先日およそ10日間の帰国を終えてボストンに戻ってまいりました。帰りの飛行機の中で大学生(らしい)団体と席が近く、聞いてみるとこれからボストンの大学に4カ月間短期留学をするそうです。9月はアメリカの学校の1年間が始まる時期です。
いいな~、楽しそう。。。私もまた大学生にもどりたーい、と思いましたが、それ以上に彼らの多くにとっておそらく初めてのアメリカ生活をこの米大統領選シーズンで過ごすのか~、と感慨に耽ってしまいました。
アメリカは多民族国家のため、日本以上にたくさんのサブカルチャーが存在しています。ステレオタイプ、偏見、差別、共生、これらのすべての物がすべて混沌として存在しているのがアメリカ社会だと思います。アメリカにも悲しいことに人種差別であり、階級差別であり、性マイノリティーの人たちに対する偏見、たくさんの差別、偏見は確実に存在します。
新しい土地で勝手がわからず生活をはじめ、やっとその文化になじみ、その文化の中に存在するステレオタイプというものに気付き始めた時、「そういうものなのだ」とステレオタイプを無意識に受け入れ依存し、知らずに偏見の一端を担ってしまう、という罠に人は陥りやすいと思います。
私が初めてアメリカに来た時は、高校生の時でした。保守的な土地柄で有名なテキサスの片田舎にいき、ほとんど英語が話せずとりあえず不機嫌にみえないように気を使いニコニコして、クラスメイトから話かけられ、一言でも二言でも会話が成立すれば嬉しかった、という毎日でした。
その時よく私に気をかけてくれていたクラスメイトの男の子が同性愛者と噂され(彼は噂を否定も肯定もしませんでした)授業中に公然といじめられるという事件がありました。私はその時"それはまちがっている!"と何度も叫びたかったのを覚えています。でも私は何もすることができませんでした。
ボストンに大学生で来たとき、黒人の友人が何度も実のない職務質問にあう、という話を聞きました。白人の多い地区に住む黒人の友人夫婦がどれほど些細のことに心を砕き、目立たないよう努力しているか、を知りました。撮影で知り合ったドラァッグクイーンの友人が予約していた安ホテルに深夜、パーティーのあとチェックインしようとしたら、拒否された話も聞きました(これは違法です)。差別、偏見は存在します。
多民族国家の道を選んできたアメリカの素晴らしさの一つは多様性だと思います。しかしコインの裏側をみれば、アメリカの多様性は (自分のグループ) VS (他のグループ) という強い偏見を生み、スケープゴートを作り出していきます。現在行われいる米大統領共和党指名候補者トランプ氏はそんな負の要素の塊に支えられています。
これからアメリカへ来る君へ、どの文化にもステレオタイプは存在します。それらのことを踏まえるのはその文化を理解するために不可欠なことです。でもそこから先は頭と心を使ってください。時にはうまく自分の気持ちや思いが伝えられないときがあるかもしれません。思いを飲み込む場面もあると思います。でもその中に組み込まれていかないでください。
これからアメリカへ来る君へ、つらいことも悔しいことも出てくると思います。でも自分を失わず様々な人たちと出会い、触れ合いを通してゆっくりでも優しい未来に一緒に進んでいけたらいいな、と思います。
写真はボストン市私が住んでいるドーチェスター地区で撮影したものです。(ウェブ)