日本の勝利で幕を開けたラグビーワールドカップ(9月20日〜11月2日)は9月21日、ニュージーランド代表「オールブラックス」が南アフリカ戦を迎える。
ラグビーでお馴染みとなっているのは、ニュージーランド代表が試合前に披露する伝統の踊り「ハカ」。
カパ・ハカ指導者のジェーマス・ウェブスター氏に、ハカの魅力や楽しみ方を聞いた。
ーーハカにはどんな役割があるのでしょうか
ハカは、エネルギーや恐怖心を外に出す手段として使われます。 戦争や戦で士気を高める儀式として用いられていました。
「HAKA」の文字には、「HA」は息、「KA」は炎という意味があります。結束して、エネルギーを外に出して、集中するため儀式です。
ニュージーランドには、さまざまな種類のハカがあります。ある地域のハカは、「ペルペル」と呼ばれる真上に飛び跳ねる動きが特徴です。別の地域の「Tutu Ngarahu」と呼ばれる動きは、横に飛び跳ねる動きをします。「タパラヒ」と呼ばれるハカでは、自分の体をクッションがわりに(叩いて)、エネルギーを出す動きがあります。 オールブラックスが披露するハカの動きにも、このタピラヒの動きが含まれます。
ーー試合前にハカを演じるのはなぜでしょうか
試合に臨む時には、世界中の国やチームと競い合いますよね。恐怖心を払拭して、試合の前に戦う準備や心構えをするためです。
有名な「カ・マテ」ハカの歴史は、ある人物が紛争で敵の部族から逃げ伸びた先で作られたと言われています。
ーーハカの中で舌を出す仕草をしますよね。それぞれの動作はどんなことや意味を表しているのでしょうか
全てはタイミングなんです。「テネイ テ タナタ」を例にあげると、それぞれ動作、手の仕草や掛け声は....そうですね。何といったらいいのか。例えば、腕を開いて上に振り上げて戻す動作《音を鳴らす》は、エネルギーを送っているといった感じです。
舌を出すのには、ひとの機能の延長といった意味合いがあります。
マオリ族はもともと文字がなくて口承文化なので、踊りなどで経験などを伝承する際に、コミュニケーションを取るために、舌が大きな役割を果たしていました。コミュニケーションのシンボルのようなものです。
ハカは、恐怖心を取り除いて、団結を与えたり、奮い立たせてくれたりするものです。戦いの他にも、お祝いや歓迎にも用いられます。例えば結婚式や授賞式、博士・修士号といった名声が与えられる時、何かを成し遂げた人が誇りを示す意味で披露されたりします。
ーーハカのどんな点に注目してほしいですか
ハカはコンテストも開催されています。一見、同じ動きに見えるかもしれませんが、どうやって競うのかというと、動きや発音、声の出し方です。エネルギーを感じるかや感情表現も重要です。音や動き、言葉が全てが組み合わさって違いが出てくるものなので、とても複雑なものですね。そういった全てに注目してほしいです。
ーーハカは日本でも有名で、実際に踊ったり、試してみたいと思ってたりする人もたくさんいます。何か楽しむためのアドバイスはありますか。またハカを見る人は、どんな点を楽しんでほしいですか
ぜひ一緒にハカに参加して、踊って、感じてほしい。もちろんみなさんは、母国の日本を応援すると思いますけど(笑)。とにかくハカを楽しんでもらいたいです。
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日本戦があった9月20日、ジェーマス氏が率いるグループは、東京・有楽町にあるワールド杯ファンゾーンでハカを披露。パブリックビューイング前に、圧巻のパフォーマンスで会場を大いに盛りたてた。