なぜ女性はグルメ評価サイトを気にするの? 調査で見えた男女の違い。

他人の評価にこだわりすぎず、たまにはふらっと見つけたお店に入るのもいいかもしれない。

あなたは外食をするとき、どうやってお店を決めますか?

先日、私は友人の男性から興味深い話を聞きました。

彼女とのデート中に、“いい感じのお店”を見つけたのでふらっと入ろうとしたところ、彼女に「ちょっと待って!」と止められたのだそう。彼女はグルメ評価サイトでそのお店を調べた後、「ここは嫌だ。別のお店がいい」と言ったそうです。

この話を聞いた私は、「せっかく彼が提案したのを断るなんて…」と思うと同時に、私自身、普段からグルメ評価サイトをよく参考にするタイプなので、何となく彼女の気持ちもわかるような気がしました。

そういえば、女友達とごはんを食べに行く相談をする時も、店の

点数が決め手になることが多く、会社の飲み会などを企画するときも星の点数が低いお店は選ばないようにしているように思います。

このエピソードをきっかけに、「もしかすると性別によって、グルメ評価サイトへの信頼度や意識には差があるのかも?」と考えるようになりました。

私は、博報堂生活総合研究所の研究「#みんなって誰だ」に参加している金田と申します。今回のテーマは、「グルメ評価サイトにみる”みんな”」です。グルメ評価サイトには、“みんな”が投稿した様々なお店の評価が集積されています。そこにある“みんな”の意見は、誰にどの程度、影響を与えているのでしょうか。

冒頭のエピソードが表すように、男女でグルメ評価サイトへの依存度合いは異なるのでしょうか? 

「数字」で見る評価サイトの信頼度

評価サイトへの信頼度に、男女の違いはあるのか?

 生活総研が2018年11月に20代から60代の男女1500人に実施した調査によると、「外食頻度」や「評価サイトの閲覧頻度」では男女で大きな差がみられなかったにも関わらず、女性の方が評価サイトを信頼する傾向があることがわかりました(男性54.9%、女性:66.9%)。

評価サイトの点数が高くないと不安になることも、男性よりも女性の方が多く(男性:35.3%、女性:45.2%)、女性の方が食事の前は下調べをしてから行きたい派が多い(男性:32.9%、女性:46.8%)ようです。

このように数字で見ても、女性は男性に比べるとグルメ評価サイトを信頼したり、評価の点数が低いと不安になったりする傾向があることがわかりました。

冒頭の彼女も飛び込みでお店に入ることに不安があったひとりだったのでしょう。

期待を裏切られ、がっかりしているのも女性

いざグルメ評価サイトで評価をみて選んだあとの気持ちはどうでしょうか?

お店に実際に訪れた際の印象が悪く、がっかりした経験があるかを尋ねると、これも男性より女性の方が経験率が高いことがわかりました。(男性:45.1%、女性:53.4%)

具体的にがっかりした経験を聞いたところ、以下のような回答が集まりました。

「お店の内装の写真が実際とはずいぶん違って、店内が汚かった」(28歳女性)

「下調べした個室が自慢という店で、単に狭いスペースに押し込められがっかりした」(37歳女性)

「まあまあいい口コミなのに写真が雰囲気と違っていたりガラガラなのに料理が出てくるまで1時間もかかったりして二度と行かないと思った」(51歳女性)

「写真と出てきた料理の盛り付けや量が違った時があり、二度と行くのをやめようと思った」(66歳女性)

“口コミ・写真と違う”=“自分が思っていたのと違う”といった声が多く寄せられました。ちなみに男性からは「特に評価にギャップを感じた経験がない」という回答がたくさん寄せられました。

評価サイトではここを見る!男女別注目ポイント 

なぜ女性は男性に比べて“思っていたのと違う!”とがっかりしてしまいやすいのでしょうか。

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グルメ評価サイトを見る際の注目ポイントを尋ねると、その原因が見えてきます。

女性は、お店を選ぶときに、以下の例のように“写真を見て判断する”という声が多く見られるのです。

「(訪問するかを決める際に)写真はたくさん閲覧している」(22歳女性)

「お店の内観と料理の写真を見て判断している」(27歳女性)

「口コミよりも店内写真、料理の写真、外観を細かくチェックする。サービスや雰囲気がわかるから」(37歳女性)

「口コミはある程度読みますがそれよりも料理の写真を主な判断材料にしています」(58歳女性)

どうやら、女性は“写真”を拠りどころに、お店の良し悪しを決める傾向が強いようです。

一方男性は、他者の評価を分析したり、口コミの投稿件数やメニューの多さと価格といったお店の具体情報がわかるかどうかを重視している傾向が見られました。

「点数を高くつけている人のレビューと最低評価の人のレビューを比較して、特にダメな点を探るような見方」(23歳男性)

「メニューなどしっかり載っているところ」(30歳男性)

「写真の品と値段との差を見て決める」(40歳男性)

「口コミ件数ができるだけ多く、それでいて3.5点近い店は良い店ではないかと思う」(53歳男性)

「口コミが複数件あり、書き込み内容に良い評価の共通点が見受けられる店であること。良い評価、悪い評価を双方見比べて判断」(60歳男性)

また、先ほど記載した評価サイトの信用度と同様に、「必要最低限のお店の情報しか見ない」「口コミは信頼していないため見ない」という意見も多く見られました。

男性は、そもそも評価サイトへの信頼度が低い傾向がある上、良い評価と悪い評価の両方を参考にしながら口コミを分析しようとしているのがわかります。

「隠れ家」こそが、魔法のことば!?

ここまで見てきたように、男女ではグルメ評価サイトへの意識に違いがあり、女性は男性よりも点数や口コミを気にしている事がわかりました。一方で、写真から自分の中でイメージを膨らましてしまうため、期待を裏切られてがっかりしてしまうことがあるようです。

このような、男女の傾向の違いを超えて、楽しく食事場所を選ぶにはどうしたらいいのでしょうか?

鍵は「隠れ家レストラン」にあるかもしれません。

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今回の調査において、全ての年代の女性で「みんなが知っている有名レストランより、知る人ぞ知る隠れ家レストランに行きたい」という結果が出たのです!(図参照)

簡単に”みんな”がおすすめするお店に行けるようになったいまの時代、評価サイトという大きな“みんな”にのっかるより、「知る人ぞ知る」的な小さな”みんな”に興味を惹かれるのかもしれません。

「隠れ家レストラン」という他人の評価や写真がないところで、事前に写真をチェックして過度にお店のイメージを膨らませたりすることなく、純粋にワクワクした気持ちでお店へ訪れることができるという体験を多くの人が求めているのではないでしょうか。

今回の調査を通じて、改めて私自身もいかに評価サイトの”みんな”に依存しているかということを実感しました。大人になったらつい忘れてしまいがちな「純粋なワクワクした気持ち」を思い出すためにも、たまにはふらっと見つけたお店に入ってみる小さな冒険に出かけることを心掛けてもいいかもしれないな、と思いました。

執筆を担当したのは…

金田彩佳

博報堂 第三プラニング局 リサーチャー

2017年博報堂入社。食品、住宅、化粧品など様々な企業で事業・コミュニケーション戦略立案や商品開発に携わる。