AppleはiMessageの新機能の準備をしている。これによって消費者たちが直接ビジネスと、Appleのメッセージングプラットフォームを介してチャットすることが可能になる。Busuness Chatと呼ばれるこの機能は、昨年のAPpleのWWDC(世界開発者会議)で発表されたものだ。それがこの春に、Discover、Hilton、Lowe's、Wells Fargoといったローンチパートナーと共に運用が開始される。
この機能により、消費者はiMessageでビジネス担当者とチャットすることが可能になる。そこでは各ビジネスのニーズに合わせて、Apple Payで支払いを行ったり、予約をとったりすることが可能だ。
今回の動きは、B2Cコミュニケーション、ペイメント、そしてカスタマーサービスを、他のテック企業によるメッセージングプラットフォーム(Facebook Messenger、Google、Twitter、そして今月独自のWhatsApp Businessアプリを立ち上げたWhatsAppも含まれている)から、Apple自身のメッセージングプラットフォーム上へ移行させようとする、強い意志を反映したものだ。
人びとが今日、友人や家族と個人的なやりとりをしているiMessageの中に、ビジネスが入り込んでくることは奇妙に思えるかもしれないが、Appleがこの世界に参入することは不思議でもなんでもない。
Lowesさん、聞いてる?
ともあれ、iMessageは、ときおり送られてくる予約リマインダーや銀行からの通知を除けば、ビジネスコミュニケーションのためにまず使おうと考えられている場所ではない。
しかしそれは、簡単に変わる可能性がある。米国だけでなく、PCサイクルをスキップし、スマートフォン経由で初めてWebに参加する新興市場でも、ビジネスメッセージングの需要が高まっている。彼らにとって、ビジネスに対してメッセージを送ることは、コンピュータ育ちの私たちが、当然のように顧客サービスへ電子メールをを送ることと同じなのだ。
さらに、消費者の多くは、カスタマーサービスに電話をかけるよりもむしろビジネスにメッセージを送る方を好むことが、Facebookからの委託を受けてニールセンが昨秋に行った研究によって明らかになった。それによれば56%が電話ではなく、メッセージを好んでいたのだ。さらに67%が、今後2年間でさらに多くのビジネスに対して、より多くのメッセージを行うことになると思うと回答している。
そうは言っても、Appleがこのマーケットに参入する際に、大きな挑戦なしに済むかと言えばそうは問屋が卸さないだろう。新しいBusiness Chat機能の前に立ちふさがる他のプラットフォームのサイズと規模は大きい。
たとえば、Facebook Messengerは、既に13億人のユーザーを抱えている。そのユーザーたちはFacebookのより広いソーシャルネットワークで繋がっていて、そこではビジネスはその存在を、ブランドページや、投稿、プロモーション、そして広告などでアピールすることができる。Facebookは昨年、その当時アクティブだった6500万のビジネスの80%が、顧客にアプローチするためにMessengerを使っていると語った 。また、Instagram上のB2Cコミュニケーションも拡大している。同アプリは独立したモバイルメッセンジャーのテストを開始した。
その一方で、WhatsAppはWhatsApp Businessでこの世界に参入したばかりだ。とはいえそのサービスは既に13億人のユーザーを抱え、インドのような新興市場で強さを発揮している。
そしてGoogleがある。多くの人びとが、Webを介してしばしばビジネスコンタクト情報を探す場所だ。そしてGoogleも、Googleマイビジネスを通して似たようなチャットソリューションを提供している。
そしてTwitterもある、このサービスは、一般的に顧客サービスへの苦情を寄せるための事実上の標準的な場所となった。怒りのツイートは会社の目に止まり、対応が促されることを期待してのことだ。Twitterはこのエリアに対して積極的な支援もしている。カスタマーサービスをそのネットワーク上で行う企業向けに、一連のツールを提供しているのだ。
Where does that leave Apple's Business Chat? iMessageは既に何億ものインストールベースがあるという利点はあるものの、単にチェックする場所が、もう1つ増えただけのように感じるだけだろう。またほんの一握りのローンチパートナーだけでは、消費者はどのビジネスがiMessageで利用できるのか、誰がそうでないのかを覚えてくれず、結局他所に向かうことだろう。
しかし、iMessageはiOSデバイスに最初からバンドルされているために、Appleは新たなアプリのダウンロードを要求しなくて良いという利点がある。また、Apple Payで独自の支払いプラットフォームを提供しているため、取引を簡単に行うことができる。
しかし、Appleの参戦に向けて、ライバルたちは戦いの準備を整えている。WhatsAppによる先制的なビジネスアプリの立ち上げに加えて、FacebookはAmerican ExpressのCEOであるKenneth I. Chenaultを取締役会に迎えた。CEOのMark Zuckerbergによれば、同氏はFacebookに欠けている、「顧客サービス」や「ダイレクトコマース」などを含む、「ユニークな専門知識」を持っているのだという。Appleよ、銃爪は引かれたようだ。
AppleによればBusiness Chatは、この春のiOS11.3の一般公開と同時に開始される予定だ。
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(翻訳:sako)
(2018年1月25日TechCrunch日本版より転載)
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