アメリカンフットボールの関西学院大と日本大との定期戦で、関学大の選手が日大選手の危険な反則タックルでけがをした問題で、日大側は5月22日、コーチが試合前に選手に言った「つぶせ」という言葉は「最初のプレーから思い切って当たれという意味」などとするコメントを発表した。
だが、選手はこの日、実名で記者会見し、「つぶせ」とは「けがをさせる意味だった」と語った。「相手がけがをすれば得」とも言われたという。双方の言い分は真っ向から対立している。
「コーチから『1プレー目で(相手の)QBをつぶせ』という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、『最初のプレーから思い切って当たれ』という意味です」。日大の広報部はこの日、こんなコメント文を報道各社に発表した。
だが、この発表前、危険タックルをした選手本人は会見で、別の見解を明かした。
「けがをさせるという意味で言っているんだと思いました」。選手は冷静な表情で語り、「つぶせ」という指示は、試合に出るための条件として、コーチ経由で内田正人監督から言われたとも明かした。
選手はまた、コーチからこうも言われたという。「相手のクォーターバックがけがをして秋の試合に出られなかったら、こっちの得だろう」
アメフト関係者は双方の言い分をどうみるのか。日本代表のヘッドコーチ(HC)の経験がある東大の森清之HCは朝日新聞の取材に対し、「つぶせ」という指示はアメフト界では日常的に使われており、「『ルールを守った上で、激しいプレーをしてこい』という意味に近い」と説明する。
ただ、森氏は、日大のコーチが選手に対し、相手の選手がけがをして秋の試合に出られなければ得だと話したことについては、「考えられない」と話す。
選手に対する数々のコーチの発言も考慮すれば、「選手が『けがさせろ』の意味で理解しても全く不思議ではない」と述べた。