今月中旬、米国ワシントンDCの米国風力エネルギー協会(American Wind Energy Association(AWEA))を訪問し、トランプ政権での風力産業動向に関してヒアリングを行った。本稿はその前編。
(1)風力発電の現状は?
米国の風力発電は、ここ10年で好調に伸びてきている。下の二つのグラフの通り、①2016年後半には月間の発電電力量で水力を超えるようになり、②2016年末には設備容量で水力を超える電源にまで成長した。
米国全体の発電電力量に占める風力発電の割合も年々伸びてきており、下のグラフの通り、2015年末に4.7%、2016年末には5.6%にまでなっている。
下の図のように、州ごとの発電電力量に占める風力発電の割合には差異が見られる。風力発電にも地域性があるということだ。
今年3月初旬に発表された統計によると、風力発電に関係する雇用が10万人を超えた。風力発電に関しては、施設の建設や修繕も含めて、幅広い雇用が創出されている。
下の図にあるように、風力発電に関連する仕事は全米に広がっている。現在では43州で500ヶ所以上の工場が風力タービンと部品を製造している。風力タービン技術者は、今後ますます必要となっていくだろう。
(2)風力発電が急成長している要因は?
風力発電が伸び始めたのは2000年以降のことであるが、その理由としては、風力発電がCO2を排出しないクリーンエネルギーだからではなかった。風力発電は、結果としてCO2対策にはなっているが、風力発電が急成長した主因はそうではない。
あくまでも、RPS(再生可能エネルギー利用割合基準)その他の手厚い公的支援策の下で、風力発電が電源としてのコスト競争で優位に立ってきたことによる。
風力発電コストの低下傾向を示す指標は幾つもあるが、下の二つのグラフはその代表例。州によっては、風力発電コストは化石燃料発電コスト並みにまで下落した。
これは、風力発電のコスト削減に向けた様々な努力の成果だ。今後更なるコスト低減が期待される。
風力発電や太陽光発電は天候に左右される不安定な電源。これらの系統への流入によって、石炭火力発電所の稼働率が低下するという事象は確かに見られている。
だが、石炭火力発電所の閉鎖が最近相次いでいるのは、風力発電や太陽光発電による電気が流入したことよる採算悪化ではなく、天然ガス火力発電との競争に負けたからだと考えるのが妥当。
石炭火力発電にはCO2対策などの上乗せにより、天然ガス・風力・太陽光に比べて発電コストが相当に上昇している(※)。風力が石炭に勝ち始めているのは、あくまでもコスト面での優位性によるものだ。
(続く)