アルゼンチンが6月26日(現地時間)、ナイジェリアに競り勝って決勝トーナメント進出を決めた。
アルゼンチンのサポーターらは歓喜にわき、会場で観戦していた元代表選手のディエゴ・マラドーナさん(57)は興奮しすぎて病院に運ばれるなどの盛り上がりとなった。
アルゼンチンは「世界最強」と言われるFWメッシを擁し、優勝候補の1つとされてきた。ところが、メッシ頼みのプレースタイルは限界を見せ、ここまで1勝もできず。メッシ自身も相手チームの厳しいマークにあい、無得点が続いた。サポーターたちのイライラは募り、メッシへの批判も高まっていた。
26日のナイジェリア戦は、0勝1敗1引き分けという崖っぷちの状態で迎えた。所属するグループでは最下位。勝つことが決勝トーナメント進出への最低条件となっていた。
サッカー愛の強い国だからこその重圧。だが、それを吹き飛ばすようにメッシが「覚醒」した。前半14分、長いパスをトラップし、左足でシュート。ボールは相手ゴール左に突き刺さり、今大会初めての得点を挙げた。
後半にはナイジェリアにPKを決められて同点に追いつかれるが、終了間近の41分、アルゼンチンのDFロホがクロスに上がったボールを直接シュート。土壇場で勝ち越しに成功した。
苦しんでもぎ取った勝利にサポーターたちの喜びは爆発した。
会場で観戦していたアルゼンチン・サッカー界の英雄、マラドーナさんも客席から身を乗り出して声援。勝ち越しゴールが決まったときには大きなジェスチャーで感極まった様子だった。
興奮のあまり、マラドーナさんは試合後、気分が悪くなり、別の人に抱きかかえながら奥の控え室に移動。ロシア国営メディア「RT」によると、その後病院に搬送されたという。命に別状はないという。
サポーターらも観戦に訪れたロシアの地で、あるいは母国アルゼンチンでも狂喜乱舞の大騒ぎとなった。
ファンらはアルゼンチンの調子が上がらないことにいら立ち、なりふり構わぬ応援を展開していた。
例えば、6月22日にあったナイジェリア対アイスランド戦。いずれもアルゼンチンと同じグループだが、このとき、アルゼンチンの人たちは盛んにナイジェリアを応援した。
この前日、アルゼンチンはクロアチアに敗北。初戦で引き分けたアイスランドがナイジェリアに勝てば、アルゼンチンの決勝トーナメント進出は絶望的になるからだ。
スペインのマルカTVによると、アルゼンチン国内では、バーや路上などでナイジェリアに声援を送る地元の人たちがあふれたほか、首都ブエノスアイレスでは、ふだんは交通標識を表示している電光掲示板に急きょ、ナイジェリアを応援するメッセージが表示された。
また、ワールドカップを観戦しにロシアを訪れたサポーターたちも、移動で乗り込んだ飛行機の中でナイジェリアが勝つよう、大合唱を繰り広げた。
Argentina se volcó apoyando a Nigeria en los bares, las calles... ¡y hasta un avión!
▶ https://t.co/ftkyKyNmBNpic.twitter.com/XEWwINXMhy
— MARCA TV (@MARCATV) 2018年6月22日
ナイジェリアは2対0でアイスランドに勝ち、アルゼンチンにとって「一縷の望み」が残った状態だった。
グループ最下位からの決勝トーナメント進出劇は、今大会の勝敗予想をことごとく的中させてきたサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に住む白猫アキレスの「敗北予言」すら跳ね返した。アキレスは試合前、ナイジェリア勝利と予想していた。アルゼンチンの不調も考え合わせれば、「奇跡」のような展開だ。
決勝トーナメントでアルゼンチンは、グループCを首位で突破したフランスと対戦する。